重厚かつ堂々とした音を愉しめる

 フランスを代表するスピーカーメーカー、フォーカル。設計を担当する技術部門と、実際に製品を仕上げる工場をフランス国内の同一施設内に擁し、ユニットからエンクロージャーまで、独自の技術による一貫生産にこだわる数少ないメーカーである(エンクロージャーはフランス国内別工場で生産)。

 こここで紹介するCHORA(コーラ)シリーズは2019年の秋に発表された新たなエントリーラインのモデルであり、もちろん開発、生産ともにフランス製。4年以上の研究を重ねて開発した振動板「Slatefibercone」(スレートファイバーコーン)をミッドレンジとウーファーに投入した意欲作だ。

画像: FOCAL CHORA 806 ¥98,000(ペア)+税 ●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:25mm 逆ドーム型トゥイーター、 165mmコーン型ウーファー ●クロスオーバー周波数:3kHz ●出力音圧レベル:89dB/2.83V/m ●インピーダンス:8Ω ●寸法/質量:W210×H431×D270mm/7.35kg ※専用スタンド「Chora800 Stand」 (¥38,000/ペア+税)は2020年春頃発売予定)

FOCAL
CHORA 806
¥98,000(ペア)+税
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:25mm 逆ドーム型トゥイーター、
 165mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:3kHz ●出力音圧レベル:89dB/2.83V/m
●インピーダンス:8Ω ●寸法/質量:W210×H431×D270mm/7.35kg
※専用スタンド「Chora800 Stand」
 (¥38,000/ペア+税)は2020年春頃発売予定)

画像: FOCAL CHORA 826 ¥220,000(ペア)+税 ●型式:3ウェイ3スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:25mm 逆ドーム型トゥイーター、165mmコーン型ミッドレンジ、165mm コーン型ウーファー× 2 ●クロスオーバー周波数:270Hz〜 2.7kHz ●出力音圧レベル:91dB/2.83V/m ●インピーダンス:8Ω ●寸法/質量:W303×H1053×D388mm/21.15kg

FOCAL
CHORA 826
¥220,000(ペア)+税
●型式:3ウェイ3スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:25mm 逆ドーム型トゥイーター、165mmコーン型ミッドレンジ、165mm コーン型ウーファー× 2
●クロスオーバー周波数:270Hz〜 2.7kHz
●出力音圧レベル:91dB/2.83V/m
●インピーダンス:8Ω ●寸法/質量:W303×H1053×D388mm/21.15kg

 スレートファイバーコーンは炭素繊維に熱硬化性ポリマーを含浸して成形した複合材で、軽く、剛性が高く、適度な減衰特性を持つというスピーカーユニットの振動板としてはまさに理想的な素材。航空、自動車の分野ではすでに実績があるが、音響機器として使われるのは今回が世界初だという。

 トゥイーターは、音の立ち上がりが素早く、ブロードな指向特性が得られる逆ドーム型の改良版。軽さと高い剛性を両立し、理想に近い振動減衰特性を兼ね備えたアルミマグネシウム振動板との共演により、従来から気になっていた2~3kHz帯域の歪みの改善に成功したという。

ヴォーカルが立つ806
透明感が魅力の826

 2ウェイ・ブックシェルフ型のCHORA806、2.5ウェイ・トールボーイ型のCHORAa816、そして3ウェイ・トールボーイ型のCHORA826という3ラインナップ構成だが、ここでは806、826の2モデルを試聴している。

 まず25㎜径の逆ドーム・トゥイーターと165㎜径ウーファーによる2ウェイモデル、CHORA806から聴いていこう。昨今、明確な個性を感じさせるスピーカーが少なくなったが、こちらは色濃く味わい深いサウンドトーンで、フランス生まれであることをしっかりと主張する。

 明るさ、軽快さよりも、ややくすんだ感じの重厚な響きを持ち味にしながら、温かみのあるエネルギーを音像に集中させていくようないかにもフォーカルらしい聴かせ方は健在。ベース、バスドラは、グングンと前に押し込んでくるような力強さが特徴的で、実体感が豊かだ。

 そしてこのモデルの1番の魅力はヴォーカルの再現性にある。UHDブルーレイ『アリー/スター誕生』から、女心のせつない思い歌詞に込めた「Always Remember Us This Way」を聴いたが、レディー・ガガの歌唱力が際立つ。声の熱いエネルギーに加えて、ステージ中央から客席へと拡がっていく様子も実に滑らかで、一体感のあるライヴ空間として描き出された。

 続いて25㎜径の逆ドーム・トゥイーターと165㎜径のミッドレンジ、さらに165㎜径のダブルウーファーを搭載したCHORA826だが、雑味を感じさせない透明感に溢れたサウンドは、実に堂々として、軽やかだ。

 ジャズトリオで聴くベース、バスドラは程よい柔軟性を持ち、反応が素早く、リズム感がいい。低音はいわゆる重量を伴なって、押し出しの強さをアピールするのではなく、しなやかに弾み、軽やかに空間に拡がっていく感じ。輪郭を際立たせて聴かせるタイプではないため、ややおとなしい音調に感じられるが、ここという場面では、ハードでパルシブな低音も堂々と描き出す。

 そしてヴォーカルも聴き応えがある。アリーのピアノソロで始まる「Always〜」はその響きが太く、タッチも力強いが、彼女の声はそのピアノの存在を希薄にしてしまうほどの浸透力で、深々と観客席に伝わっていく。囁くように歌う声には、かすかなエコーが加わり、空間としての広さを演出しているが、そのニュアンスの生々しいこと。熱狂的な歓声の中でも、彼女の歌声は押し消されることなく、その場を牛耳ってしまうほどのエネルギー感は見事だ。このクラスのモデルで、ここまでの熱気と迫力を感じさせてくれるスピーカーは貴重だ。

 なお、本体色は全モデル、ブラック/ダークオーク/ライトオークの3種類。CHORA806専用のスタンドCHORA800 Stand(3万8000円/ペア+税、2020年春発売予定)も用意されている。

↑CHORA 826を横から見ると専用の台に傾斜をつけたユニークなスタイルとなる。やや仰角の位置で固定し、音場感や定位感を向上させるねらいがある

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