アクティブスピーカーを、どうオーディオビジュアルシステムとして組み上げるか? ここでは業務用スピーカーの定番、ジェネレックを例に考えてみたい。アクティブスピーカーがあれば、あとはストリーミングサービスへの対応や、サラウンド規格など、最新のデジタルの技術への対応だけを考えればOK。時代に合わせたスマートなシステムを目指したい。

 ビクタースタジオを始め、名立たる録音/マスタリングスタジオ稼働実績とプロ用のアクティブモニター世界ナンバーワンシェアを誇るモニタースピーカー界の代表的ブランドがジェネレックだ。北欧フィンランドで78年に創業された同社は、当初からパワーアンプを内蔵したアクティブスピーカーを手掛けている。

 その最新の技術的成果は、今回テストした家庭用アクティブスピーカーの「Gシリーズ」にも活かされている。ハイパワーで低歪みというのはもちろんのこと、エンクロージャー/バッフルと一体成型されたウェーブガイド「DCWテクノロジー」によって指向性のコントロールが巧みに実現されているのだ。

 シリーズ最小サイズG Oneは手のひらに乗るほどのコンパクトなサイズながら、アルミダイキャストによる堅牢な構造。トゥイーター/ウーファーそれぞれに25Wアンプを内蔵したアクティブクロスオーバー方式で、ゴムに似た特殊素材の4点支持スタンド「Iso-Pod」が付属する他、壁掛け等のオプション金具も豊富に用意されている。

 

ACTIVE SPEAKER SYSTEM
GENELEC
G One

画像1: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

オープン価格(実勢価格8万円前後、ペア)
●型式:2ウェイ2スピーカー・アンプ内蔵・バスレフ型●使用ユニット:19mmドーム型トゥイーター、76mmコーン型ウーファー●アンプ出力:25W(HF)+25W(LF)●接続端子:アナログ音声入力1系統(RCA)●寸法/質量:W121×H195×D115mm/1.7kg
●問合せ先:(株)ジェネレックジャパン URL https://www.genelec.jp/customer-service/

 

G Oneの背面ディップスイッチでは低域の調整ができるほか、「ISS」(スリープモード)のスイッチが見える。ISSにより無信号時は自動でスリープ状態になるので、電源は入れっぱなしでOK

 

 

テレビ内蔵スピーカーと雲泥の差。手軽に本格的な音質を得られる

 まず、G Oneで音楽を手軽に楽しみたいというのであれば、Bluetoothレシーバー(エレコムLBT-AVWAR501BKなど)を導入すれば、スマホやタブレットをペアリングするだけで音楽鑑賞できる(図1)。その場合、レシーバーとG Oneはシンプルなアナログ接続となる。

 しかし、これでは映画を楽しむことができない。そこで、ここではベーシックにテレビのアナログ音声出力をG Oneで再生してみよう(図2)。今回組み合わせたテレビ(東芝レグザ)の場合、ヘッドホン出力を使うことで外部スピーカーの音量をコントロールできる

 BD『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』のCh(チャプター)8、首相のラジオ演説シーンを観ると、原稿を修正する万年筆のカリカリという音や電球のジリジリという効果音がクリアーに聞こえる。テレビの内蔵スピーカーの再現力とは雲泥の差で、セリフも画面に寄り添いつつ、グッと張り出してボディ感がある。細かなニュアンスも聞き取りやすい。

 

シンプルなシステムで

音楽を楽しむ

画像3: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

スマホなどからBluetooth経由で音楽を伝送できるレシーバーを使えば、簡単にG OneをBluetoothスピーカー化できる。Bluetoothレシーバーのアナログ音声出力は3.5mmステレオミニ端子が多数。RCAへの変換ケーブルを利用しよう。ただし、このシステムにはビジュアルの入り込む余地がないことに注意

 

映画を楽しむ

画像4: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

テレビからG Oneへ、直接アナログ音声出力(ヘッドホン出力)をつなぐことは、映画の音声をグレードアップする簡単な方法のひとつ。音声を可変出力とすれば、音量調整もテレビのリモコンでできる。さらに、手軽な音楽再生が必要であれば、Apple TV 4Kなどを足すのが便利。豊富なアプリが使えるほか、AirPlayにも対応可能だ

 

 

プリアンプ的にも使えるサブウーファーF Oneが便利

 さらに、このシステムにジェネレックのデジタル入力付きサブウーファーF Oneを追加するとテレビの光デジタル出力を活用する別のアプローチが生まれる(図3)。ヘルメットのようなユニークな形状のエンクロージャーに16.5㎝ウーファーを下向きに搭載。これを40Wの内蔵アンプで駆動する。設置はテレビラックの横などのデッドスペースでよい。

 ここで検討した接続は、テレビの光デジタル出力をF Oneに接続し、F OneのアナログL/R出力を左右のG Oneへ送るというもの。この場合のクロスオーバー(ハイパス)出力は85Hzで、それ以下の低域をF Oneが受け持ち、それ以上の周波数をG Oneで再生することとなる。テレビの内蔵D/Aコンバーターでなく、F One側でD/A変換をすることになるので、よりハイグレードな再生が可能となる。ただし、テレビのボリュウムとは連動できなくなるため、ジェネレックのリモコンとの〝二挺拳銃〟状態となり、操作にやや煩雑さを伴うことになる。すなわちクォリティをとるか、使い勝手をとるか……。

 『チャーチル』の演説シーンでは、室内の暗騒音がより生々しく、空爆シーンの力強さは一段と増した印象だ。やはりサブウーファーの追加は効果てきめん。

 もう1枚視聴したのは、UHDブルーレイ『ジョーカー』のCh4。地下鉄がホームに滑り込む際の金属の軋み音が重々しく、鋭い。銃声は力強く、耳鳴りのような反響も強烈だ。チェロの響きは豊満な中にも強靭さが感じられる。

 いっぽう、UHDブルーレイプレーヤーの代わりに、テレビ内蔵のアプリでネットフリックスを楽しんでもいいし、Apple TV 4Kを使うのもいい。『ROMA/ローマ』から森の火事のシーンでは、燃え盛る木々が放つパチパチという音や、消火活動に当たる人々の喧騒がリアルに現れる。一夜明けて朝の草原を子供たちが遊ぶシーンでは、山羊たちの鳴声や犬の遠吠え、風の音、虫の音、草を踏む音などがきれいに拡散して広がる。

 ステレオ再生であってもそこはかとない立体感が感じられるのは、G OneのDCWテクノロジーの賜物だろう またApple TV 4Kを使う場合、映画等を観るのと同様のアプローチで、Apple Musicでの音楽再生やAirPlayも楽しめる。こうしたプラスαで、シンプルかつスマートに音楽や映画が楽しめる点は、アクティブスピーカーの大きな魅力のひとつといえよう。

 

プラスワンを考えるなら…

映画重視のサブウーファー

画像5: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

図2にサブウーファーF Oneを追加して低音を強化する案だが、F Oneにはデジタル音声入力があるうえ、音量調整もできる。これをプリアンプとすると、音質の飛躍的な向上が図れるというシステムだ。なお、F Oneからのアナログ音声出力には、85Hzをクロスオーバー周波数としたハイパスフィルターが入っている

SUBWOOFER
F One

画像6: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ
画像7: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ
画像8: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

ジェネレックはGシリーズにぴったりのサブウーファーとして、Fシリーズをラインナップする。アナログ、デジタルの各種入力を備え、付属のリモコンで入力切替え/音量調整もできるため、実質のプリアンプとして利用できる

オープン価格(実勢価格8万円前後)
●型式:アンプ内蔵・バスレフ型サブウーファー ●使用ユニット:165mmコーン型ウーファー ●接続端子:2.1chアナログ音声入力1系統(RCA)、アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声入力2系統(同軸、光) ●寸法/質量:W305×H251×D305mm/5.6kg

 

 

シンプルでも多機能。ネットワークプレーヤーとの組合せ

 次に試したのは、ネットワークオーディオを重視したシステム(図4)。G OneにヤマハのWXC50を組み合わせてみた。本機は光/同軸デジタル音声出力端子とRCAアナログ音声出力端子とを備え、プリアンプモードとプレーヤーモードの切替えが可能。つまり単体ネットワークプレーヤーとしても使える本機が、G Oneを駆動するプリアンプとして機能する。ESSテクノロジー社の高音質DACやウルトラロージッターPLL回路など、仕様も本格的だ。

 この場合の接続は、テレビからの光デジタル出力をヤマハWXC50に接続し、そこからアナログ出力でG Oneに伝送する形だ。LAN環境に本機を置けば、さまざまなネットワークコンテンツが楽しめる。また、今回のテストでは、UHDブルーレイプレーヤーの光デジタル出力を本機の光デジタル入力に接続してディスク再生を楽しめるようにした。

 『ジョーカー』のCh14、階段でのダンスでは、激しく力強いビートに乗って主人公アーサーが〝ジョーカー〟へと変貌を遂げる場面がダイナミックに再現された。音楽が鳴る中で、飛び立つ鳩の羽音もしっかり聴こえる。その後ふたりの刑事に追い掛けられてゴッサムシティを逃げ惑うシーンでも、音場の広がりが印象的。微かな効果音の存在も克明だった。

 

音楽重視のネットワークプレーヤー

画像9: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

システムにネットワークプレーヤー兼プリアンプを組み込むことで、BluetoothからDLNAによるハイレゾ再生まで、幅広いメディアに対応する拡張性を獲得できる。光デジタル音声入力を利用すれば、テレビとのリンクもスムーズ。この場合、音量調整はWXC-50でする形だ

NETWORK PLAYER
YAMAHA
WXC-50

画像10: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

プリアンプとしても使える、ヤマハのネットワークプレーヤー。DLNAによる192kHz/24ビットハイレゾ再生のほか、SpotifyやDeezerにも対応する

¥54,000+税
●接続端子:アナログ音声入力1系統(RCA)、デジタル音声入力1系統(光)、アナログ音声出力2系統、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、LAN1系統 他 ●寸法/質量:W214×H51.5×D245.9mm/1.44kg ●問合せ先:(株)ヤマハミュージックジャパン お客様コミュニケーションセンター オーディオ・ビジュアル機器ご相談窓口 ☎︎0570(011)808

 

サラウンドへの拡張性も充分!スマートにシステムを発展できる

 最後に試したのは、AVセンターとの組合せ。そのプリアウトを用いて、サラウンドシステムへの拡張を試みたのである(図5)。使用したのはヤマハRX-A880。こうした使い方でも、スピーカーの本数さえ揃えられれば、ドルビーアトモスシステムの構築も夢ではない。前述したように、G Oneのオプション金具を使えば、高い位置への取り付けも比較的容易だ。

 今回のテストでは、G Oneの姉妹モデルのG Twoをフロントスピーカーとして加え、G Oneをサラウンドスピーカー、F Oneをサブウーファーとした4.1chシステムを組んだ。HDMIのARC機能を使えば、テレビのリモコンで音量調節が可能となるのでとても便利だ。ちなみにRX-A880のスピーカー設定は、G Two/G Oneともに「小」、クロスオーバー周波数を100Hzとした。つまり、サブウーファーF Oneには、LFEに加えて全チャンネルの100Hz以下の信号が足し込まれる。

 『ジョーカー』のCh14、階段のシーンでは、水しぶきの音や、ロックビートからチェロの怪しい旋律への変化が生々しく感じられる。センタースピーカーなしの4.1chでもセリフのイメージは鮮明(1本単位でも販売しているで、センター用を買い求めてもいいだろう)。サラウンドにも効果音の遠近感がしっかりと感じられ、包囲感も良好だ。

 ジェネレックのG OneおよびG Twoには電源ケーブルの結線が伴なう。したがって、サラウンド用や高い位置の設置においては、スピーカーの近くに商用コンセントを確保する必要がある。しかし、そうした課題がクリアーできれば、アクティブスピーカーを使ったAVシステムへの発展は、なかなかスマートではというのが、私が今回感じた本音。ネットワーク環境との親和性も高いので、シンプルにAVシステムを構築したい人には、今日むしろ打ってつけのスピーカーといっていいのではと思った次第だ。

サラウンドの拡張もOK!

画像11: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

AVセンターを使ったサラウンドシステムを検討した。HDMIのARC機能を使えば、テレビとの連携はとてもスムーズ。AVセンター内蔵のパワーアンプは使わないので、そもそもパワーアンプ非内蔵のコントロールAVセンターを選ぶという方法も考えられる

ACTIVE SPEAKER SYSTEM
G Two

画像12: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

4.1chシステムのフロントスピーカーとして、G Oneよりひとまわり大きなG Twoを用意。低域の補正機能やオートスリープなど、基本機能はG One同様

オープン価格(実勢価格12万円前後、ペア)
●型式:2ウェイ2スピーカー・アンプ内蔵・バスレフ型 ●使用ユニット:19mmドーム型トゥイーター、105mmコーン型ウーファー ●アンプ出力:50W(HF)+50W(LF) ●接続端子:アナログ音声入力1系統(RCA) ●寸法/質量:W151×H242×D142mm/3.2kg

 

AV CENTER
YAMAHA
RX-A880

画像13: GENELEC『G One』シンプルかつハイクォリティ。小型でも強靭さを表現できる稀有な存在だ

プリアウトの充実したモデルとしてセレクトした、ヤマハAVセンターの中堅モデル。最新のAVセンターを選べば、ハイレゾファイルの再生やAirPlay対応など、最新の機能性を享受できる

¥110,000+税
●定格出力:100W(6Ω、2ch駆動時)×7 ●接続端子:HDMI入力7系統、HDMI出力2系統、7.2chプリアウト 他 ●寸法/質量W435×H171×D382mm/11kg

 

 

※音を聴かずにいきなり購入するのは勇気がいる……という方のために朗報。G Oneが気軽にレンタルできるサービスが3月17日よりスタートする。詳しくは下記Rentio(レンティオ)のウェブサイトを参照のこと。
https://www.rentio.jp/

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