パナソニック・テクニクスは、ベルリン・フィルとの協業を展開し、ベルリン・フィルの演奏ストリーミングサービス「デジタル・コンサートホール」では、4K配信がスタートした。

 パナソニックはベルリン・フィル側に4K制作整備を提供し、ベルリン・フィルからは、音楽、音響のノウハウがテクニクス側に与えられるというギブ・アンド・テイク関係にある。最新のベルリン・フィル側からのギフトが、サウンドバーにおける「ベルリン・フィルハーモニー・ホール・モード」だ。現行モデル「SC-HTB900」のファームアップで、同モードがインプリされる。

 パナソニックブースで、このモードのON/OFFを、新首席指揮者キリル・ペトレンコがベルリン・フィルハーモニーを指揮した、ひじょうに力の入った演奏で試した(ベルリン・フィル・メディアから提供された音源)。

 ON/OFFで切り替えてみると、ONでは自然な拡がり、質感のナチュラルさ、グロッシーな空気感が再現された。サラウンド感はそれほどでもないが、適度な拡がりといえよう。ベルリン・フィルハーモニーホールのBブロックの最前列(もっとも音がよい)をシミュレートしたという。TUNED BY TECHNICSなので、テクニクスCTOの井谷哲也氏に話を聞いた。

画像: ベルリン・フィルのライブ映像を、「ベルリン・フィルハーモニー・ホール・モード」で聴く

ベルリン・フィルのライブ映像を、「ベルリン・フィルハーモニー・ホール・モード」で聴く

麻倉 今回の提案では、ホール残響に関するお話も面白いと思います。これまでのOTTAVA「SC-C50」とか「SC-C30」は、残響付加と言うよりも部屋の癖をなくすというアプローチでした。しかし今回はより積極的に音場イメージを作っていこうという、かつてのヤマハのシネマDSPのような考え方ですね。

 ベルリン・フィルとの協業を続けていて、そこから学んだものも多いと思います。テレビのEX850シリーズでその成果が搭載されましたが、今回はその第二弾になるのでしょうか。

井谷 技術的にはより高度なシステムです。具体的にはベルリン・フィルのホールの響きを測定させてもらっています。弊社のスピーカー「SB-R1」を持ち込んで、長年使っている測定用マイクで、順番に最前列や最後列での音を測りました。最近の測定器では、反射波の時間だけでなく、到来方向もわかるのです。それをずっと解析しながら、ホール特有のキャラクターを把握していきました。

麻倉 私個人としては、ベルリン・フィル・ホールではBブロックの2列目最前列の音がよかったですね。

井谷 われわれの測定結果も同じでしたので、そのデータを元に今回の補正を仕上げています。

麻倉 パナソニックのテレビにはデジタルコンサートホールのアプリが入っているから、これらを組み合わせると、デジタルコンサートホールを臨場感豊かに楽しめるというわけですね。

 ところで、こういったバーチャルサラウンドは、昔のイメージでは残響をかなり付加したやり過ぎの音という印象もありましたが、最近はどうなっているのでしょう?

井谷 それについてはわれわれも色々考えました。詳しくは申し上げられませんが、ベルリン・フィル・メディアのトーンマイスターに色々アドバイスをもらっています。

 テクニクスの技術者や営業担当が音決めするとどうしても過剰な効果になってしまうのですが、トーンマイスターは案外抑え気味の音づくりなのです。そのため、初めて聴く人はちょっと物足りないかも知れません。

麻倉 抑えめなくらいが正しいのかも知れませんね。

井谷 またバーチャルサラウンドでは、ディレイをかけた音をたたみ込んでいくので、DSPのパワーが必要です。そのためなかなかハイエンドな商品がなく、弊社でいうとSC-HTB900くらいの製品でないと搭載が難しいのです。今後は、これを元に色々な方のご意見を聞いて、より展開していければと考えています。

麻倉 C50くらいの再生能力を持った製品に搭載していくといいのではないでしょうか。せっかくステレオ再生モードも搭載したことですし。大いに期待ですね。

画像: テクニクスCTOの井谷氏(右)とサウンドバー設計のパナソニック・アプライアンス社オーディオ技術部主任技師の北戸英里氏(左)

テクニクスCTOの井谷氏(右)とサウンドバー設計のパナソニック・アプライアンス社オーディオ技術部主任技師の北戸英里氏(左)

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