昨今、テレビ放送やインターネット上で「歌のうまい歌手ランキング」といった類の調査が行なわれ、その結果が注目を集めているようだが、そこに必ずといっていいほど名を連ねるのが、人気バンド、安全地帯を率いる玉置浩二だ。

 「歌唱力、声量、表現力と、すべてにおいてトップクラス」、「優しい中に、どこか官能的な響きを持つ声も悩ましい」、「変幻自在の歌声は天性のもの」などなど、彼の歌声の評判をちょっと検索すると、その歌唱力を絶賛する意見が続々とみつかる。

 もちろん私自身、彼の歌の上手さは前々から認識し、贔屓の曲も少なくないが、彼のキャラクターと言うか、人柄に魅せられ、より積極的に向き合うようになったきっかけは、井上陽水との31年ぶりの共演が大きな話題となった『SONGSスペシャル』(NHK総合、2017年11月10日放送)だった。

 1980年代に「ワインレッドの心」、「恋の予感」、「夏の終りのハーモニー」と、井上陽水とのコラボによって大ヒットを連発した安全地帯。『SONGS〜』は安全地帯のデビュー35周年、そして玉置浩二のソロデビュー30周年を記念した企画で、井上陽水との共演は1986年の神宮球場公演以来とのこと。

 井上陽水のバックバンドとしてスタートし、プロとしての実績を積み、いまや日本を代表する人気ロックバンドへと成長を遂げた安全地帯。玉置浩二は実力派のヴォーカリストとして確固たる地位を獲得したわけだが、井上陽水へのリスペクトはいまも変わらない。

 番組では「夏の終りのハーモニー」1曲の収録のためだけにNHKに集結した2人に密着しているが、随所で井上陽水を敬う玉置浩二の気持ちが伝わってくる。

 彼は「陽水さんの前では直立不動です」と言ってはばからないが、まさにその玉置浩二の優しい気づかいが映像からダイレクトに感じ取れるのである。

ゾクッとするような生々しさと、切ない声の表現力が心に染み渡る

 前置きが長くなってしまったが、このほどステレオサウンド・アナログレコード・コレクションとして『安全地帯 ベスト第2弾』と『玉置浩二 ベスト』の2タイトルが発売された。

 まず『安全地帯〜』だが、昨年の9月に同社から『安全地帯ベスト』(アナログレコード)が発売されている。このベストは、同社が選曲・構成し、独自制作したSACD/CDハイブリッド盤『安全地帯ベスト』に収録した18曲から10曲を選出し、貴重なアナログ・マスターテープから新規に制作されたもの。

 第一弾の好評を受けて、今回の第二弾では前作で収録されなかった8曲に「瞳を閉じて」、「オレンジ」の2曲を追加。貴重なアナログ・マスターテープとデジタル・マスターを使用し、全10曲構成として新たに制作している。

 『玉置浩二 ベスト』だが、これも独自制作による全10曲の構成だ。A面は2枚目のソロアルバム『あこがれ』から、「あこがれ」、「ロマン」、「コール」、「大切な時間」の4曲に、大ヒット曲「行かないで」を加えたバラード中心の内容。そしてB面は、2015年の全国ツアーから、故郷の旭川市公会堂でのライヴ音源で、「しあわせのランプ」、「aibo」、「君がいないから」「田園」、「メロディー」の5曲を収録している。

 原盤となるラッカー盤の製作担当は、いずれも日本コロムビアの名匠、武沢茂氏。匠の技によってマスター音源の音が鮮烈に蘇り、音質重視のプレス材料を奢った180グラムの重量盤として仕上げられた贅を尽くしたアナログレコードである。

 手元にある安全地帯のオリジナルLPから今回の新譜にも収録された2曲、「マスカレード」(『安全地帯Ⅱ』より)、「瞳を閉じて」(『抱きしめたい 安全地帯Ⅲ』より)を再生し、そのサウンドを確認してみたが、これはこれでそうとうレベルが高い。「マスカレード」は囁くような甘く、柔らかい歌声で、すべてを自分の世界に引き込んでしまうかのような説得力に圧倒される。「瞳を閉じて」では安全地帯ならではのノリのよさで的確にリズムを刻み曲をリードしていくが、1音1音にしっかりと込められた熱気、パワーが体の隅々にヒシヒシと伝わってくる。

画像1: 名盤ソフト 聴きどころ紹介13/『安全地帯 ベスト第2弾』、『玉置浩二 ベスト』 Stereo Sound REFERENCE RECORD

●仕様:アナログレコード33回転180g重量盤
●カッティング エンジニア:武沢茂(日本コロムビア㈱)

安全地帯 ベスト第2弾
¥8,000+税 (ユニバーサル/ステレオサウンドSSAR-044)

[Side A]
1. Juliet
2. 月に濡れたふたり
3. 朝の陽ざしに君がいて
4. あの頃へ
5. 瞳を閉じて
[Side B]
1. 好きさ
2. じれったい
3. マスカレード
4. I Love Youからはじめよう
5. オレンジ

  ●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/3236

 ところが同じ曲を『安全地帯 ベスト第2弾』で聴くと、絶対的な情報量の違いに驚かされる。もっとも強く感じるのは、音楽の足元、つまりバスドラムやベース、スネアなどの中低域の表現の確かさと、目の前に拡がる空間の大きさだ。

 「瞳を閉じて」ではより的確にピッチが刻まれることで、甘く切なく歌う玉置浩二のヴォーカルがさらに伸びやかに感じられ、切ない声の表現が心に染み渡る。

 続いて『玉置浩二 ベスト』の再生。A面スタジオ収録音源、B面ライヴ収録音源というちょっと変わった構成だが、私個人としては断然B面のライヴ収録に感動を覚えた。一発勝負だけに、レコードのライヴ音源は簡単ではないが、このアルバムでは情感のこもった歌、ノリのいい演奏、そして熱気を伝える観客の拍手、歓声と、ライヴならではの臨場感をダイレクトに感じさせてくれる。

画像2: 名盤ソフト 聴きどころ紹介13/『安全地帯 ベスト第2弾』、『玉置浩二 ベスト』 Stereo Sound REFERENCE RECORD

●仕様:アナログレコード33回転180g重量盤
●カッティング エンジニア:武沢茂(日本コロムビア㈱)
●収録:Side Aは玉置浩二ソロ2作目『あこがれ』から抜粋4曲+シングル「行かないで」の計5曲を収録。Side Bは、CD『玉置浩二 LIVE 旭川市公会堂 故郷楽団Concert Tour 2015』より抜粋した5曲を収録

玉置浩二 ベスト
¥8,000+税 (ユニバーサル/ステレオサウンドSSAR-045)

[Side A]
 1. あこがれ
 2. ロマン
 3. 行かないで
 4. コール
 5. 大切な時間
[Side B]
 1. しあわせのランプ
 2. aibo
 3. 君がいないから
 4. 田園
 5. メロディー

  ●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/3240

 圧巻は最後の2曲、「田園」と「メロディー」。前者はパワフルな声色と優しく語りかけるような歌い方のコントラストが実に明快で楽しい。とにかく歌声の安定感が際立ち、目の前にその情景が浮かんでくるほどの表現力に戸惑うほど。そして「愛はここにある、故郷にある」と歌い、観客の気持ちを鷲掴み。この歌唱力こそ、玉置浩二の真骨頂と言っていいだろう。

 「メロディー」では甘く切なく、ささやくように歌う玉置の聴き心地のいい声に引き込まれる。特にピアニッシモの表現は圧倒的で、アコースティックなギターの響きとともに、ホールにジワッと浸透していく様子が生々しい。ここまでの豊かな空間のスケールを感じさせてくれるライヴ音源が、アナログレコードで体験できるとは——。

 このゾクッとするような生っぽさ、ライヴ感を、ぜひご自分のシステムで体験していただきたい。

●問合せ先:㈱ステレオサウンド 通販専用ダイヤル03(5716)3239(受付時間:9:30-18:00 土日祝日を除く)

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