レーベンは1990年代に登場した兵庫が拠点の国産アンプメーカー。しばらく日本国内での販売を見合わせていたがこのほど復帰。

 プリメイン型式のCS600Xは、世界的人気を誇ってきたというCS600のリファイン版だ。回路を見直し、将来的なサービス性を考慮して初段に12AU7を起用。初段はSRPPであり、そこに直結される2段目は12BH7Aによるカソード結合型位相反転段。出力段は標準がEL34のプッシュプルであり、管ごとに個別のカソード抵抗を配置して安定動作を重視している。また、カソード抵抗の値は内部のスイッチで切り替えられるようになっていて、出力段B電源の電圧値も同様だ。これらは6L6GC、KT88などの差し替えに対応したもの。切替え設定の結果は前面パネルにLED表示される。

 トータルNFBについては、その経路に「フラット」、+3、+5㏈の3段切り替えNFB型バスブースト回路を挿入している。

 このように伝統的なプリメインアンプらしい機能性も充実しているのが本機の一大特徴だ。入力セレクターの他にテープモニター機能があり、さらに「プリイン」機能もある。これはボリュウムとL/Rのバランス機能が有効な「ボリュウムダイレクト」であり、CDプレーヤー直結使用や残留ノイズの多いプリアンプを使う場合に重宝するだろう。他に保護抵抗経由でヘッドフォン出力があり、また出力端子の負荷インピーダンスはリアパネルの切替えスイッチで4、6、8、16Ωが選択可能だ。これは使いやすい。

 出力管はEL34(エレクトロ・ハーモニックス)で試聴。まずはミケランジェロ/北ドイツ放送交響楽団の「モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番」に打ちのめされた。ピアノは今でも天下一というほどの美音と流れのよい構築感を示しつつ、決して十全ではないライヴ録音に活性が与えられる。伴奏のオケに加えてホールという影の支援者も呼び出して、親しげで非凡、厳粛にして典雅な響きの熟成感に驚かされる。

 ケルテス指揮の「ハーリ・ヤーノシュ」にしても、大スケールにしてピークが鋭く、ナポレオン軍の壮大なる虚仮の猛進、サキソフォーンのよたよたした嘆き節など胸のすくような表現域の広さだ。ビッグバンドジャズ、コンボジャズの切れのよさ、吹き上げ感も快調。このようにジャンルにかかわらず、わずかでも間接音成分や倍音成分のゆとりがあると、それが実音を手招くように表情豊かにしつらえる技が巧みだ。

 試みにエアータイトATC5プリアンプをつないで「プリイン」を試すと、鮮度や分解能が向上。瞬発力も尋常ではない凄みを発揮する。ただし少し乾いたトーンになり、すると多数の信号系スイッチやシールド線による損失は、陰影豊かな再生再現能力に貢献していることが判明するのだ。ロスを価値ある凝縮感に活用する巧みな音質設計なのだろう。古典的な銘球でなくても、こうした達観の世界を味わえるのも実に頼もしい。

画像: 国産アンプメーカーのレーベンより、海外でベストセラーとなった「CS600X」が待望の国内再登場

Integrated Amplifier
レーベン
CS600X
¥780,000

●出力:28W+28W(4Ω〜16Ω/EL34系)、32W+32W(6L6系)●入力端子: LINE6系統(RCAアンバランス、LINE4系統/CD/TAPE)、PREAMP IN(RCAアンバランス)●出力端子:REC OUT 1系統(RCAアンバランス)●スピーカー出力端子:1系統(4Ω/6Ω/8Ω/16Ω切替え)●使用真空管:6CM3×1、12AU7(JJElectronic)×2、12BH7(JJ Electronic)×2、EL34(Electro-Harmonix)×4 ●寸法/重量:W450×H142×D360mm/23kg ●備考:内部スイッチの切替えで出力管を6L6、KT88などと差し替えが可能 ●問合せ先:ヒノ・エンタープライズ TEL. 06(6170)5731

画像: フロントビュー。操作ノブは、左から入力セレクター、テープモニター、モード切替え、ボリュウム、バランス、バスブースト。下部のスイッチは、左からプリイン、ミュート、スピーカー/ヘッドフォンの切替え。右上には出力管のカソード抵抗とプレート電圧の表示があり、6L6GCもしくはEL34の設定が表示される。

フロントビュー。操作ノブは、左から入力セレクター、テープモニター、モード切替え、ボリュウム、バランス、バスブースト。下部のスイッチは、左からプリイン、ミュート、スピーカー/ヘッドフォンの切替え。右上には出力管のカソード抵抗とプレート電圧の表示があり、6L6GCもしくはEL34の設定が表示される。

画像: リアビュー。右端にテープを含む6系統のラインレベル入力端子(RCAアンバランス)、その左に録音出力とプリイン(RCAアンバランス)を配置。スピーカー出力は1系統だが、インピーダンスはスイッチ切替えにより4Ω、6Ω、8Ω、16Ωに対応する。

リアビュー。右端にテープを含む6系統のラインレベル入力端子(RCAアンバランス)、その左に録音出力とプリイン(RCAアンバランス)を配置。スピーカー出力は1系統だが、インピーダンスはスイッチ切替えにより4Ω、6Ω、8Ω、16Ωに対応する。

画像: 天板の内部。フロントパネル側の左端に出力管のカソード抵抗とプレート電圧の切替えスイッチを配置。出力管EL34、6CA7、KT77、6L6、5881、350B、KT66、KT88、6550の9種での動作が確認されている。

天板の内部。フロントパネル側の左端に出力管のカソード抵抗とプレート電圧の切替えスイッチを配置。出力管EL34、6CA7、KT77、6L6、5881、350B、KT66、KT88、6550の9種での動作が確認されている。

画像: 底板を外して見る。内部はプリント基板を使わないリード線による配線。コンデンサー類もラグ板を使ってきれいに配置されている。

底板を外して見る。内部はプリント基板を使わないリード線による配線。コンデンサー類もラグ板を使ってきれいに配置されている。

画像: CS600Xの内部を確認する吉田氏

CS600Xの内部を確認する吉田氏

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