JVCのプロジェクターと言えば、独自の反射型液晶パネル、D-ILAデバイスによる3板式モデルというイメージが根強い。このデバイスの画質面の優位性は誰もが認めるところだが、光学回路が複雑なこともあって、どうしても本体が大きくなりやすく、コストダウンにも限界がある。

 そこで昨年、家庭用DLPプロジェクター、LX-UH1を製品化し、ユーザー層の拡大を図ったわけだが、本機はUH1の上級機として開発されたDLPプロジェクターの第二弾。レンズを含む光学回路、信号処理ともにJVCの独自設計で仕上げられた本格派4Kプロジェクターである。

 1.6倍ズームの投写レンズはオールガラス仕様、上下60%、左右23%のレンズシフト機能を備える。ちなみに100インチの投写距離は3~4.8m。6畳間でも100インチの大画面が楽しめることになる。

 0.47型DMDチップはフルHD仕様(1920×1080)で、1フレームに対して高速で4度書きすることで4K映像を投影する。具体的には、上下左右4方向に可傾する特殊な素子との組合せで、フルHDデータを時計回りに0.5画素ずつずらして、次々に表示していくというもの。時間をずらして4K表示するわけだが、全米民生技術協会(CTA)が定めた4K UHD規格に準拠しているという。

 ここまでの内容はほぼUH1と変わらないが、本体はわずかながら大きくなり、光出力は2000ルーメンから3000ルーメンへと向上している。

 これはJVCのレーザー光源技術「BLU-Escent」を搭載したため。青色レーザーから、黄色の蛍光体を使って、白色の光源を確保するというシステムで、絵柄の変化に応じて瞬時の光量調整(ダイナミック光源制御)が可能。ネイティブコントラストについては非公表だが、ダイナミックコントラストは光量が完全に絞り込めるため、無限大という表記となる。

 持ち前の明るさと、高コントラストを表現力に生かすオートトーンマッピング機能の搭載も見逃せない。これは明るさが一様ではないHDR10コンテンツ再生時、最適なダイナミックレンジに自動調整する機能で、その効果についてはすでにDLAの高級プロジェクターで実証済みだ。

画像: 映像モードは「Natural」、「Cinema」、「Dynamic」の3モードが基本で、HDR10やHLG映像が入力された場合は、自動的に「HDR10」あるいは「HLG」の専用画質モードに切り替わる

映像モードは「Natural」、「Cinema」、「Dynamic」の3モードが基本で、HDR10やHLG映像が入力された場合は、自動的に「HDR10」あるいは「HLG」の専用画質モードに切り替わる

画像: 「詳細設定」内に「ガンマの選択」というパラメーターがあり、暗部表現が気になる場合はここの設定で微調整するといいだろう。「Cinema」モードのデフォルトは『2.4』

「詳細設定」内に「ガンマの選択」というパラメーターがあり、暗部表現が気になる場合はここの設定で微調整するといいだろう。「Cinema」モードのデフォルトは『2.4』

画像: 色彩表現や超解像処理に関わる設定は「MOVIEPRO」という項目にまとめられている。なお、本機はHDR10映像の再生時に自動的に輝度を調整する「オートトーンマッピング」機能を搭載。HDR10映像のメタデータ(MaxCLL)を参照し、5段階の切り替えを行なう

色彩表現や超解像処理に関わる設定は「MOVIEPRO」という項目にまとめられている。なお、本機はHDR10映像の再生時に自動的に輝度を調整する「オートトーンマッピング」機能を搭載。HDR10映像のメタデータ(MaxCLL)を参照し、5段階の切り替えを行なう

清々しさを感じさせるニュートラルな色調

 ではまず日頃から見慣れているBDソフトから『きみに読む物語』をシネマモードで再生。冒頭部、朝焼けの湖に一艘のボートが漕ぎだしていくシーン。見た目の解像感、フォーカス感も良好。グラデーションの描きわけはなめらかで、奥行方向に拡がる空間描写も悪くない。

 2K/4K変換については特に優れているという印象はないが、輪郭の細さ、平坦部のディテイル描写、あるいはなめらかなグラデーションといった部分で、素性のよさが感じ取れる。

 続いて4K&HDR作品の再生。この場合、映像モードはD-ILAプロジェクター同様、ソースに応じて「HDR10」、「HLG」固定となる。まずHDR10収録のUHDブルーレイ『グレイテスト・ショーマン』の再生。明るく、清々しさを感じさせるバランスのとれた再現性で、映像のヌケのよさが印象的だ。

 一定のコントラスト感を確保しつつ、ライトアップされる豪華な衣装、暗がりの顔色と、その描きわけは明確。しかもその表現がオーバーになりすぎず、ニュートラルな色調を貫いている。

リモコンのボタンは自照式で、最上段中央に「LIGHT」ボタンを装備。暗室でも使い勝手に配慮している

画像: 端子類は背面にまとめて配置されている。18Gbps対応のHDMI端子を2系統備えるほか、D-Sub15ピンによるPC向けの入力端子も搭載している

端子類は背面にまとめて配置されている。18Gbps対応のHDMI端子を2系統備えるほか、D-Sub15ピンによるPC向けの入力端子も搭載している

 全体が暗いナイトシーンでは、もう少し黒を引き込みたいと感じるが、平均輝度が一定レベル以上になると、見た目のコントラスト感に余裕が生まれ、細部の描きわけもより明確になる。ダイナミック光源制御の恩恵は大きく、不自然な浮き沈みもほとんど気にならなかった。

 4K&HLG作品として、NHK BS4Kで放送された『東京JAZZ2018』のコーネリアスのステージを確認したが、見た目のフォーカス、輪郭がキリッと引き締まった、癖っぽさのない、素直な絵づくりは健在。ハイライトでもしっかりと色をのせているが、フェイストーンはややプレーンで、あっさりとした印象だった。

 うっすらと灯りを残した環境でも高解像度の大画面が楽しめる本格派4Kプロジェクター。最高峰のDLA-Z1と同じ光出力3000ルーメンは伊達ではなかった。

LX-NZ3の主なスペック

画像: JVC LX-NZ3 オープン価格(実勢価格39万8,000円前後)

  JVC LX-NZ3 オープン価格(実勢価格39万8,000円前後)

  ●パネル解像度:水平1,920×垂直1,080画素 
  ●光出力:3,000ルーメン
  ●レンズシフト:垂直±60%、水平±23% 
  ●レンズズーム:1.6倍 
  ●接続端子:HDMI入力2系統、他
  ●寸法/質量:W405×H145.8×D341mm/6.3kg 
  ●備考:HDR10/HLG対応、Bluetooth対応

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