前回、モータースポーツジャーナリスト 川井一仁さんのホームシアターシアターが完成したことをお知らせした。映画・音楽好きである川井さんは20年近く前からマンションのリビングでホームシアターを楽しんでいたが、今回はご自宅のリビングに4K&ドルビーアトモス対応シアターを導入したのだ。ただしその実現までには予想外の出来事が続き……というのが後編のお話。前回に続き、川井邸のホームシアター造りを監修(?)した潮晴男さんにリポートしていただきます。(編集部)

画像: 「これ取っちゃだめ?」 (潮) vs 「せっかく作ったのに……」(川井)

「これ取っちゃだめ?」 (潮) vs 「せっかく作ったのに……」(川井)

 AV機器の選定とスクリーンとスピーカーの位置決めが主たる目的で完成間近の川井さんの新居を訪れた。ここまでは前回お伝えした通りだが、重複を承知で言えば、リビングルームに入った途端飛び込んで来た梁を目の前にして、僕の中で何かが崩れ落ちる音がした。

 正直なところこれはないだろうと思った。当日は共通の友人である高瀬秀樹さんも一緒だったので、彼にも手伝ってもらい梁の中がどうなっているのか点検したところ、幸いにも梁の中は空洞で、構造物の一部になっていなかった。そこで下したぼくの結論。「これ取っちゃだめ?」 これには川井さんも「せっかく作ったのに……」とびっくり。

 結論とは言ったが、まずは奥様への提案である。「梁を取り払うと空間がすごく広くなるけど、プロジェクターはむき出しで目に入ってしまいます」。すると、躊躇することなく奥様が選んだのは空間の広がりだった。ということで撤去が決定。しかし言うのは簡単だが、行うは難し。手直し三倍とはよく言ったもので、一度あつらえたものを修正するには、労力も予算も必要になる。川井さんの顔を見て「どうする?」と問うと、「レディ・ファーストで」との回答である。

画像: 天井の梁の内部は、まったくの空洞でした

天井の梁の内部は、まったくの空洞でした

画像: 梁を撤去したら、すっきりした天井面が現れた

梁を撤去したら、すっきりした天井面が現れた

 かくして簡単な打ち合わせで終わるはずが、予想外の出費を含んだ改造計画発動! になってしまった。こうしてシアター兼リビングルームは再度設計士を入れて図面を書き直し、およそ3週間後に無事リニューアルが終了した。

 リビングの改装が終わったのち、シアター機材の設営を行う。導入した製品についてはコラムを参照いただきたいが、4Kシアター構築のため、プロジェクターはJVCの「DLA-V7」に入れ換え、AVセンターもドルビーアトモスへの対応とドライブ能力に優れたデノン「AVC-X8500H」をセレクトしたことが大きなポイントである。

 スクリーンについては、サウンドスクリーンも候補に挙がっていたが、スクリーン裏にスピーカーを設置できる充分なスペースがなかったことから断念した。またサブウーファーについても、川井さんのリクエスト、と言うよりごちゃごちゃするのが嫌いな奥様の希望でラックにすっきり収まる小ぶりなものに変更している。

画像: プロジェクター用の電源やHDMIケーブルの出口の位置を指定する潮さん。まるでわが事のように真剣!

プロジェクター用の電源やHDMIケーブルの出口の位置を指定する潮さん。まるでわが事のように真剣!

画像: フロントサイドを含めて、ダストが入らないようにきちんと養生されていた

フロントサイドを含めて、ダストが入らないようにきちんと養生されていた

 プロジェクターとスクリーン、そしてリアスピーカーの設置はシアターの施工で定評のあるアバックの系列会社、シー・エス・シーに依頼。経験豊富なスタッフらしく、ていねいな仕上がりである。機材の設置も終わり、ひと段落したら奥様が顔色を輝かせて入ってきた。なんでも完成の暁には、お気に入りのソファを発注するのだとか。シアターが出来上がるまでじっと我慢の子だったんですね。ホントお待たせしました。

 プロジェクターを設定し、AVセンターの音場測定を済ませた後、UHDブルーレイを再生してみる。いくぶん中低域が厚めという感じもしなくはないが、川井さんがお気に入りのエラックの「FS207.2」がよく謳うし、映画音響でもエネルギー感の豊かなサウンドを再現する。プロジェクター、AVセンターともどもしばらくエージングした後微調整を加えれば、さらなる高みが目指せそうだ。

 次回訪問した際にはどんなソファが置かれているのか、こちらも気になるなぁ。

※次回は川井さんのホームシアターに豪華ゲストをお招きして、話題のUHDブルーレイ『フォードVSフェラーリ』を体験します。お楽しみに!

手持ちの機器を活かしつつ、最新フォーマットに対応
川井邸への追加アイテムはここを基準に選んでいます (潮晴男)

 今回の川井シアターのリニューアルポイントは、新しくなった視聴環境に併せて最新のパッケージであるUHDブルーレイを心おきなく楽しめるように機材を選んだことである。

 4K映像が再生できるプロジェクターはビクター「DLA-V7」のほかにもあるが、決め手は「フレームアダプトHDR」。UHDブルーレイのHDRフォーマットについては、プロジェクターユーザーは十全に恩恵に浴すことが出来なかったが、この機能はストレスなくその願いをかなえてくれるからである。

 個人的には8K映像にアップコンバートできる「DLA-V9R」を薦めたかったが、今回は予算との兼ね合いからV7に落ち着いた。しかし、V7も上位機と同じ基本構造(4K D-ILAパネルやランプなど)を備えており、キクチのスクリーン「SE-120HD(生地はホワイトマットアドバンス)」との相性も申し分なく、コントラスト感が高く発色のよい映像を再現する。

 AVセンターはドルビーアトモスへの対応を始めイマーシブ・オーディオに万全の態勢で臨めるデノンの「AVC-X8500H」を選んだ。弟機の「AVC-X6500H」も候補に挙がったが、インピーダンスが4Ωのエラック製スピーカーをドライブするという点でも、X8500Hのほうが安心だ。

 センタースピーカーの置き場所はもう少し追い込みたいが、ダイアローグの活舌感といい、SFXやアクション系のソフトにおけるグリップ感に優れたサウンドが味わえるのは、AVセンターのパフォーマンスに負うところが多い。現状ではスピーカー構成が5.1.2とチャンネル的には余裕があるので、この点はおいおい詰めていくことになるだろう。

 サブウーファーは、黒い箱がでんと構えているのが気に入らないという奥様のリクエストを踏まえて、以前よりワンサイズコンパクトなKEF「Kube8b」をチョイス。とは言えサブウーファーは映画サウンドの再生にとって重要な鍵を握るアイテムだ。サイズが小さくなったからと言って鳴りっぷりが寂しくなっては意味がないので、メインスピーカーとのつながりがスムーズで、かつ低域までよく伸びていることを確認して導入している。

川井邸の主なホームシアターシステム
●プロジェクター:JVC DLA-V7
●スクリーン:キクチSE-120HDホワイトマット・アドバンス(120インチ/16:9)
●ディスプレイ:シャープLC-52LV3
●BD/HDDレコーダー:パナソニックDMR-UBZ2020、DMR-BRG2030
●ケーブルテレビチューナー:パナソニックTZ-DCH520
●DVD/LDプレーヤー:パイオニアDVL-919
●CDプレーヤー:フィリップスCDR-670
●AVセンター:デノンAVC-X8500H
●スピーカーシステム:エラックFS207.2(フロント)、CC200.2(センター)、BS203.2(トップ、サラウンド)
●サブウーファー:KEF Kube8b

画像: 4K映像再生のキーアイテム、JVC DLA-V7

4K映像再生のキーアイテム、JVC DLA-V7

画像: 潮さんも自宅で愛用している、デノンAVC-X8500H

潮さんも自宅で愛用している、デノンAVC-X8500H

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