日々進化を遂げてきたデジタルオーディオの世界において、最先端を担うブランドのひとつが、2004年にアメリカで設立されたブリキャスティ・デザインである。

 日本市場へはD/AコンバーターM1SE、DACプリM12、モノーラルパワーアンプM28、ステレオパワーアンプM15が導入済。

 ご紹介するD/AコンバーターM3は、M1SEが持つ先進的な技術ポイントをすべて継承しつつ、電源構成や筐体のコストダウンにより約半分の価格を実現してしまった驚くべきコストパフォーマンスを持つモデル。HiVi誌「冬のベストバイ」D/Aコンバーター部門Ⅲでも4位と高評価を獲得した。

 技術的な内容は多岐にわたり、すべて書くには紙幅が足りないのだが、DAC回路を例にとると、左右独立完全差動変換動作を実現し、PCM信号とDSD信号をそれぞれ独立した回路でD/A変換。特にDSDは一般的なD/Aコンバーターで採用されるDACチップを利用したシグマ・デルタ変換に加え、純粋なデジタル信号経路と独自のデジタルフィルターを組み合わせた独自回路でのネイティブ再生を実現。つまりM3はふたつのD/A変換方式が利用できるのだ。また、プリアンプの機能も備えるが、アナログ回路はフルバランス構成で、アナログ、デジタル回路それぞれに独立したリニア電源を採用する。

 CNCフライス加工したアルミシャーシとフロントパネルに備えられた輝度の高い赤のLEDは、ハイエンドオーディオ機器らしい面持ち。MacBookをトランスポートに利用してM3とUSB接続し、ブルーノートの名盤、ドナルド・バード『バード・イン・フライト』(DSD 2.8MHz)を再生した。高分解能でドラムの力感に優れ、何よりトランペット鮮度が素晴らしい! 色艶のいい音に聴き惚れる。

 デジタルの入力系統は豊富だが、試聴機がネットワーク再生対応のオプションボードを装着していたので、NASに保存したホセ・ジェイムズ「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」(44.1kHz/24ビット)を再生した。やはり分解能と全帯域の音離れがいい。そこに適度な色彩が寄り添う筆者が好きな音だ。

 M3は高度な技術に裏打ちされたカッティングエッジなD/Aコンバーターだ。新進気鋭メーカーのオンリーワン的な立ち位置は所有欲をくすぐるし、要望のあった、DSD 11.2MHzの対応やオプションで高品位なヘッドホン端子も搭載できるところも嬉しい。何より、DSDの音は必聴である。

画像: ブリキャスティ・デザインから「M3」が登場。高度な技術に裏打ちされたDSD再生の音は必聴だ

D/A CONVERTER
Bricasti Design
M3
¥698,000+税(予価)

●対応サンプリング周波数/量子化ビット数(USB):〜384kHz/24ビット(PCM)、〜11.2MHz(DSD)
●接続端子:デジタル音声入力4系統(同軸、光、USBタイプB、AES/EBU)、アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、LAN1系統
●寸法/質量:W356×H64×D286mm/4.5kg
●問合せ先:(株)エミライ TEL. 03(6878)4273

画像: PCやネットワークトランスポートと接続するためのUSBタイプB、ネットワークオーディオ用のLAN端子を装備する。なお、フロントパネルのヘッドホンアンプはオプション扱いとなる

PCやネットワークトランスポートと接続するためのUSBタイプB、ネットワークオーディオ用のLAN端子を装備する。なお、フロントパネルのヘッドホンアンプはオプション扱いとなる

関連サイト

この記事が読める月刊「HiVi」12月号のご購入はコチラ!

This article is a sponsored article by
''.