東日本大震災で亡くなった人への想いを受け止め、その心を癒し続けている“漂流ポスト”をテーマにした映画『漂流ポスト』が、東日本大震災から節目の10年を迎える今春、追悼ロードショーされる。ここでは、記憶の中で輝き続ける過去(=学生時代)において瑞々しい芝居を魅せてくれた神岡実希中尾百合音の二人にインタビューした。

――出演おめでとうございます。お二人は同じ事務所ですが、オーディションの時にはお互いに受けているのを知っていましたか?

神岡&中尾 ありがとうございます。いやぁ、お互いに知りませんでした。

――受かる予感はありましたか?

中尾 ありませんでしたよ。ただ、オーディションで演じた役がちょっと自分に似ているなと感じた部分はありましたので、私にぴったり! という気持ちも強くなってきて、もしかしたら……とは思っていました。

――どのあたりが?

中尾 一人でいるのが好きなところと、友達と一緒の時ははしゃぐところです。

――神岡さんは?

神岡 (オーディションの)手応えはなかったんですけど、“演じたい”という気持ちを強く表現しましたので、それが監督に伝わっていたらいいなと思っていました。決まったと聞いて、とてもうれしかったです。

――それまでにお互いに面識はあったのでしょうか?

神岡 はい、レッスン場が一緒でしたから、面識はありました。共演の経験はありませんでしたけど、私のほうが(事務所の)先輩でもあるので、とにかく(中尾)百合音ちゃんを引っ張っていかなければいけないという気負いみたいなもの強く感じていたので、もしかしたら映像にはそれが映っているかもしれません。

中尾 事務所の先輩ですから、現場ではとても心強かったです。しかも、撮影が始まった時には、演技についていろいろと相談したり、アドバイスをいただいたりして、すごく助かりました。肌で神岡さんの存在を感じながら、かっこいいなって感動していました。

――では、役づくりについて教えてください。

神岡 題材が題材だけに、おざなりにしてはいけない! と、高2(当時)ながらに思った記憶があります。出演するからには、観てくださる方にメッセージを伝えられる演技をしなければいけない、作品にしなくてはいけない、と強く感じました。

――神岡さんの演じられた恭子は、とにかく元気いっぱいで、リーダーシップも発揮していました。

神岡 そう感じてもらえたのなら、演じた人間としては嬉しいですね。恭子には厳しい未来が待っていますけど、その時点では知りようもありませんし、それは先ほどお話しした、気負いみたいなものも影響しているかもしれません。

――中尾さんはいかがですか?

中尾 中学時代の(池淵)園子は、暗いというかちょっと影があって、自分の世界を持っている女の子だなって思いましたので、そうした雰囲気を表現することを心がけました。同時に、恭子と出会うことで変わっていく……。そうした(園美の)変化も感じていただけるように演じました。

――そんな二人が出会い、急激に仲良しになっていきます。

神岡 そうなんです。ただ、撮影の時に監督と話したのは、“楽しい演技をしない”というものでした。なぜ二人が出会ったのかについてはラストで明らかにされるので、それを意識しつつも、中学生らしさ、恭子らしさを持った等身大の女の子に見えるように演じました。

中尾 私は、屋上に出たり、授業をさぼった経験はありませんでしたから、とっても楽しくて、それが表情に出ていたかもしれません(笑)。実際にやってみたいなって思いましたもん。海はほんとうに綺麗でしたから、記憶に強く残っています。

画像3: 映画「漂流ポスト」で、色褪せない美しい時間の中で輝きを放つ芝居を見せた「神岡実希」と「中尾百合音」にインタビュー

――ところで本作は、撮影が終わってから3年ほど経っています。いまその映像を観ていかがですか?

神岡 いまというより、3年前に最初に観た時の印象が強すぎて! 豊洲で行なった上映会で、最前列に座って家族と一緒に観ていたんですけど、自分の顔がこんなに大きく映し出されているのが、とにかく恥ずかしくて恥ずかしくて。でも、女優として少しは成長した姿をお見せできたんじゃないかなって、思っています。

中尾 私はこの作品が映像のお仕事の初めてぐらいな時でしたので、さすがにいま観ると、あそこはこうすればよかったなと感じることも多くありますね。でも、そう思えるのは、自分が成長しているからこそなのかな、という風に考えています。私も豊洲の上映会の時は、横に姉が座っていたので、とても恥ずかしかった記憶があります。

――本作に出演しての感想をお願いします。

神岡 東日本大震災が起きた時は、小学4年生ぐらいでしたけど、ニュースで見た津波の映像に大きな衝撃を受けたのは覚えています。ただ、日々の生活の中では大きな変化は少なくて、それまでとはあまり変わらない日常を送っていたように思います。それもあって、(漂流)ポストの存在を知ったのも、出演が決まってからでした。当初は(ポストの存在が)半信半疑でしたけど、役について考えを深めていく中で、震災に遭われた方々の心の救いや希望になっているんだと強く感じようになり、それをしっかりと認識しよう、しなくちゃいけないと思うようになりました。

中尾 私は小学校低学年だったこともあり、地震があって机の下に隠れたとか、体育館に避難して過ごしたというような、断片的なことしか覚えていないんです。でも、本作の出演が決まって震災について調べるうちに、強い衝撃を受けました。漂流ポストが大切な方を亡くされた人々の心の支えになっていることがよく分かって、そんな作品に携わることができたのをとても嬉しく思っています。本作が、一人でも多くの方々の心の支えになれたらと思います。

神岡 監督から、震災に遭われた方々に「この映画を観て救われました」と言われたと聞かされた時は、嬉しかったというか、心からよかったなと思いました。

――作品を観た人の心を動かすような役者像というのは、やはり二人が目指すものですか?

神岡&中尾 はいっ!

神岡 私はこうですと固めるのではなく、作品や役に合わせて、もっともっと自分の中身を出していきたいと思います。

中尾 私は、演じる役ごとに人が変わったようなお芝居をできるようになりたいです。性格の悪い役であれば、観ていただいた方に、「この子(役)性格悪っ!」って思ってもらえるようになりたいです。

画像5: 映画「漂流ポスト」で、色褪せない美しい時間の中で輝きを放つ芝居を見せた「神岡実希」と「中尾百合音」にインタビュー

――中尾さんは役になり切るタイプなんでしょうか?

中尾 そうでもないですね。演じているという意識はありますし、カットがかかった瞬間に、ポンって役が抜けて自分になる感覚です。

――最後に今年の目標があればお願いします。

神岡 もっとグローバルな視点を持てる人間になりたいです。加えて、昨年はコロナ禍で人と関わることが少ない一年でしたから、もっと人と関われるお仕事を頑張りたいです。そして作品を観てくださった方々の想い出に残るものができたらいいなと思います。とにかく人との関わりを大事にしたいです。

中尾 今年が高校生活最後になりますので、最後の学生生活を満喫しつつ、お仕事もたくさんする一年にしたいです。

映画『漂流ポスト』

3月5日(金)~18日(木) UPLINK渋谷にて公開 ほか全国順次公開中

<出演者>
雪中梨世 神岡実希 中尾百合音 藤公太 永倉大輔

<スタッフ>
監督・脚本・編集・プロデュース:清水健斗 撮影監督:辻健司  録音:田原勲 メイク:大上あづさ 制服:下山さつき 音楽:伊藤明日香 撮影協力:赤川勇治 漂流ポスト3.11 配給:アルミード 2018/日本/カラー/30分/シネスコ/ステレオ
(C)Kento Shimizu

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神岡実希 http://www.box-corporation.com/miki_kamioka
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