映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第44回をお送りします。今回取り上げるのは、紆余曲折を経ながらも結成50年を迎えたバンド頭脳警察の活動を追ったドキュメンタリー作『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』。いまや好好爺となった二人の生き様が堪能できます。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』
7月18日(土)より、新宿K's cinemaにて公開!

画像1: 【コレミヨ映画館vol.44】 『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』より自由に。いまを楽しめ! 結成50周年を迎えた伝説のバンド、頭脳警察のドキュメンタリー映画

 3、4年前のこと。ひとの眼球に魅せられた女のさまよいを描いた『眼球の夢』という映画を観に行ったときに、マッド・サイエンティスト役で白髪の老人が出演していた。見覚えがあるのだが、誰かは分からない。それが1972年にデビュー・アルバムが発売禁止(赤軍兵士の詩、銃を取れなどの歌詞が問題となる)を食らったロック・バンド、頭脳警察のパンタだった。

 オリジナル・メンバーのパンタ(中村治雄vo&g)、トシ(石塚俊明perc)に加え、黒猫チェルシーの澤竜次(g)と宮田岳(b)、ほかに樋口素之助(ds)、おおくぼけい(key)がサポート・メンバーとして参加。2019年4月に新宿花園神社で50周年記念ライヴを行なった頭脳警察の過去、現在、未来を考察するドキュメンタリー映画。

画像2: 【コレミヨ映画館vol.44】 『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』より自由に。いまを楽しめ! 結成50周年を迎えた伝説のバンド、頭脳警察のドキュメンタリー映画

 レゲエやサンバのリズムがまぶされたPANTA&HAL時代の熱風アルバム「マラッカ」(1979年)なんかもよく聴いたなあ。初期の「世界革命戦争宣言」「さよなら世界夫人よ」などはいま改めて耳にしてもいい歌だ。

 若いリズム隊がぐいぐい押してくるので花園神社のステージは夜祭のイメージもあって熱量マックス! 1971年、ニュー・ロックの時代なんて呼ばれていたころに三里塚で開催されたコンサート「幻野祭」、社学同や日大全共闘、一水会の鈴木邦男や映画監督の足立正生、グループサウンズとして売り出されそうだったデビュー時代、京都のライヴハウス磔磔(たくたく)での演奏なども飛び出して、映画は闇鍋状態。いいじゃん、ロックなんてこんなもんだよ。

 ハイライトはロシア侵攻で揺れた黒海北岸のクリミア共和国で2018年夏に行なわれた音楽祭への出演風景だ。

 ここでパンタは通訳が内容を伝えた上で、「7月のムスターファ」を歌った。2003年、米軍の突入で父や叔父と共に戦い、射殺された14歳の少年ムスターファ(サダム・フセインの孫)の悲痛を唄った歌。ロシア美人のお姉ちゃんや家族連れで埋まったよく分からない大会場で胸を張るパンタがカッコいい!

 マジメな映画ではなく、芸能のいい加減さと反骨、ユーモアが漂っているのがすばらしい。パンタとトシは共に今年71歳。いまさら貯めるものも捨てるものもねえ! 前に進むだけ。齢をとると人間、自由になれるのではないか。そう思わせてくれる一本である。

『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』

7月18日(土)より、新宿K's cinemaにて公開!
出演:頭脳警察(PANTA、TOSHI、澤竜次、宮田岳、樋口素之助、おおくぼけい)ほか
監督・編集:末永賢
企画プロデュース:片嶋一貴 プロデューサー:宮城広
撮影:末永賢、宮城広 整音:臼井勝 スチール:シギー吉田、寺坂ジョニー
企画協力:田原章雄(PANTA頭脳警察オフィシャルFC)
     徳田稔(TEICHIKU ENTERTAINMENT)
企画・製作プロダクション:ドッグシュガー
製作:ドッグシュガー、太秦 配給:太秦
2020年/日本/1時間40分/ビスタサイズ、スタンダード/5.1ch
(C)2020 ZK PROJECT

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