昨秋から日本に正式リリースされているモレル。1975年にイスラエルにて創業されたこのスピーカー専業メーカーは、ドライバーユニットを独自に内製できる世界有数のメーカーで、自社ブランドを立ち上げてホームオーディオにも事業展開したのが2002年から。いっぽうで国内カーオーディオ市場では既に著名な存在で、各地のサウンドコンテストで上位入賞を多数輩出する人気ブランドである。

 先行した2機種に続いてこの度デビューしたのは、VARIO XとVARIO ELITEと命名されたブックシェルフ型2ウェイスピーカー。2機種はビニールクロス仕上げのMDF製エンクロージャーに樹脂製ABSフレームの前面バッフルという組合せで共通しており、背面にバスレフポートを備える。前面バッフルの寸法はほぼA4サイズ。6kgを切る質量など、とてもコンパクトな印象だが、サウンドはひとクラスもふたクラスも上だ。

 双方の相違点は、搭載されたドライバーユニットだ。口径はほぼ同一と見ていいが、VARIO Xは1.1インチのボイスコイルを組み合わせた16.5cmペーパーコンポジット・セルラーファイバー製ウーファーと、25mmソフトドーム型トゥイーターのペア。いっぽうのVARIO ELITEは、同じ16.5cm口径ながら、3インチのヘキサテックアルミニウム・ボイスコイルに、ダンプドポリマーコンポジットコーンを組み合わせたウーファーと、モレル独自のAcuflexコーテッドソフトドーム28mmトゥイーターのコンビネーションとなっている。磁石はウーファーがフェライト、トゥイーターはネオジムだが、VARIO ELITEのウーファーがダブルマグネットという違いだ。

 マグネット着脱式のグリルネットを外すと、前面バッフルのユニット開口部に少しテーパー加工が施されているのがわかる(トゥイーター/ウーファー共)。ドライバーユニットをバッフル裏側から固定することで、放射特性の拡散を狙ったものかもしれない。また、その前面バッフルの四隅にメーカーロゴを無数に小さくあしらったエンボス加工が確認できた。これは、前面バッフルの角の回折現象を防ぐ工夫のようにもみえる。

S/Nの高さに、作りこみの良さが表れている

 VARIO Xから聴いてみると、よく整ったエネルギーバランスで、フラットかつワイドレンジなレスポンス。トーンはニュートラルで、低域のエネルギーにも不満はない。女性ヴォーカルのしなやかな質感再現、立体的かつ響きが豊かなフルオーケストラなど、楽曲の選り好みも少なそう。小生監修のステレオサウンド盤ハイブリッドSACD『クロスオーバー黄金時代』の「マイ・ディア・ライフ/渡辺貞夫」では、ソプラニーノのナチュラルなトーンや、リズムセクションが繰り出すビートのタイトさ、そして演奏全体の一体感が存分に再現された。

 対するVARIO ELITEは、分解能がさらに高く、情報量が豊富に感じられる。ローエンドの力感や厚みも充実しており、VARIO Xの2倍以上の価格の開きにも納得。先の渡辺貞夫の演奏では、チャック・レイニーのベースのピッチがクリアーに聴こえるうえ、ハーヴィー・メイソンのキックドラムがズシリと重たい。また、女性ヴォーカルの色艶や瑞々しさ、オーケストラでのスケール感の重厚さもあり、同じサイズのエンクロージャーでも、ドライバーユニットの違いでここまで異なる表現力がデザインできるのかと、改めてモレルの高い技術力に感心させられた。

 最後に、フロントにVARIO ELITE、リアにVARIO Xを設置し、4.1chにて映画のサラウンド再生を試した(サブウーファーはイクリプスTD725SWMK2)。BD『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』のチャプター8では、ファントム音像ながらも首相のラジオ演説のセリフがくっきりと実体感を伴なって再現される。余計な響きを付加することなく、室内の反響が速やかに収束する印象だ。コンパクトなエンクロージャーならではのよさがこういうところに現われている。空爆の音の広がり、ラジオの違いに伴なう声の質感の差なども克明に出す。

 UHDブルーレイ『ブレードランナー2049』のチャプター15、クライマッスの攻防シーンは、降りしきる雨の音が視聴室をビッシリと埋め尽くし、波の音にも包囲感や方向感が明確に現われている。銃声は、重さや破壊力よりも瞬発力という感じで、シーンの緊迫感とスピード感が濃密に再現された。

画像: 写真左: VARIO X Bookshelf(ブラック) /  写真右: VARIO ELITE Bookshelf(ホワイト)

写真左: VARIO X Bookshelf(ブラック) / 写真右: VARIO ELITE Bookshelf(ホワイト)

SPEAKER SYSTEM
MOREL
VARIO ELITE Bookshelf
¥280,000(ペア)+税

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、165mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:3.2kHz
●出力音圧レベル:90dB/2.83V/m
●インピーダンス:6Ω
●寸法/質量:W216×H304×D283mm/5.9kg
●カラリング:ホワイト(写真)、ブラック
●問合せ先:ジャンライン&パートナーズ info@janline-and-partners.com

MOREL
VARIO X Bookshelf
¥120,000(ペア)+税

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、165mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:3.5kHz
●出力音圧レベル:90dB/2.83V/m
●インピーダンス:6Ω
●寸法/質量:W216×H304×D283mm/5.7kg
●カラリング:ホワイト、ブラック(写真)

画像: VARIO X Bookshelfは、25mmソフトドームトゥイーター+165mmウーファーによるシンプルな2ウェイ機。トゥイーターは強力なネオジム磁石を搭載している。ユニット周辺は微妙なテーパーがつけられているが、不要な音の回析を減らし、位相特性を向上させる効果を狙ったものだろう

VARIO X Bookshelfは、25mmソフトドームトゥイーター+165mmウーファーによるシンプルな2ウェイ機。トゥイーターは強力なネオジム磁石を搭載している。ユニット周辺は微妙なテーパーがつけられているが、不要な音の回析を減らし、位相特性を向上させる効果を狙ったものだろう

画像: こちらはVARIO ELITE Bookshelf。VARIO X〜とよく似たデザインだが、ユニットは高域、低域とも異なる仕様だ。高域ユニットのソフトドームドライバーは、Acuflexという特殊なダンピング用の塗料が塗布されている。同社の独自技術で周波数特性がスムーズになるとともに、高域再現上での刺激を抑える働きがあり、どんなに音量を上げても「耳に刺さる」ようなことがないとのこと


こちらはVARIO ELITE Bookshelf。VARIO X〜とよく似たデザインだが、ユニットは高域、低域とも異なる仕様だ。高域ユニットのソフトドームドライバーは、Acuflexという特殊なダンピング用の塗料が塗布されている。同社の独自技術で周波数特性がスムーズになるとともに、高域再現上での刺激を抑える働きがあり、どんなに音量を上げても「耳に刺さる」ようなことがないとのこと

画像: 両モデルともポートを本体後方上部に配置したバスレフ型エンクロージャー形式となっている。スピーカー端子は、シングルワイヤリング接続専用。写真はVARIO ELITE Bookshelfの端子

両モデルともポートを本体後方上部に配置したバスレフ型エンクロージャー形式となっている。スピーカー端子は、シングルワイヤリング接続専用。写真はVARIO ELITE Bookshelfの端子

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