シャープは、文化財活用センター、東京国立博物館と協力し、「8Kで本物に触れる」をテーマにした、文化財の新しい鑑賞方法「8Kで文化財『ふれる・まわせる名茶碗』」の体験会を、7月29日(水)〜8月2日(日)に上野の東京国立博物館・東洋館で開催する。

 これは、8Kモニターを使った「シャープ8Kインタラクティブミュージアム」をベースに開発されたソリューションとなる。「多数の収蔵品はあるが、実物の展示だけではその魅力や鑑賞の楽しさを一般来館者に感じてもらうことが難しい」とのいう博物館側の課題と、「8Kによる新しい体験やソリューションを提供し、8Kの世界をより多くの人に伝えたい」というシャープの思いから、三者で共同研究を進めてきたそうだ。

画像: 東洋館1Fに設けられた「8Kで文化財『ふれる・まわせる名茶碗』」の体験コーナー

東洋館1Fに設けられた「8Kで文化財『ふれる・まわせる名茶碗』」の体験コーナー

 体験エリアは東洋館入り口正面に設けられ、壁掛け設置された2台の8Kモニターの前には3Dプリンターで作られた3つの茶器が置かれている。それぞれ「大井戸茶碗 有楽井戸」「志野茶碗 銘 振袖」「青磁茶碗 銘 馬蝗絆」という美術品を忠実に再現しており、厚みや重さも本物と変わらない。

 このうち中央に置かれた有楽井戸が茶碗型コントローラーで、これを手に取って操作することで画面に表示された8K/3D映像の茶碗を回転・拡大でき、まるで実物に触れているかのような臨場感を堪能できるという仕組みだ。

 この茶碗型コントローラーには重力センサーが仕込まれており、このセンサーと8Kテレビに取り付けられた小型カメラによって茶器の傾きや位置を検出、その情報をフィードバックして、画面の3D映像をリアルタイムに表示しているという。

画像: 左から「青磁茶碗 銘 馬蝗絆」「大井戸茶碗 有楽井戸」「志野茶碗 銘 振袖」のレプリカ。中央の「大井戸茶碗 有楽井戸」がコントローラーになっている

左から「青磁茶碗 銘 馬蝗絆」「大井戸茶碗 有楽井戸」「志野茶碗 銘 振袖」のレプリカ。中央の「大井戸茶碗 有楽井戸」がコントローラーになっている

 その3D映像も単純にCGで再現されているのではなく、数百枚に及ぶ茶器の撮影データを元に、表面の模様から裏側の凹凸まで忠実に再現したそうだ。さらに学芸員の協力を得て、表面の艶や光が当たった際の色の見え方も厳しくチェックしている。特に色再現は3D映像を作る中でも一番難しかったそうだ。

 なお茶碗型コントローラーを手前に持ってくると、画面上の3D映像が拡大される。そのために映像データ自体は16Kもの高解像度を備えており、さらにそれをリアルタイム処理するために、グラフィック用のマシンパワーもかなり必要だったそうだ。

 会場に設置された8Kモニターは今回の表示用に作られた試作機で、画面サイズは70インチとなる。3D映像は色域BT.2020のSDRという仕様で、説明員によると会場は明るさを抑えた環境で、SDRでも充分本物に近い色や質感を再現できているとのことだった。

画像: 茶碗型コントローラーを動かすと画面上に8K映像でそのディテイルが表示される。見どころについてはマーカーで説明してくれる

茶碗型コントローラーを動かすと画面上に8K映像でそのディテイルが表示される。見どころについてはマーカーで説明してくれる

 今日開催された説明会で、茶碗型コントローラーを使った鑑賞方法を体験させてもらった。まずコントローラーを手に取ると、確かに本物の焼き物のような素材感と重さが感じられる。博物館の学芸員でもないと、こういった美術品に触れる機会はできないわけで、それだけでも貴重に思えてしまう。

 さらにコントローラーを動かすと、3D映像がリアルタイムで変化するので(もちろんこちらの動きに合わせて)、思わず画面に引き込まれる。先述した通り、色や艶などもオリジナルに忠実に再現されているので、リアリティは相当に高い。

 また今回の展示は、ただ単に茶器の映像を動かして眺めるだけではなく、画像に連動した解説表示も準備されている。画面上に茶器の見どころがマーカーでポップアップされ、そこをセンターに合わせると、特長を文字で解説したうえに、美術品にまつわる蘊蓄も披露してくれた。

画像: 見どころの解説もていねい

見どころの解説もていねい

 浅学にして茶器についてはまったく知識を持ち合わせていなかったが、茶器の高台(裏面の台座)の周りの釉薬の縮れ模様がワニ革に似ていることから「梅花皮」呼ばれているとか、同じ時代の茶器でも中国で作られたものと、日本のものでは厚さが倍近く違うことなど、興味深く拝聴した。

 「今回の体験会は8Kで観てもらうだけでなく、体験を持って帰ってもらいたいと思っています」と説明員の方が話してくれたが、確かに今回の催しは、レプリカとはいえ美術品の形や重さに触れることができ、その詳細な映像を見て、さらにそれにまつわる知識も習得できるという意味で、新しい体験といえるかもしれない。

 シャープを始めとする三者は、「手(触覚)」は「目(視覚)」とともに物の特徴や、その背景にある文化を感じ取る重要なセンサーと考え、今回の実証実験での知見をもとに、博物館ならではの新たな鑑賞体験を生み出し、8Kが創り出す鑑賞方法の可能性をさらに追求していくとのことだ。

画像: それぞれの茶器の断面も確認可能

それぞれの茶器の断面も確認可能

 なお「大井戸茶碗 有楽井戸」「志野茶碗 銘 振袖」のふたつについては、東京国立博物館・本館にオリジナルが展示されている。8Kで体験した後に本物を眺めることで、さらに深い体験につながるはずだ。(取材・文:泉 哲也)

8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」
●主催:東京国立博物館、文化財活用センター、シャープ株式会社
●設置場所:東京国立博物館 東洋館1階ラウンジ
●実証実験期間:7月29日(水)〜8月2日(日)
 ※日時指定による事前予約制(無料)

画像: 重要美術品 大井戸茶碗 有楽井戸 朝鮮時代・16世紀 東京国立博物館蔵

重要美術品 大井戸茶碗 有楽井戸 朝鮮時代・16世紀 東京国立博物館蔵

画像: 志野茶碗 銘 振袖 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京国立博物館蔵

志野茶碗 銘 振袖 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京国立博物館蔵

画像: 「8Kで本物に触れる」をテーマに文化財鑑賞ソリューションを共同開発、実証実験を公開:シャープ・文化財活用センター・東京国立博物館の三者で youtu.be

「8Kで本物に触れる」をテーマに文化財鑑賞ソリューションを共同開発、実証実験を公開:シャープ・文化財活用センター・東京国立博物館の三者で

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