やっぱり気になるビートルズのサラウンド音源

『アビイ・ロード』発売50周年エディション盤のインプレッション・リポート第2弾、DTS HDマスターオーディオ5.1chとドルビーアトモスの印象記をお届けします。

9月27日にアップされた2019年ステレオ・ミックスの試聴記事の最後に「5.1ch ミックスとドルビーアトモス音声が入ったBD(ブルーレイ) オーディオ盤、単売してくれないかな」と書いたところ、なんと「スーパー・デラックス・エディション」を買った音楽仲間の一人が、このディスクをわざわざ送ってくれました。ありがとう! YTくん。

画像: 『アビイ・ロード(50周年記念スーパー・デラックス・エディション)』は3CD+1BD(オーディオ)で¥12,800+税。BDオーディオにはドルビーアトモス・ミックスを収録する

『アビイ・ロード(50周年記念スーパー・デラックス・エディション)』は3CD+1BD(オーディオ)で¥12,800+税。BDオーディオにはドルビーアトモス・ミックスを収録する

このBDオーディオ盤には、5.1chミックスとドルビーアトモスのほか96kHz/24ビットのステレオ音声も収録されている。それでは、各ストリームを聴いていこう。

まず、ぼくのサブシステムで44.1kHz/16ビットのCDクォリティ(TIDAL を使用)と96kHz/24ビットのハイレゾの両ステレオ・ヴァージョン、そして5.1ch ミックスを比較する。

サブシステムの構成は以下の通り。オッポデジタルUDP-205 (ユニバーサルBDプレーヤー)、オーラVARIE(マルチチャンネル入力付プリアンプ)、リンMAJIK6100(6ch パワーアンプ)、エラック330CE/310JET(フロント/ サラウンドスピーカー)。センター成分とLFE をダウンミックス、330CEをパッシブ・バイアンプ駆動する4.0chシステムだ。ディスプレイは東芝の65型有機ELテレビ65X910。

このBDオーディオ盤、画面には青空と木々が映し出され、ときおり小鳥たちが画面を横切ったりする。このピースフルでのどかなグラフィックは「空が青いから涙がこぼれてしまう」とジョンが切なく歌う「ビコーズ」にインスパイアされたものなのかしらん。

全17曲中「サムシング」だけビデオクリップ(フィルムですが)が収録されている。いわゆるシークレット・トラックという位置付けなのだろう、BDプレーヤーのリモコンの十字キーの右ボタンを押すとそれが観られる。メンバー 4人がそれぞれのワイフと睦み合う他愛のない映像だが、全員が魅力的なビジュアルなので、ついうっとりと見入ってしまう( 4人の女性の中では、やはりヨーコさんの存在感がダントツだ)。

画像: こちらが山本浩司さん宅のサブシステム。エラックの330CEを中心とした4.0ch構成

こちらが山本浩司さん宅のサブシステム。エラックの330CEを中心とした4.0ch構成

コーラス・グループとしてのビートルズの魅力を強く感じさせる
さすがの出来栄え

さて、44.1kHz/16ビットと96kHz/24ビットのステレオ・ヴァージョンの比較。(当然かもしれないが)ミックスの違いはない。しかしながら聴き比べてみると、やはりハイレゾ・マスタリングの音質の優位は明らか。音像に陰影が付くと言えばいいだろうか、サウンドステージに奥行が生まれ、ヴォーカルやドラムズ、ギターなどが立体的に聴こえ、聴き応えでCDクォリティを大きく上回る印象だ。

次にDTS HDマスターオーディオ5.1chを聴いてみる。ヴォーカルの定位は2019年ステレオ・ミックスと違いはなく、全曲センター定位。サラウンド・チャンネルにはオーバーダビングされたギターやストリングス、打楽器の一部が振り分けられているが、基本前方優位のミックスで、違和感はほとんどない。さすがジャイルズ・マーティンだ。

9月27日にアップされた2019年ステレオ・ミックスの試聴記事で「コーラス・グループとしてのビートルズの魅力が再発見できるミックス」と書いたが、この5.1chミックスは彼らのコーラスの魅力をそれ以上実感させる。「ビコーズ」など、ジョンとポール、ジョージ 3人による複雑に綾なすコーラスが、水平360度方向にスムーズに広がり、夢心地のような気持ちよさが味わえるのである。

音像定位の点でも「ビコーズ」は独特。左チャンネルのハープシコードのソロで始まるイントロの途中で加わるギターのアルペジオが、ステレオ・ミックスでは右チャンネルに収められていたが、5.1chミックスではこのギターがサラウンド右チャンネルに定位するのだ。

音像移動という点では、ラストの小曲「ハー・マジェスティ」が面白い。ステレオ・ミックスでは、ポールのヴォーカルとアクースティックギターが右チャンネルから徐々に左チャンネルに移動していったが、5.1ch ミックスでは、サラウンド右からフロント右、センター、フロント左、サラウンド左と水平方向にぐるりと移動していくのだ。

ポール、このミックスを聴いてジャイルズになんて言ったんだろ、気になるなあ。

何と言っても音がいい。
それがマルチチャンネル・ミックスの魅力

では、オーバーヘッドスピーカーが加わるドルビーアトモス再生を移ろう。この再生は、AVセンターにデノンAVC-X8500Hを用いたメインシステムで。フロントL/RスピーカーにJBL K2S9900+エニグマアコースティクスSopranino (スーパートゥイーター)、サラウンド/ サラウンドバック/ トップミドル/ トップリアスピーカーにリンCLASSIK UNIK、トップフロントスピーカーにMKサウンドSur95T、サブウーファーにイクリプスTD725sw を用いたセンターレスの6.1.6 システムだ。

画像: こちらが6.1.6スピーカー構成のメインシステム。

こちらが6.1.6スピーカー構成のメインシステム。

ヴォーカルと各楽器の定位は5.1ch ミックスを踏襲していて、大きな違いはない。5.1chにたいして優位性を感じるのは、コーラスの広がりと環境音の生々しさだ。「ビコーズ」のコーラス、5.1ch ミックスでは水平360度方向にスムーズに広がると書いたが、ドルビーアトモスは水平に加えて垂直方向にもぐーんと広がり、そのスケール感に圧倒される。

デタラメらしいスペイン語が散りばめられた「サン・キング」冒頭の虫の音などの環境音も、ドルビーアトモスで聴くとその臨場感はハンパない。鬱蒼とした森の中を彷徨い歩いているかのような酩酊感が味わえるのである。ドルビーアトモス再生環境がある方はぜひこの音を体験していただきたい。

もっとも環境整備のハードルの高いドルビーアトモスでなくとも、5.1chミックスのめくるめくサラウンドサウンドはぜひ多くの方に聴いてほしいと思う。

まずなんと言っても(再生システムの質が同じであれば)ステレオよりも5.1chミックスのほうが音がいいからだ。マルチトラックから2チャンネルにトラックダウンされたものよりも、5.1chミックスのほうが音の混濁感が少なく情報量が多く、ラウドネス効果が高い。結果、各楽器の音色や奏法の特徴が鮮明に聴き取れるのである。

まあそんなわけで、「アビイ・ロード」発売50周年エディションのBDオーディオ盤の魅力にノックアウトされたワタクシですが、発売元にはなんとしてもこのディスクの単売を前向きにごケントーいただきたく。お願いします。

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