アンプやデジタルプレーヤーなどの主力機種に音質向上策を講じたSE(スペシャル・エディション)という特別仕様は、多くのオーディオメーカーが手掛けている。その先駆けとなったのは、マランツが30年前の1990年に発売したインテグレーテッドアンプのPM80SEとCDプレーヤーのCD66SEだったいう。さきごろマランツはSEの先駆者という主張を込めて、OSE(オリジナル・スペシャル・エディション)と名付けたインテグレーテッドアンプのPM12 OSEとSACDプレーヤーのSA12 OSEを発売した。ここではSA12 OSEの試聴リポートをお届けする。
ベースとなったSA12は、MMM(マランツ・ミュージカル・マスタリング)という名称の1ビット・ディスクリートDAC回路を搭載する、マランツのセカンドベスト機だ。CDやUSB入力など、すべてのPCM信号は32ビット/11.2(12.3)MHzのPCMにアップコンされてから、1ビット/11.2MHzのDSD信号に変換されてディスクリートDAC回路に送り込まれる。いっぽう、SACDやUSB入力からのDSD信号は変換されることなくストレートにディスクリートDACに送り込まれる。SA12はUSB入力の対応範囲の広さも魅力的な、万能タイプのデジタルプレーヤーである。
SA12 OSEでは、トップエンド機SA10と同じ5㎜厚のアルミニウム製トップカバーが与えられ、鋼板製シャーシには電気抵抗を低くする高価な銅メッキ処理が施された。加えて、アルミニウム鋳造の脚部を切削加工品にするなど、外装関連をSA10と同等グレードにした豪華仕様である。音質面では35個の固定抵抗器(金属皮膜抵抗)の換装によるファインチューニングを行なっている。価格は、SA12の5万円アップになる35万円。SA12OSEが登場することで、オリジナルのSA12は製造完了となった。
SA12 OSEは本誌試聴室で聴いている。音源はCDとSACDの光ディスクと、DELAのNASに格納したハイレゾ(USB接続)である。プリアンプとパワーアンプはエアータイトのATC5とATM3。モニタースピーカーはB&W800D3を使用した。
マランツのディスクリートDACはスリムな筋肉質の音傾向が特徴であり、このSA12 OSEは最高級機のSA10に肉薄する、音の骨格がしっかりした緻密さを持ち味にしている。あきらかに筐体の剛性アップが反映された音で、手嶌 葵のCDは輪郭を強調せずに音の境界を際立たせる立体的な描写。SACDで聴くジャナンドレア・ノセダ指揮の「新世界」は、一音一音の克明さと解像感の高さを印象付ける。管球式アンプとの相性もよさそう。低域方向の豊かさが加わることで臨場感が増しており、アコースティック・ウェザー・リポート2のハイレゾは、押しの強さと鮮度感の高さがうまくバランスしている聴き応えのある音だった。