ニアフィールド・アクティブパワードスピーカー「SA-Z1」のソニーが定めたターゲット顧客はパーソナルなオーディオラバー。彼らに、これまでのような“大きなスピーカー+大きなアンプ”という組み合わせでなく、机上設置で、コンパクトで高品位なアクティブスピーカーを提供すれば、「解像度+音場」の魅力に目覚めてくれるはず……とした。

 そこで投入した技術を3つ述べよう。

①デジタル+アナログのハイブリッド内蔵アンプ
 デジタルアンプは小型、高効率、発熱極小なので、スピーカー内蔵に向いているが、大出力時(大電圧もしくは大電流)に誤差成分が生じる。そこでアナログ信号の理想波形で較正する。

 パワー半導体素子に一般的なMOS-FETではなく新素材、窒化ガリウム(GaN)を採用。高速スイッチング時に、MOS-FETでは誤差成分が生じてノイズや歪み、発熱の原因となる。GaNのはそんな問題なく正しい波形が得られる。2chスピーカーの空間音としては、これまで聴いたこともないような正確性とハイリニアリティが聴けた理由だ。

画像: アンプ部。アナログ+デジタルのハイブリッド・アンプだ

アンプ部。アナログ+デジタルのハイブリッド・アンプだ

②ユニークなスピーカー構造
 立方体形状のアルミ製キャビネットにトゥイター×3、ウーファー×2の5ユニットが内蔵されている。高音用のI-Array方式と低音用のTsuzumi(鼓)方式だ。

 I-Arrayはメイントゥイーターの上下にアシストトゥイーターを2つ配置。音像はメイン部から出る。低音用のTsuzumiは振動板が対向した密閉型。表側のメインウーファーと背面のアシストウーファーから、横の音道に放出される。同心円上に充分な音圧での拡散が可能になった。いずれもソニー独自のアイデアだ。

 インプレッション編で、机の上がステージになり、そこでミニチュアな歌手、楽団が正しい位置と音像を持って演奏しているような嬉しい錯覚も受けたのは、この点音源的なしつらえのおかげだ。

画像: 正面から見た右チャンネル

正面から見た右チャンネル

③マルチユニットでいかに位相と時間軸を合わせるか
 近くでスピーカーを聴くわけで、各ユニットの前後位置のずれによる時間差は相対的に大きくなり、音場再生に損失を与える。そこでSA-Z1では、各ユニット間の時間軸誤差を最小に抑えるよう努めた。

 メイントゥイーター、アシストトゥイーター、メインウーファー、アシストウーファーの各ユニットは独立した4系統のアンプで駆動される。それぞれアナログとデジタルのハイブリッド構成だから4×2で片方8チャンネル、左右16チャンネルもの数だ。

 駆動時に時間軸がずれる可能性もある。そこで各スピーカーユニットの時間軸をFPGAによって独立制御し、時間軸を完全に揃えた。私がヴァイオリンが自発的に空間に音の粒子を振りまくように聴いたのは、時間軸を合わせた工夫の成果だ。

 近年、希にみるイノベーティブなオーディオの登場だ。別記事のソニー・オーディオ企画部長のインタビュー記事も参照のこと。

画像: 回路部。アナログのリファレンス信号発生部、FPGA部が分かる

回路部。アナログのリファレンス信号発生部、FPGA部が分かる

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