音楽のストリーミング再生をするための専用機として、ぜひ利用したいのがネットワークプレーヤー。かつては自宅のNAS(ミュージックサーバー)に貯めたデジタルファイルを再生するためだけのものだったが、現在はその役割を拡張。さまざまな音楽ストリーミングサービスのクラウド上のファイルを再生するための、専用機としても活躍する。ルーミンのU1 MINIは、D/Aコンバーターを持たない“ネットワークトランスポート”。すでにお気に入りのD/Aコンバーターでデジタルファイル再生を実践している方にぴったりの製品だ
ぼくの部屋のネットワークオーディオシステムは2系統ある。10年以上の付き合いとなるリンKLIMAX DS(現在はDS3)と、デラN1A/2+コードDAVEだ。後者はミュージックサーバーN1A/2の「USB DAC接続機能」を用いてDAVEと連携させたもの。2019年に入ってコードのアップサンプラーHugo Mスケーラーを加え、いっそうの音質強化を果した。とくにサンプリング周波数44.1kHzのCDやTIDAL音源の音質向上ぶりは目覚ましく、その成果に大満足の日々を送っていた。
「買うしかない」と思える
音質の向上を感じられた
そしてこの秋、ルーミンのネットワークトランスポートU1 MINIを買った。〈ステレオサウンドオンライン〉の仕事で本機をテストし、「これは買うしかない」と実感させられたからだ。N1A/2とDAVE間に本機を加えることで、WAVやFLACの愛聴ハイレゾファイルの音に手応えのある実在感が加わり、低域の安定感、音の厚み、音の張り出しが俄然よくなったのである。とくに実使用上もっとも好ましく感じたのは、小音量再生時に音痩せがないことだった。デジタルオーディオ再生においては、機能別に電源回路のしっかりしたコンポーネントをあてがうことが、高音質化のカギとなるのだと改めて実感した。
U1 MINIの佇まいはとても美しい。横幅300mmのコンパクトサイズだが、フロントパネルは10mm厚のアルミの無垢で、ボディはアルミ押出材。価格を考えれば贅沢な造りと言っていい。本機はDACを持たないネットワークトランスポートだが、ハイレゾ対応は万全。2系統設けられたUSBインターフェイスでは、PCMは384kHz/32ビット、DSDは11.2MHzまでサポートする。
それからもうひとつ、購入の大きな決め手は本機がタイダルとMQAに対応していることだった。MQAについては、その音のよさとコンセプトの面白さに以前から注目していたのだが、いかんせんリンもコードも未対応だし、彼らの言動からすると今後やるとも思えない。しかしながらタイダルがMQA音源の配信を数年前に始め、今では2万タイトルに迫る音源が存在することを知り、ぜひ自宅で聴けるようにしたいと考えていたのだ。MQAの技術内容について詳述する紙幅はないが、ファイルサイズを小さくしながら、デジタルデータ送出時にビットタイミングを揃えて時間軸精度を向上させるという高音質手法が興味深い。
ルーミンは、操作アプリとして「LUMIN App」を用意しているが、これがまたよく出来ていて使いやすい。このアプリのタイダル操作画面には「Masters」というフォルダーがあり、ここを開くとタイダルにアップロードされた最新のMQAのハイレゾ音源がずらりと表示される。ちなみにコードDAVEのようなMQA非対応DACと接続した場合、本機はMQAコアデコードを行ない、最大96kHz(または88.2kHz)/24ビットでDACに転送することになる。MQAフルデコード可能なDACと接続した場合は、未処理のMQAストリームを転送、384kHz(または352.8kHz)/24ビットまでの再生が可能だ。
タイダル上の同じ楽曲をN1A/2+DAVEのFLACファイル(44.1kHz/16ビット)再生とU1 MINIを加えてのMQA再生を比較してみたが、この音質差は決定的。何を聴いても断然後者のほうがよいのである。
たとえば60年代のバーズ時代から活躍するデヴィッド・クロスビーの新作。彼らしい見事なコーラスワークが楽しめるアルバムなのだが、冒頭の「グローリー」で比較すると、MQA(88.2kHz/24ビット)のほうがステレオフォニックな音の広がりに優れ、コーラスがワイドに眼前に出現する。音の粒子もきめ細かく、余韻の美しさ、静寂の気韻の深さは途方もない。いろいろ実験してみた結果、MQA再生時は先述したコードのアップサンプラーHugo MスケーラーをジャンプしてDAVEにダイレクトにつないだほうが音がよいことを発見した。MQAのボブ・スチュワートとコードのロバート・ワッツの主張は相容れないということか。
ところで。MQAにたいする否定的な意見をたまに耳にするが、ルーミンU1 MINIを購入し、コアデコードながらMQAの音のよさを日々実感しているぼくは、そう言ってる方はほんとうに真摯にMQAの音に向き合ったことがあるのだろうか、と疑問に思う。オーディオにおけるあらゆる仮説は聴感覚によってのみ検証されるべきで、音がよければそれでよし。アマゾンミュージックHDやモーラ クオリタスがFLACファイルによるハイレゾ配信を始めたいま、まずは多くのオーディオファイルに良質なデジタルファイルをU1 MINIとお好みのDACを組み合わせて一度お聴きいただきたいと思う。

Network Transport
LUMIN U1 MINI
280,000円+税
●再生可能ファイル:WAV、FLAC、AIFF、DSF、DIFF、MP3、AAC ●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜384kHz/32ビット(PCM)、〜11.2MHz/1ビット(DSD) ●接続端子:デジタル音声出力6系統(USBタイプA×2、同軸、光、AES/EBU、BNC)、LAN1系統 ●寸法/質量:W300×H60×D244mm/2.5kg ●備考:MQAサポート
●問合わせ先:㈱ブライトーン TEL.03(6869)0516
ルーミンでできること
● 専用アプリによる、スムーズなハイレゾ再生
● TIDAL、Qobuzのストリーミング
● MQAファイルのデコード
ルーミンのネットワークプレーヤー/トランスポートの共通した特徴は、独自開発による優れた操作アプリでスムーズなハイレゾ再生を実現していること。MQAのサポート、TIDALやQobuzなどのハイレゾストリーミング再生対応により、現在ハイレゾファイル再生に求められる全方位的な機能性を持っている

▲デジタルファイルのストリーミング再生においては、優れた操作性はひじょうに重要。ルーミンでは自社開発の専用アプリ「LUMIN App」(無料)でそれを実現している。iOS(iPhone / iPad)用、Android用が用意される

U1 MINIのUSBタイプA端子と、コードHugo M Scaler(下段、アップサンプラー)もしくはDAVE(上段、USB DAC)のUSBタイプB端子を接続。通常のPCMファイル再生はHugo M Scaler経由で、MQAファイル再生はDAVEと直結という形でケーブルを差し替えて使い分ける
関連記事
この記事が読める月刊「HiVi」2019年12月号のご購入はコチラ!
関連サイト