9月21日(土)、東京・板橋区のイオンシネマ板橋で「『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theater上映&スペシャルトーク」が開催された。

 こちらの記事( https://online.stereosound.co.jp/_ct/17282214 )でも紹介した通り、『ULTRAMAN ARCHIVES』プロジェクトは、「ウルトラマンシリーズ」作品を観たことのない人にも存分に楽しんでもらえることを目的にしたイベントで、6月に続いて今回で4回目を迎える。

 今回は『ウルトラQ』シリーズでも高い人気を誇るエピソード「カネゴンの繭」のリマスター版が上映された。この作品に関連したゲストとして登場したのは、作家・演出家の鴻上尚史氏と経済アナリストの森永卓郎氏。司会は映画評論家・クリエイティブディレクターの清水 節氏だ。

画像1: 「『カネゴンの繭』は日本最高傑作の寓話です」『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theater第4弾は、不条理な世界を描き出した人気作で盛り上がった

 作品については今更解説する必要はないだろう。お金に異様な執着を持つ主人公が、不思議な繭を拾って持ち帰ったら、その繭に飲み込まれて……というものだ。

 まず『ウルトラQ』シリーズの印象を聞かれた鴻上氏は、「放送が小学校2年生の時で、何か理解できないものが始まったと思っていました。どちらかというと『1/8計画』のような、リアルなお話が好きでした」と語った。

 そして上映作の「カネゴンの繭」については、「子供達がカネゴンと普通に接しているのが凄い。日常に異物であるカネゴンが居ることを自然に受け入れているんです。これは画期的でした。ストーリーもすばらしく、お金に執着するのはやめようと思いました」とのことだった。

 一方の森永氏は、「私の金融観を作ったといってもいい作品です。お金はこういうものだと教えてくれました。カネゴンがお金を食べると胸のカウンターが増えるのが、本当に衝撃的でした。というのも、あれこそまさにお金中毒者で、お金が増えないと幸せを感じないのです」と、いかにも経済学者らしい分析をしてくれた。

 「『ウルトラQ』を見てヒーローになりたいと思った人は多いだろうけれど、経済学者になった人は一人だけでしょうね」という清水氏が指摘すると、森永氏は「金融資本主義は駄目だと、このお話は教えています。私は子供の時にそれをすり込まれました」と答えていた。

画像2: 「『カネゴンの繭』は日本最高傑作の寓話です」『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theater第4弾は、不条理な世界を描き出した人気作で盛り上がった

 本作の舞台になった時代背景もまさにゲスト2人が過ごしてきた高度成長期に重なるそうで、カネゴンや子供達が土管のある造成地で遊んでいる風景が懐かしかったようだ。

 「家の近くにこういった造成地、空き地が本当にあったんです。これは子供達には幸せでしたね」と森永氏が語ると、「造成地って、自然でもなく完成した宅地でもない境界線のようなエリアで、そういった場所は楽しかったですよね。この時代はまさに、牧歌的な時代と高度成長期の境目でもあって、次第に子供達に広がっていた拝金主義へのアンチテーゼだったのではないでしょうか」と鴻上氏も分析していた。

 さらに鴻上氏は「『カネゴンの繭』は、凄く不条理な世界です。金男がなぜカネゴンになったのか、どうしてヒゲ親父が逆立ちしたらカネゴンが空に飛んで、パラシュートで降りてきたら金男に戻っているのか、何も説明しようとしていない。いわゆる説教話に収まらない、当時の不条理文学の世界に通じるものがあります」と、本作の魅力を放送時の時代性まで踏まえて解析してくれた。

 その後カネゴンの着ぐるみが登場すると、造形にも話が及んだ。「可愛さと気持ち悪さの間の、絶妙なバランスを持っています」と鴻上氏も興奮気味。一方森永氏は、「僕の記憶よりもカウンターが小さかったんですね。とにかくこの発想には驚きました。僕が事務所を開いたときに、最初に置いたのはカネゴンのフィギアでした。こうなってはいけないという自戒を込めた、というわけではありませんが……」と、フィギアコレクターとしての一面も覗かせていた。

 ちなみにカネゴンの下半身は妊婦のフォルムを参考にしているのだそうだ。これは頭部ががま口をモチーフにしており、それだけでサイズが大きい。それとバランスするために安定感のあるボディと考えてのことだそうだ。そういわれるとあのぽっこりしたお腹も愛嬌たっぷりに思えてくる。

画像3: 「『カネゴンの繭』は日本最高傑作の寓話です」『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theater第4弾は、不条理な世界を描き出した人気作で盛り上がった

 最後に森永氏は「『カネゴンの繭』は、イソップ童話と並ぶ日本の最高傑作の寓話です。人のお金を奪う、人をダマしてお金を稼ぐというのは駄目で、労働価値の大切さをしっかり教えてくれています」と作品の魅力を紹介。鴻上氏も「放送当時は、カネゴンのようになってはいけないという戒めになりましたが、今の時代はそれは通じない。円谷プロにはこれからの時代に通用する作品を作って欲しいですね」とこれからの希望を話てくれた。

 「『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theater第5弾」は11月の開催が決定している。次回からはいよいよ『ウルトラマン』のエピソードが上映されるそうで、ファンはこちらも待ち遠しいことだろう。

『ウルトラQ』Episode 15「カネゴンの繭」
●あらすじ:お金を集めることが大好きな少年・加根田金男。ある日、中からコインの音がする不思議な繭を拾うが、その繭に飲み込まれ、お金がご飯の怪獣カネゴンに変身してしまう! 友人に助けを乞うが、皆のお小遣いを集めても空腹は治まらない。果たして彼の運命は……。
●スタッフ:脚本 山田正弘、監督 中川晴之助、特技監督 的場 徹

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