池袋の「グランドシネマサンシャイン」がオープンして約2ヵ月が過ぎた。スクリーンサイズなどの規模が大きいことはもちろんだが、実際の画質・音質についての評判も高い。加えてIMAXシアターでの『ダンケルク』や『ブレードランナー』のリバイバル上映と映画ファンの心をくすぐる企画も続いている。今回はそんなグランドシネマサンシャインにお邪魔して、支配人の下井一洋さんと、営業主任で映写担当の菊池 元さんにインタビューをお願いした。インタビュアーは映画館が大好きな久保田明さんだ。(編集部)

画像: グランドシネマサンシャインの最上階に設けられたIMAXシアター(シアター12)

グランドシネマサンシャインの最上階に設けられたIMAXシアター(シアター12)

久保田 今日はお時間をいただき、ありがとうございます。まずはグランドシネマサンシャインさんの概要について教えていただけますか?

下井 当劇場は、12のスクリーンを備えたシネマコンプレックス型の映画館です。すべてデジタルプロジェクターによる上映で、シアター4には4DX with ScreenXも備えています。

 サラウンドは7.1chが中心で、BESTIA(ベスティア=シネマサンシャインの独自規格)館のシアター5と6はドルビーアトモスとDTS:Xの再生もできます。

 さらにシアター12はIMAXシアターで、4Kツインレーザープロジェクターを備えています。スクリーンサイズも日本最大で、幅25.8×高さ18.9mあります。音響はIMAXの12ch再生です。

久保田 オープンしてから2ヵ月弱が過ぎましたが、お客さんの反響はいかがですか?

下井 予想以上に多くのお客様においでいただき、嬉しい悲鳴といった状態です。特にIMAXシアターの評価が高く、また多くの方に注目いただいているとひしひしと感じております。おいでいただいたお客様の満足度も高いので、喜んでいただけていると思っております。

久保田 お客さんの年齢層はどれくらいなのでしょうか?

下井 作品によっても違います。オープニングの『天気の子』では若い方が多く、そんな皆さんにもIMAXの魅力を知っていただけたのでないでしょうか。企画上映の『ダンケルク』は比較的年齢が高めの方が多かったと思います。

久保田 今回の『ブレードランナー』もそうでしょうが、昔からのファンがIMAXシアターで見直したいという思いはありますからね。

下井 そうですね、初見の方よりは、もう一度見直そうという人の方が多いかも知れません。実際に当館はIMAXシアターの売り上げが、他のシアターよりもかなり高くなっています。

久保田 それだけIMAXの満足度が高いということでしょうね。それは劇場としてもいいことですね。

 ところで御社のホームページには、「心を込めたおもてなしで映画ファンをお迎えしたい」というコンセプトがかかれていました。具外的にどういった点に配慮されたのでしょう?

下井 フロアーごとに映画祭をテーマにしたデザインにしており、5Fにはカフェを設けるなど通常のシネコンとも違う作りを採用しました。また12FのIMAXシアターにはレストランも併設しており、映画を見た後にゆっくりお話する時間を取っていただければと思っております。

画像: スクリーン前に立つ久保田さん。高さは18.9mで、通常のビル6階分に相当する。写真からその巨大さがわかるだろうか

スクリーン前に立つ久保田さん。高さは18.9mで、通常のビル6階分に相当する。写真からその巨大さがわかるだろうか

久保田 さて、先日の『ダンケルク』に続いて今回『ブレードランナー』がIMAX上映されますが、今後もこういった企画上映を続けていく予定はありますか?

下井 現状では特に決まってはいませんが、お客様の要望も多いので、配給会社さんと相談して、いい素材があればと思っています。

久保田 最近はシネコンもたくさんありますから、それぞれの劇場が個性を出していくのがいいと思うのです。特にグランドシネマサンシャインはスクリーンも大きいし、立地もいいのでみんな期待していると思います。ぜひ他で見られないような特集上映をお願いします。

下井 これまで弊社のIMAXシアターでは、IMAX作品の新作がない時などにIMAXカーニバルとして、過去の作品を上映してきたことがあります。今後もタイミングをみて、そういった企画も考えていきたいです。

久保田 ところで、上映用プロジェクターはすべて4K対応ということでよろしいでしょうか?

菊池 当劇場ではシアター3、4、5、6が4K上映館です。あとは別格としてシアター12のIMAXシアターがあります。

久保田 『ブレードランナー』も4K上映ということですね。アスペクト比はIMAX用に変更されているのでしょうか?

菊池 いえ、オリジナルの画角のままで上映しています。上映マスターとしては、ワーナーさんがお持ちの4K素材を使い、IMAX社でDMRという作業を加えています。その際に画角などは変えていません。

下井 アメリカでは2年前の『ブレードランナー2049』の公開に合わせて、『ブレードランナー』のIMAX上映も行なわれていますので、おそらくその際に作られたマスターに日本語字幕を付けたバージョンだと思います。

久保田 今回が日本初のIMAX上映というわけですね。1982年にフィルム上映を見た方もいるでしょうが、品質という点では今回は別次元でしょう。音もIMAX用にリミックスされているのですか?

菊池 はい、そうなります。

久保田 IMAXシアターはスクリーンサイズを公表していないと思いますが、今回はサイトにもスクリーンの大きさが公表されていました。

下井 IMAXシアターは基本的にはスクリーンサイズは公表していないのですが、今回は日本最大サイズをアピールしようということで特別に許可を取っています。

画像: シアター12の内装はシックなトーンで統一されている。傾斜も大きめで、前の人の頭が映像にかぶることもないだろう

シアター12の内装はシックなトーンで統一されている。傾斜も大きめで、前の人の頭が映像にかぶることもないだろう

久保田 もうひとつ音についてですが、先日こちらのシアター6で『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のドルビーアトモス上映を見た知人が、音がよかったと話していました。

 このように、グランドシネマサンシャインはIMAXシアターだけでなく、すべてのスクリーンの絵や音の完成度が高いという印象があります。品質のためにどんな注意をされているのでしょうか。

菊池 音に関しては、特にベスティア館については劇場設営のプロの方々に時間をかけて、最新機器を念入りにセットしていただきました。その効果がでてきているのだと思います。お客様からも好意的な評価をいただいています。

久保田 最近は爆音上映が注目を集めていますが、そういった事も考えているのでしょうか?

下井 いえ、グランドシネマサンシャインについては、制作者の狙った絵と音をきちんと再現したいと考えています。ですので、基本的にはデジタル上映の規格に則った運用を心がけています。

久保田 一部のシネコンでは、別のスクリーンに影響が出ないように、上映時のボリュウムを下げているという話も聞きます。

菊池 それはありません。設計段階から防音、遮音には気を配っていますので、規格通りに運用してもまったく問題のない建物に仕上げています。

久保田 それは素晴らしいですね。監督や音響監督が狙った絵と音をきちんと体験できるとなると、グランドシネマサンシャインに足を運ぶ意味がますます出てきます。ちなみに菊池さんから、ここを観て欲しいといったアピールポイントはありますか?

菊池 どうしてもIMAXシアターやベスティア館に目が行きがちだと思いますが、当劇場は全館レーザープロジェクターを入れており、通常のスクリーンでも発色のいい綺麗な映像をお楽しみいただけます。

 また音に関しても完璧にチューニングしておりますので、どのスクリーンでご覧いただいても満足してもらえると思います。ぜひ色々な作品をグランドサンシャインでご覧いただきたいと思います。

久保田 なるほど、12のスクリーンで色々な作品を見比べるのも楽しそうですね。今日はありがとうございました。

画像: インタビューに協力いただいたおふたり。グランドシネマサンシャイン 支配人の下井一洋さん(右)と、営業主任の菊池 元さん(左)

インタビューに協力いただいたおふたり。グランドシネマサンシャイン 支配人の下井一洋さん(右)と、営業主任の菊池 元さん(左)

こんな『ブレードランナー』は初めて経験した。
〜グランドシネマサンシャインのIMAX上映は、新たな“驚き”を与えてくれる〜 久保田明

 根がミーハーなので、新しい映画館ができるとすぐに行きたくなる。オープン前から映画ファンの注目を集めていた池袋の「グランドシネマサンシャイン」は、予想を遙かに上回る個性的な大劇場だった。

 近年のシネマコンプレックスはクールで画一的なデザインのところが多いけれど、今回お邪魔したIMAXシアターは場内の壁面や椅子がアンバー、ボルドー系の色調で統一され、オペラ劇場のような優雅さと暖かみを感じさせる。成田HUMAXシネマズのIMAXに出かけたときも実感したが、スクリーンが縦方向に巨大なぶん、圧倒的に天井が高く(約25m、ビル5階分)、それだけで別世界に来たような気分になるのだ。往年の有楽座や新宿ミラノ座のような、大劇場の気品と佇まいである。

 ビルの4階から12階が計12スクリーンの映画館になっており、その間はエレベーターよりエスカレーターで移動するほうがいい。各階の壁に戦前から2010年代までの名画の輸入ポスターが飾られており、映画好きならそれを眺めるだけでご飯が何杯か食べられる。これはちょっと展覧会クラス。

 今年、経費の高騰もあり「午前十時の映画祭」は終了してしまったけれど、グランドシネマサンシャインには映画ファンの殿堂になるような熱気と開放感がある。金曜の夜というタイミングもあって、4階のエントランスロビーには若い男女を中心に幅広い客層のお客さんが集まっていた。その姿を見下ろしていると、ここから何かが生まれるという気持ちになってくる。

画像1: 予想を遙かに上回る個性的な大劇場。池袋の「グランドシネマサンシャイン」が映画ファンの注目を集める秘密を支配人に聞いた。IMAX版『ブレードランナー ファイナル・カット』も絶対見るべし

 さて、今回鑑賞したのは2007年にリドリー・スコット監督監修の下で作成された4Kレストア版の『ブレードランナー ファイナル・カット』。今回が国内初(で最後かもしれない)4K & IMAXの12ch上映となる。

 オススメの席は、KかJ列の20番、21番。今回はその後ろのリクライニング付きのプレミアムシートLの15番で鑑賞したが、きわめて快適だった。

 4Kデュアルレーザー上映の賜物だろう。輝度を充分に稼いでおり、雨や霧やスモークに覆われた世界だが、暗部階調再現も優れており立体感がしっかり出ている。劇場では初めての体験だ。

 『ブレードランナー』を象徴する、スピナーが円弧を描きながら警察署の屋上に降下してゆく場面。金平糖のように光る3つのライトが美しく、その右手にある灰色のスピナー(の模型)が可愛らしい。SFXシーンだけではなく、髪を解いたレイチェルの横顔にデッカードのそれが重なるショットなど、ドラマ部分にも観る者の陶酔を増す研磨がある。フィルムグレインもいい感じで残っておりGood!

 長年論議となってきた、デッカードはレプリカントなのかという問い。その瞳孔もレイチェルやロイ、プリス同様にレプリカントの特徴であるオレンジ色に光るので、ぼくはデッカードもそうだという側に立つ。そう考えると、『ブレードランナー』は、自身が人造人間であると知っている男ロイ、知らない男デッカード、人間だと思っている女レイチェルの物語になり、酸性雨のなかの出来事に味わいと悲しみが増すからだ。まあ、答えはひとつではないだろうけど。

 フォークト=カンプフ検査を受ける場面で、リオンの瞳孔が光るカットを確認できるのは4Kの精細、超大画面の恩恵。検査官のホールデンに「カメは足をばたつかせるが、起き上がれない」と言われる場面。本当に一瞬だが、染まる。

画像: 現在上映中の『ブレードランナー ファイナル・カット』を初体験。シートは中央やや後ろ側のL列だった

現在上映中の『ブレードランナー ファイナル・カット』を初体験。シートは中央やや後ろ側のL列だった

 12chのミックスもとてもいい。デンドンデンドンデンドンデンドン、のヴァンゲリスのエンド・クレジット曲に乗って上がってくるのはドルビー・ステレオのロゴだ。もとは3chの音源なのに、火炎は足元から吹き上がり、雨は上から落ちてくる。音数も驚くくらい増えている。

 『ファイナル・カット』で初めてミックスされた日本語音声(たとえば、開始10分ほどのポリス・スピナーの発進シーン。車体下部からの座標を捉えた青線画ディスプレイが映る場面の『最終接近』という男の声)もクリアーに聞こえる。

 こんな『ブレードランナー』は初めて経験した。12月20日公開の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を最初にどこで観るかは迷うところだけれど、グランドシネマサンシャインのIMAXは第1候補! もちろんその前に何を観るかを考えニヤニヤしている。

 そうそう、12FのIMAXシアターのロビー天井には、「Motion Ceiling」と呼ばれる巨大なディスプレイが設置されており、夕方過ぎには地上からさまざまなグラフィックを目視することができる。帰りには上を見上げてみよう。

 オンライン読者のみなさんもぜひこの新劇場で、映画の楽しさを満喫していただきたい。

『ブレードランナー ファイナル・カット』IMAX版上映
●上映期間:9月6日(金)から2週間限定
●上映予定劇場(32館・7/30現在)
シネマサンシャイン(グランドシネマサンシャイン、大和郡山、衣山、土浦)
109シネマズ(二子玉川、川崎、名古屋、木場、湘南、菖蒲、箕面)
TOHOシネマズ(日比谷、新宿、ららぽーと横浜、なんば、二条、仙台)
ユナイテッド・シネマ(としまえん、浦和、札幌、豊橋18、岸和田、キャナルシティ13、PARCO CITY 浦添)
T・ジョイPRINCE 品川/横浜ブルク13/広島バルト11/鹿児島ミッテ10/イオンシネマ大高/成田HUMAX シネマズ/USシネマちはら台/エーガル8シネマズ

画像2: 予想を遙かに上回る個性的な大劇場。池袋の「グランドシネマサンシャイン」が映画ファンの注目を集める秘密を支配人に聞いた。IMAX版『ブレードランナー ファイナル・カット』も絶対見るべし

Blade Runner: The Final Cut © 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

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