編集部 消費税が10%にアップする10月1日まで、あと10日になりました。その影響もあってか、家電量販店では大型テレビ、特に有機ELテレビが売れているという話です。

 そこで今回は……かなりぎりぎりのタイミングですが……今週末〜来週末にテレビの買い換えを考えている方に向けて、今テレビを選ぶならどんなところに注目すべきなのか、またどんな点に注意して製品を選べばいいのかについて、麻倉さんに解説いただきたいと思います。

麻倉 テレビを買うということは、一大決心が必要です。普通テレビは10年くらい使いますので、買い換えの際には10年後を見据える必要があり、壊れない限りなかなか腰が上がりません。

 しかし今回のように税率が変わり、購入時の値段が絶対上がるというのは、テレビのような高価な耐久消費財の買い換えには影響が大きいですね。ニュースなどを見ていても、お店によっては有機ELテレビが従来の4倍も売れているといいます。

 実は、この有機ELテレビが売れているというのは、必然でもあります。その理由はまず、絵が綺麗だということです。

 これまで家庭の映像は地デジなどの2Kが中心でしたが、ここ数年4Kに移行しつつあります。UHDブルーレイなどのパッケージが登場し、昨年末には放送も始まりました。

 4Kテレビはそれまで2Kのアップコンを見ていたのですが、今ではNHKや民放で無料の4K放送が行なわれています。となると2Kテレビのユーザーも、いつかは4K放送を見たいという気分になるでしょう。

編集部 確かに、せっかくテレビを買うなら4K放送も見たいですし、先ほどお話にあったように、10年後まで使いたいと考えると、4Kに対応しないわけにはいかない。

麻倉 インフラがあるか、ないかはとても重要です。2020年に東京オリンピックもありますし、消費税増税のからみも出てきて、このタイミングで買い換えようというモチベーションにつながったのでしょう。

 もうひとつの理由として、日本人は有機ELを好んでいるという傾向があります。世界市場で見た場合に、大型テレビに占める有機ELの比率は、日本が世界で一番だそうです。日本と欧州が40〜50%近くで、逆にアメリカや中国は8〜10%ほどだといいます。

 その理由を考えてみると、日本や欧州は部屋の大きさがほどほどで、あまり明るくないということがあるでしょう。つまり適切なサイズ……50〜60インチくらい……で、より画質のいいものを求めている。逆にアメリカや中国では、同じ価格なら大きい画面の方が好まれて、結果として液晶が中心になっているようです。

 それくらい日本は品質コンシャスで、ユーザーの目も肥えているのです。さらにもともとブラウン管やプラズマといった自発光デバイスに親しんでいて、今でもプラズマを使い続けている画質志向のAVファンも多くいます。そういった人たちが、今回は液晶ではなく有機ELを選んでいるのでしょう。

編集部 確かに、StereoSoundONLINE読者の中にもプラズマのファンは多いと思います。

麻倉 最後は、有機ELテレビの価格が下がって、画質がよくなってきたことです。店頭を見てみると、55インチの有機ELテレビで30万円を切っている製品もあります。かつては1インチ1万円を切るのが夢と言われましたが、もうそれどころではない。

 その一方で画質はどんどん上がっていて、特に2019年モデルは各社とも絵がとてもいい。黒レベルの安定性、黒階調の再現性がよくなってきたし、HDRの効果も充分に感じられるようになりました。

 有機ELテレビが日本市場に本格的に登場したのは2015年頃ですが、それから毎年パネルの品質が向上し、そこに各社のノウハウが入ることで、独自の絵づくりを獲得してきています。

編集部 パネルは同じだけれど、各社の個性がでてきたということですね。

麻倉 その意味では、有機ELテレビの中でメーカーごとの違いを楽しむ、選ぶ楽しみも出てきています。機能性も上がって、トータルのパフォーマンス、コストパフォーマンスがよくなっているのが、有機ELテレビが売れている要因なのでしょう。

編集部 ちなみに今テレビを選ぶとすると8Kをどうするか重要だと思いますが、こちらはどうお考えでしょう?

麻倉 8Kは正直難しいですね。有機ELテレビを買おうと思っているけど、8Kがでるならそれを待とうかという人もいらっしゃるでしょう。しかし実際問題、8Kの有機ELテレビは、先日発表されたLGの88インチくらいで、価格も330万円前後です。しかも8Kチューナーは内蔵していないので、別途単体チューナーも必要です。

 ということは、有機ELの8Kテレビは、しばらくは大型・高価格帯モデルとなるでしょうし、今の4Kテレビのように、身近な大衆的な8Kになるにはあと5〜6年はかかるのではないでしょうか。

編集部 ということは、今回有機ELテレビに買い換えるなら4Kがお勧めだと。

麻倉 コストパフォーマンスを考えると4Kがお勧めですし、8Kを意識している人は、消費税アップで駆け込み購入はしないんじゃないでしょうか(笑)。

 そもそも基本的な有機ELのよさとして、コントラストがとてもしっかり再現できる点があります。コントラストがいいと、見た目の解像感が上がるのです。細かい部分の黒が再現できるようになると、絵にめりはりが出てきて、存在感・実態感が出てきます。

 同じ画面サイズでも、コントラストのある映像とない映像を比べると、圧倒的にコントラストが高い映像の方が綺麗に見えます。さらに最近は色域がBT.2020になって、色の情報も増えています。有機ELはこの点も得意ですから、コントラスト、色の両方で優れた画質が楽しめるわけです。

 来年は有機ELテレビももっと安くなるんじゃないの、という方もいらっしゃるでしょう。もちろんその可能性はありますが、そこまで待つのは勿体ない。人生は限られているわけで(笑)、来年まで今のテレビを使って2Kの映像を見ているくらいなら、早く4KやHDRの高画質を楽しんだ方が得でしょう。感動的資産、コンテンツ的資産が必ず増えます。

 有機ELテレビを買うということは、単に新しい機械をかうのではなく、新しい体験ができるということです。これまで当たり前だと思っていたテレビの絵が、次元の違う世界に入る。価格、クォリティともこれだけお得になっているのですから、有機ELテレビは今まさに買うべき時にきているといってもいいのです。

編集部 現在、国内で有機ELテレビを発売している主なブランドは、ソニー、パナソニック、東芝、LGですが、それぞれどんな特徴があって、どんな点に注目して選べばいいのか、アドバイスをお願いします。

麻倉 この4社は、画質などのクォリティ、製品品質についてはどれも充分高いですね。つまりこの中から選んでおけば、有機ELテレビとしての魅力は充分に感じられるでしょう。

 製品の登場時期が若干違いますので、店頭での販売価格にも差がありますが、それ以外にも特徴的なポイントがありますので、その点を踏まえて製品をえらんでもらえるといいですね。

編集部 それぞれのブランドについて、製品選びで注目したポイントを教えていただけますか?

画像: ソニー・ブラビアの有機ELトップモデル「A9G」シリーズ

ソニー・ブラビアの有機ELトップモデル「A9G」シリーズ

麻倉 まずソニーは、日本で一番売れている有機ELテレビメーカーですし、欧州でも人気だそうです。

 なぜソニーの有機ELテレビが売れているかというと、画質がひじょうによくなっているのです。A9Gシリーズはソニーの第三世代有機ELテレビですが、黒の再現性もいいし、色の透明感、再現性もよくなっています。4K放送、UHDブルーレイ、ネットの4Kコンテンツと、どれを見てもいい形で楽しめます。

 またアコースティック サーフェス オーディオ プラスという、画面表面から音を出す仕組みも素晴らしいですね。これまでのテレビスピーカーは、デザインを追求すればするほどスピーカーのサイズや設置場所がなくなって、音質的にはひどいものでした。

 しかしアコースティック サーフェス オーディオ プラスはそこに一石を投じました。画面そのものを振動させて音を出すという方式で、映像にマッチした音が楽しめます。

 そもそもガラスという素材は音を出すのには向かないのですが、ソニーは以前からグラスサウンドスピーカーを手がけており、そのノウハウを持っていたわけです。A9Gではさらに自然でダイナミック、歪みの少ない音が実現できています。

 大画面になった時に、人物の台詞がしたから出てくるというのはどうしても違和感がありますので、リビングに設置する場合にはこの方式はとても大きなアドバンテージになるでしょう。

画像: パナソニックの「GZ2000」シリーズも人気が高い

パナソニックの「GZ2000」シリーズも人気が高い

 パナソニックのGZ2000シリーズも、画質がひじょうによくなっています。黒の階調、細かい部分のノイズが減って、白が伸びてきました。有機ELテレビは黒が得意だけど、明るさが足りないと従来言われていましたが、GZ2000では、黒だけでなく白のクリアーさ、輝きもあるので、画質的にひじょうに素晴らしいと思います。

 パネルをそのまま使うのではなく、その中から熱処理の部分に手を入れて、そのメリットを画質向上に活かしている。それでパナソニック独自の絵を作っています。パナソニックは自発光のプラズマを手がけてきた経験もありますから、そのノウハウが有機ELに投入されています。その点も見逃せません。

 またドルビーアトモスなどの再生用に、イネーブルドスピーカーを搭載している点もユニークです。もちろん天井で音を反射できることが条件ですが、ちゃんと設置するとびっくりするくらいの効果があります。

 他にも、ソニーも同様ですが、ドルビービジョンなどのHDR方式にも対応済みという点も安心できます。

画像: 東芝レグザ「X930」は映画ファンにぴったり

東芝レグザ「X930」は映画ファンにぴったり

 東芝のレグザは、昔からマニアックな画質や機能を備えている点が特徴です。レグザの絵は情報量、色の再現性が優れており、黒から白までの輝度・色階調の再現が素晴らしい。今回のX930でもそれが際立っています。

 さらに2Kから4Kへのアップコン画質がいい。超解像やノイズリダクションを上手く使って、アプコンバートだけど4Kの中でビビッドな絵を作っています。

 また、UHDブルーレイなどの映画の再現性もひじょうに真摯に取り組んでいます。東芝はブラウン管の頃から「映画モード」に取り組んできましたし、デバイスの変遷に応じた映画の見せ方をよく研究しています。

 それもあり、映画を好きな方にはレグザX930をお勧めしたいですね。UHDブルーレイはもちろん、配信での4Kを見るなどにも最適です。

 また東芝独自機能として、タイムシフトマシンはひじょうに便利です。これは一度使うと手放せなくなります。

画像: LGは4種類の有機ELテレビをラインナップを準備している。写真は「E9P」シリーズ

LGは4種類の有機ELテレビをラインナップを準備している。写真は「E9P」シリーズ

 最後のLGは、有機ELのオリジネーターだし、グループ会社のLGディスプレイは世界で唯一大型テレビ用の有機ELパネルを製造しています。その意味ではパネルから製品まで一気通貫で作っているただひとつのメーカーともいえます。当然有機ELパネルを知り尽くしていて、これは重要です。

 またあまり知られていませんが、LGの絵づくりには日本人技術者も多く関わっています。世界標準のテレビの絵というと、どうしても白を立てて、黒を沈めたドンシャリな傾向になりがちなのですが、LGでは日本で通用する画質をきちんと研究してきました。

 つまり黒と白のレンジだけでなく、その間にどれくらいの階調を再現できるかに重きを置いているのです。それがパネルメーカーを動かし、結果として有機ELの画質インフラの向上につながっていると言っても過言ではありません。

 LGの有機ELテレビの絵もクリアーで、階調感も出ているし、日本人が好む絵づくりに仕上がっています。また価格も他にくらべて抑えられているので、総合的にも魅力的なブランドだといえます。

 LGの有機ELテレビはラインナップが豊富な点もいいですね。ライフスタイルによって違っているのですが、画質については全シリーズで共通です。これも選ぶ側からすると嬉しいでしょう。

 もうひとつ、スマートテレビの操作性、機能が快適です。日本でテレビというと放送が主で配信はその次ですが、世界的には配信が主になりつつあります。LGのテレビはクラウドを使ったサービスにも注力していて、その点も世界基準になっています。こういった点に触れてみたい方は一度試してみてはいかがでしょう。

画像: シャープの液晶テレビラインナップは実に豊富。写真は8Kチューナー内蔵の「AX1」シリーズ

シャープの液晶テレビラインナップは実に豊富。写真は8Kチューナー内蔵の「AX1」シリーズ

編集部 ところで、テレビの選択肢としては他に液晶もあります。こちらは価格もこなれているし、選択肢も多いと思います。

麻倉 液晶テレビは、最近は海外ブランドやIT系からの進出もあり、本当にブランドも、製品数も多いですね。しかもその多くが4K対応しています。ただこれらについては、4Kの実力を生かし切れていない印象もあり、もう少し頑張って欲しいというのが正直なところです。

 そんな中で選ぶなら、やはりシャープの製品は抜群に製品力があります。日本製ならではの安心感と、ラインナップの豊富さという意味で、今のニーズにはすべて応えてくれる。そんな中から自分にぴったりの製品を選べるのが魅力です。

 シャープは2K、4K、8Kテレビを、しかもチューナー内蔵モデルで揃えている唯一のメーカーです。しかもシャープの物作りは、基本的には堺製のパネルを使っていて、パネルからセットまで手がけている貴重なブランドです。一貫生産の品質の安定性、信頼性は高いですね。

 シャープとしての絵づくりもかなりよくなっていて……従来は液晶パネルに起因する問題点もありましたが……最近はコントラストについてもLEDバックライトの部分駆動などの使いこなしがよくなって、改善されています。色域拡張も達成しています。

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