泣く子も黙る名盤!
しかし、リミックス版の真価はどうなのか……

9月27日、ザ・ビートルズの泣く子も黙る名盤『アビイ・ロード』発売50周年記念エディション盤が 6種類発売された。6種類のなかの最大の目玉は、完全生産限定盤の「スーパー・デラックス・エディション」ということになるだろうか。

画像: 『アビイ・ロード(50周年記念スーパー・デラックス・エディション)』は3CD+1BD(オーディオ)で¥12,800+税。BDオーディオには、なんとドルビーアトモス・ミックスを収録する

『アビイ・ロード(50周年記念スーパー・デラックス・エディション)』は3CD+1BD(オーディオ)で¥12,800+税。BDオーディオには、なんとドルビーアトモス・ミックスを収録する

ビートルズの育ての親であるジョージ・マーティンの子息ジャイルズ・マーティンが新たにミックスした『アビイ・ロード』の2019年ステレオ・ミックスCDと本作録音時のセッションを収めた2枚のCD、それに2019年ステレオ・ミックスの96kHz/24ビット・ハイレゾ音声とDTS HDマスターオーディオ5.1ch&ドルビーアトモスとい 2種類のサラウンド音声を収録したBDオーディオ盤という4枚で構成される豪華版だ。

この「スーパー・デラックス・エディション」に食指が動かぬわけではなかったが、はっきり言って欲しいのはBDオーディオ盤のみ。2枚のセッションCDなど、そんなに何度も聴かないだろうと思い、ぼくはとりあえず2019年ステレオ・ミックスのアナログLPを購入した(愛用中のリンのレコードプレーヤーKLIMAX LP12をつい最近オーバーホール、ますます絶好調という理由もあります)。

ハイレゾのUSB BOXよりはるかに好ましい!
ナチュラルな音の仕上がり

画像: 何枚も持っている(かもしれない)『アビイ・ロード』、得体の知れないリミックス版にいきなり¥12,800は……という方には、1枚単位での販売もあり。こちらは『アビイ・ロード(50周年記念1LPエディション)』で、¥4,000+税

何枚も持っている(かもしれない)『アビイ・ロード』、得体の知れないリミックス版にいきなり¥12,800は……という方には、1枚単位での販売もあり。こちらは『アビイ・ロード(50周年記念1LPエディション)』で、¥4,000+税

では、到着した27日の午前中から繰り返し聴いたこのLPのインプレッションをここで軽く記しておきたい。このLPのサウンドの特徴がよくわかるように、2009年12月に発売された『ザ・ビートルズBOX USB』に収録されていた44.1kHz/24ビット/FLAC 音声と比較しました(ハイレゾファイルの再生はリンKLIMAX DS/3で)。

ビートルズのアルバム14作品のステレオ・ヴァージョンが収められた『ザ・ビートルズBOX USB』のなかでもっともハイレゾ化(24ビット化)の恩恵が著しかった(=音がよかった)のは本作『アビイ・ロード』だったが、今回の2019年ステレオ・ミックスは、この2009年リマスター・ハイレゾファイルよりもはるかに好ましい音に仕上がっている。

アナログLPとハイレゾファイルというメディアの違いがあるにはあるが、ひじょうにシャープでクリアーな音調だった2009年リマスター・ハイレゾファイルと比べて、今回の2019年ステレオ・ミックスLPの音調はなめらかでふくよか、聴き心地がとてもよいのである(ハイレゾファイルではときおり鋭角的過ぎる印象だったギター・ソロで違いがよくわかる)。まずは何度でも繰り返し聴きたくなるこのナチュラルな音の仕上げに拍手したい。

画像: もっともシンプルなのが1CDエディション(¥2,600+税)。2019 ステレオ・ミックスのみを収録

もっともシンプルなのが1CDエディション(¥2,600+税)。2019 ステレオ・ミックスのみを収録

加えてジャイルズの「現代の耳」で新たにミックスされただけあって、ステレオフォニックな音の広がりがすばらしいし、音像定位もより納得できるものになっている。

ステレオフォニックな音の広がりがとくに好ましく感じられるのが、ジョン、ポール、ジョージ 3人によるコーラス・ワークだ。

たとえば「ビコーズ」。旧ミックスではセンター付近にモノ的に収束していたコーラスが、今回のステレオ・ミックスではL/R スピーカーの外側までぐーんと広がり、晴々とした気分が味わえるのである。コーラス・グループとしてのビートルズの魅力を再発見できるミックスと言ってもいいだろう。

『アビイ・ロード』は、それまでの彼らのアルバムのステレオ・ヴァージョンと比較すれば、音像定位に違和感を抱くことが少ない作品だったが、今回の2019年ステレオ・ミックスはいっそう好ましい。

たとえば「ヒア・カムズ・ザ・サン」のジョージのヴォーカル。旧ミックスではRチャンネルに固定されていたヴォーカルが今回はセンターにピタッとファントム定位、オーディオファイルも安心して聴ける音像定位なのである(逆に言えば、ジョージのリード・ヴォーカルが右から聞こえなくちゃ「ヒア・カムズ・ザ・サン」じゃない! という方は今回の50周年記念盤は必要なし、ということになりますね)。

いっぽう60年代末のサイケデリック時代の作品らしく、本作は特定の楽器や効果音を左から中央、右へとパニングする楽曲が多いのだが、その音像移動の軌跡はオリジナル・ミックスを尊重し、ほとんど変えていない。こんなところにジャイルズ・マーティンの思慮深さを感じてしまうのは、ぼくだけではないだろう。

そんなわけでしばらく『アビイ・ロード』祭りが続きそうなわが家ですが、このステレオ・ミックスのすばらしい音を聴くと、BDオーディオ盤も聴きたくなるなあ。ドルビーアトモスの3D効果、どんなだろう。やっぱり買うか「スーパー・デラックス・エディション」。BDを単品売りしてくれるといいんだけど……。
(山本浩司)

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