オーディオやオーディオビジュアルの世界は日進月歩。次々に新しい技術やそれを搭載した新製品が登場し、入れ替わりも早い。だが同時にそれらは、常に時代の最先端を走っているモデル達でもあり、思い出に残る製品ともいえる。このシリーズでは、弊社出版物で紹介してきた名機や名作ソフトに関連した記事を振り返ってみたい。

画像: 以下の記事はHiVi2010年12月号に掲載されています

以下の記事はHiVi2010年12月号に掲載されています

音質への配慮と多機能性を両立。
マランツから単体ネットワークプレーヤーが発売!

PCオーディオが世界的にもてはやされている中、もうひとつのファイルオーディオ再生手法がリンのDSシリーズによって鮮明になった。いわゆるネットワークオーディオだが、遂に日本のマランツとヤマハも本格的なネットワークオーディオプレーヤーの発売に踏み切った。ヤマハのNP-S2000は、前号で報告されたとおり、ネットワークオーディオへの特化が最大の特長。対してマランツのNA7004は少々違うコンセプトだ。その魅力を検証しよう。

CDで培った本格設計。独自の多機能性も特筆される

 NA7004の基本は、前号に詳報のヤマハNP-S2000同様、DLNA1.5準拠のネットワークオーディオプレーヤーである。しかしNA7004は、PCオーディオなどにも積極的に対応するマルチパーパスな機能性も誇る。実はそれが本機の大きな魅力だ。その対応力を接続端子別に見てみよう。

 まずは、DLNA1.5準拠のネットワークオーディオ機能とLAN端子の搭載。DLNAサーバー機能を持つPCやNASからMP3、WMA、AAC、WAV、FLACのファイルが再生できる。中でも注目はFLACの96kHz/24ビットまでの対応だ。

 NA7004がターゲットとする主なユーザー層は2chのピュアオーディオファンであることは間違いない。片やAVでは、AVセンターのネットワーク機能も充実しつつあるが、現段階ではすべてのモデルが充分とは言い難い。そうしたAVセンターユーザーの買い足しも考えられる。NA7004は、2chオーディオファンにもAVファンにも、新しい高品質オーディオソースのプレーヤーとして注目されよう。

画像1: 音質への配慮と多機能性を両立。 マランツから単体ネットワークプレーヤーが発売!

 しかし一般的には、デジタルファイルの再生はPCを使う手段が圧倒的に多いはず。というところからUSB DACやPCに似合う小型スピーカーなどが続々登場したものと思う。PCの普及度合いからすれば、その顧客数は膨大であり、新しいメーカーの誕生もハイエンドオーディオメーカーの参入も頷ける。

 NA7004は、こうした大きなニーズにも対応するため、リアパネルにUSB(Type-B)入力端子を装備。サンプリング周波数は最大96kHz、分解能は最大24ビットのUSB DACでもあるのだ。

 PC派にとってのNA7004は、最初はPCオーディオのUSBて使い、やがてはネットワークオーディオへ、という発展性も魅力となろう。

 そのほか、iPodとのデジタル接続が可能なUSB端子をフロントパネルに装備。しかもUSBメモリーに保存されたMP3、WMA、AAC、WAV、FLACの再生が可能だ。もちろんFLACは96kHz/24ビットまで対応する。また、192kHz/24ビットまで対応する同軸と光のデジタル入力端子も装備、とソースへの対応は実に多彩である。

 こうして入力された信号は同社製SACDプレーヤーに採用されているシーラスロジックの高性能D/Aコンバーターでアナログに戻される。そしてアナログ出力回路にはマランツ自慢の「高速電圧増幅モジュール」を投入するなど、音質設計も万全である。

 より自分好みの音を求めるファンには、外部D/Aコンバーターが使えるように、デジタル出力端子(同軸と光)を備える。と、マニアックな反面、PC派に喜ばれそうなヘッドフォン端子も装備する。こうした幅広いターゲットやコンビニエントなフィーチャーは、ヤマハNP-S2000とは違う、NA7004ならではの特徴である。

間違いないオーディオクォリティ。驚きの空間描写能力だ

 実際の音を別項のリファレンス機器で確認した。まずはネットワーク再生の音。ネットワークは無線LANルーターからNASとNA7004にLAN接続したシンプルな構成。操作は付属リモコンと本体の有機ELディスプレイでも容易だが、取材ではiPadにインストールしたDLNAコントロールソフトのプラグプレーヤーで行なった。

 試聴曲は96kHz/24ビットのFLACファイル、ロバート・プラント&アリソン・クラウス『リッチ・ウーマン』だが、正直なところ感動は薄い。試しに同曲のCDをエソテリックのUX-1L(リミテッド)で聴くと、音に芯があって、声も楽器もひじょうに実在的だ。NA7004は、UX-1Lと比較すべき価格ではないが、それにしても力の無い平面的な音である。

画像2: 音質への配慮と多機能性を両立。 マランツから単体ネットワークプレーヤーが発売!

 実はここで接続していたLANケーブルは、普段使っているPC用のモノ。この2本をエイムのネットワークオーディオ用ケーブル「SHIELDIO」に改めると、驚くことに、実体感と空間感が激変した。低域の力感はUX-1Lに及ばないが、空間描写は大きく凌ぐ。ポップスからジャズ、クラシックと聴いたが、どれも素晴らしい音楽再生だ。とりわけ、ブーレーズとウィーン・フィルのマーラー『交響曲第5番』はあのムジークフェラインの黄金の響きがイメージできる圧巻の空間感だ。

 こうなると欲が出る。デジタル出力端子を使い、アキュフェーズのD/AコンバーターDC801を同軸接続で追加。すると、ウィーン・フィルが克明かつ力強く迫り来る。もちろん圧巻の空間感で。『リッチ・ウーマン』も、トレモロとディレイとリバーブの空間マジックを一層鮮明にしつつ、スピーカーバッフルから浮き出るように生き生きと鳴る。NA7004は相当に懐が深い。

 USB DAC機能では、PCとフルテックのUSBケーブルGT2 USB-BでPCと接続。聴き慣れた『リッチ・ウーマン』はわずかに空間が狭くなった気もするが、次元の高い再生音に変りはない。

 前面USB入力は、iPodなどの手軽な接続に重宝する便利な端子と思いきや、USBフラッシュメモリーから再生した『リッチ・ウーマン』が予想外に素晴らしく驚いた。これだけ多彩に楽しめてこの価格は本当にお買い得だ。

NETWORK PLAYER/USB DAC
MARANTZ NA7004 ¥97,650 ※価格は発売当時のもの

画像: 【HiVi名作選】ネットワークプレーヤー マランツ「NA7004」(HiVI2010年12月号)

●接続端子:デジタル音声入力2系統(同軸、光)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、USB2系統(TypeA、TypeB)、アナログ音声出力1系統(RCA)、LAN1系統、他
●寸法/質量:W440×H106×D343㎜/6.5㎏

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