私はダイレクトドライブ(DD)方式ターンテーブルを支持するオーディオファイルだが、今ではモーターを自社開発できるメーカーが少ないことを嘆いている。本格派のDDモーターといえるのは、世界中を見渡しても日本のテクニクスとドイツのブリンクマン、そして同じくドイツのSTSTくらいだ。

 ここで紹介するブリンクマンのトーラスは、同社バルドの上級機にあたるスケルトンタイプのターンテーブル。慣性質量を重視した形状のプラッターは10㎏で、アナログ盤との接地面は平面性の高いガラス製だ。中心部分で盤を浮かせてクランパーで押し付けることにより、面ブレの少ない平面状態を得ている。同社には2機種のDD方式ターンテーブルがあるが、堅牢なDC駆動の8極DDモーターとプラッターはいずれも共通している。

 トーラスの試聴機には同社製ストレート型トーンアーム(別売の10・0)が搭載されていた。カートリッジにフェーズメーションのPP2000を装着し、昇圧トランスからパワーアンプまでをエアータイト製で統一。B&Wの800D3をモニタースピーカーに、私は持参したディスクを聴いている。

 最初に聴いたアンセルメ指揮の「三角帽子」は音の重心が低く、抜群のS/N感で音を高精細に聴かせる。トーンアームの音離れも優れているのか、無駄に尾を引かない清潔な音の構築が印象的だ。続いて聴いたブライアン・ブロンバーグの「WOOD2」も安定感が高く、音像の輪郭もハッキリした凄みのある力強いウッドベースの轟音を愉しませる。

 アン・バートンのダイレクト盤(ロブスター企画)は歯切れの良いチャーミングな彼女の発声と明瞭な伴奏が際立ち、オーディオ志向らしい音の良さを実感。締りのある音傾向はトーンアームの性格だけでなく、盤面がプラッターにしっかりと接地された効果もあるのだろう。リー・リトナーのダイレクト盤(ビクター)も、細部まで見通せるような透明な空気感を背景に、思わず引き込まれてしまうスリリングな演奏が展開される。同じ試聴ディスクをテクニクスのSL1000Rで聴いたときよりも音のフォーカスが締まって感じられたのは、ゴム製マットの有無が関係しているに違いない。脚部はソリッド構造なので、設置環境によってはウェルフロートなどのオーディオボードを併用した方が振動伝達に起因する音の雑味を減らすのに効果的かもしれない。ブリンクマンのトーラスは、きわめて完成度の高いターンテーブルである。

 ブリンクマンには、真空管を合計3本使ったロントⅡという別売の電源ユニットがある。それによる違いは大きく、体感的な音質変化は想像以上だった。この管球式の電源部にすると、音の滑らかさが格段に高まるのだ。プラッターの慣性質量が変わるはずはないので、DDモーターのトルク発生時の挙動が質的に異なるのだと思う。きわめてオーディオ的で、しかも趣味性の高い電源ユニットである。

画像: ブリンクマン「Taurus」自社製モーターでDD駆動し、抜群のS/N感で高精細な音に。

Record Player System

ブリンクマン
Taurus ¥1,750,000 ※アームレス価格

トーンアーム部(別売Tonearm 10.0)●型式:スタティックバランス型 ●スピンドル・ピボット間:243±2mm ●適合カートリッジ重量:8g〜16g 
プレーヤー部●駆動方式:ダイレクトドライブ ●モーター:DCモーター ●回転数:33・1/3、45rpm ●ターンテーブル:アルミ合金+クリスタルガラスマット・10kg ●寸法/重量:W420×H100×D320mm/22kg(本体部)、3.2kg(電源部Performance P/S)●備考:写真のカートリッジは別売。トーンアームTonearm 10.0(¥438,000)別売、オプションのツインアーム用アームベース(¥94,000)他あり。別売の真空管式電源部RöNt Ⅱ(¥550,000)あり ●問合せ先:(株)太陽インターナショナル TEL:03(6225)2777

画像: トーンアームTonearm 10.0はハードアルミとステンレスの複合構造によるアームパイプを採用。アルミ切削加工による40mm厚のベース部は脚部3点支持で、ベース部にはRCAアンバランス出力端子とアース端子を装備する。

トーンアームTonearm 10.0はハードアルミとステンレスの複合構造によるアームパイプを採用。アルミ切削加工による40mm厚のベース部は脚部3点支持で、ベース部にはRCAアンバランス出力端子とアース端子を装備する。

画像: プラッターを外してベース部を見る。駆動方式はコギングを極力抑えた自社設計DCモーターによるダイレクトドライブ型。電源ON/OFFと回転数切替えはワイヤレス操作。プラッターは10kgの重量級。スピンドル部にリングが装着され、レコードはスクリュー式のクランパーで圧着する。

プラッターを外してベース部を見る。駆動方式はコギングを極力抑えた自社設計DCモーターによるダイレクトドライブ型。電源ON/OFFと回転数切替えはワイヤレス操作。プラッターは10kgの重量級。スピンドル部にリングが装着され、レコードはスクリュー式のクランパーで圧着する。

画像: 組み合わせて試聴した別売の真空管式電源部RöNt Ⅱ。

組み合わせて試聴した別売の真空管式電源部RöNt Ⅱ。

画像: RöNt Ⅱの天板はガラス製。真空管は中央が整流管5AR4、左右がTV用水平偏向出力管PL36。出力電圧DC24Vを安定的に供給する

RöNt Ⅱの天板はガラス製。真空管は中央が整流管5AR4、左右がTV用水平偏向出力管PL36。出力電圧DC24Vを安定的に供給する

画像: 真空管式電源RöNt Ⅱの内部を確認する三浦氏。

真空管式電源RöNt Ⅱの内部を確認する三浦氏。

試聴に使用したカートリッジ
フェーズメーション PP2000 ¥440,000
試聴に使用したMC昇圧トランス
エアータイト ATH3 ¥150,000

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