映像配信大手のNETFLIXは9月6日、都内でイベントを開き、(主に自宅での)NETFLIXコンテンツ視聴におけるクォリティ向上の取り組みについての説明を、デモを通じて紹介する「NETFLIX HOUSE:TOKYO 2019」を行なった。

 これは、同社におけるコンテンツ製作以後の、圧縮、配信、視聴(TVなどの再生機器)といった面における取組の模様と、対応機器の普及・促進の実際について、5つのセッションを通じて(それぞれの担当者が)説明してくれるもの。

 冒頭、登壇した同社プロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏によれば、各国の特徴を活かしたローカルコンテンツの制作は好調で、さらに世界配信を行なう際も、その国に合わせてコンテンツを提供――セリフの吹き替えや、番組宣伝の文句やキービジュアルを変える――することで、それが拡大しているという。二日前のJ:COMの会見でもコメントがあったように、日本発のオリジナルドラマ「全裸監督」は大成功を収めているそうで、10を超える言語に吹き替えて配信されていて、インドや台湾などアジア圏で人気ベスト10に入る成績を残しているという。

画像: NETFLIX プロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏

NETFLIX プロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏

 また、アニメコンテンツも日本市場では好調さをけん引しているそうで、2015年の日本市場への参入以後、地域の特徴に合わせた施策を推進することで、4年間で約300万のNETFLIXユーザーを獲得したという。

 今後一年の間に、新たに16のオリジナルコンテンツを公開する予定であり、さらにクリエィティブパートナーとの協業を進め、より多くの日本発のオリジナル作を世界へ届けるという使命を「果たしたい」と、意気込みを語っていた。

セッション1 作品との出会いを簡単スムーズにするUIづくり

 たくさんあるコンテンツの中から、自分の好みに合う作品を見つけるには、精度の高い検索機能やおススメ機能が不可欠だ。そこでNETFLIXでは、よりユーザー一人ひとりの嗜好に合わせたレコメンド(おススメ)ができるように、マッチングシステムを常にバージョンアップしているという。説明してくれたのは、クリエイティブストラテジー部門のユージ―ニー・ヨウ ディレクターだ。

画像: セッション1 作品との出会いを簡単スムーズにするUIづくり

 NETFLIXのコンテンツには、作品ごとに写真のようなさまざまなタグが付けられており(人力だそう)、視聴を続けていくうちにこのタグが集積し、その比重が計算され、ユーザーの好みの分析精度が向上していくのだという。NETFLIXの冒頭の番組メニュー(UI)はコンテンツが横に並ぶ形となるが、ここに表示される番組に、並ぶ順番にその分析が反映している(していく)そうだ。

画像: 並びと順番のユーザーの好みが反映されている

並びと順番のユーザーの好みが反映されている

画像: 作品ごとにたくさんのタグが割り付けられており、これをベースに好みを分析していくそう

作品ごとにたくさんのタグが割り付けられており、これをベースに好みを分析していくそう

セッション2 配信データの軽量化とバッファリングの軽減

 インターネット環境を使う映像配信では、その時の通信状況(特に屋外での視聴時など)によって、再生のスムーズさが変わり、通信が安定しない場合などでは、最悪バッファーによって再生が止まってしまう(くるくる回るアレ)という事態も起きる。

 そうした再生時の不具合を解消するのが、動画データ容量(圧縮の度合い)と配信の仕組みだ。説明してくれたのは、エンジニアリング・マネージャーのテヤン・ファン氏。

画像1: セッション2 配信データの軽量化とバッファリングの軽減

 台湾出身で、アメリカの大学に通い、卒業研究でネットワーク環境の最適化を調査したという。2013年にNETFLIXに入社し、エンコーディングや配信の最適化を主に担当しているそう。

 ここで関わってくるのが、先述した映像圧縮のフォーマットやレートの設定、配信時には通信速度(ビットレート)に合わせた映像のスムーズな切り替えだ。

画像2: セッション2 配信データの軽量化とバッファリングの軽減

 NETFLIXではかつて、SD時代にはどの作品も同じビットレートで圧縮していたという。しかし、作品ごとに圧縮のしやすさ、しにくさがあることに気付き、2015年には作品ごとにビットレートを変える手法を導入した。さらに、現在ではシーンごとに「低」「中」「高画質」という3種類の圧縮を行ない、それを通信状況に合わせて、シームレスに切り替えることで、画質を保持しながら、バッファリングのない再生を可能にしているという。

画像: シーンごとにビットレートの異なるデータを用意しておく

シーンごとにビットレートの異なるデータを用意しておく

画像: 通信状況に合わせて、それらを適宜切り替えることで、バッファリングを低減させている

通信状況に合わせて、それらを適宜切り替えることで、バッファリングを低減させている

 結果、一定ビットレートだった頃は、通信容量1GBで約1.5時間の映像しか見られなかったが、現在ではそれが6.5時間(最大)まで拡大。これは、人気の「全裸監督」全8話分を見られる容量になるという。

画像: 2015年以後は、作品ごとにビットレートを変えていたという

2015年以後は、作品ごとにビットレートを変えていたという

画像3: セッション2 配信データの軽量化とバッファリングの軽減

 また、コンテンツを格納しておくコンテンツサーバーをどこに設置するのかも重要な項目となるそうで、NETFLIXでは視聴地に近い=その国に設置することで、遅延や輻輳(渋滞)の減少を図っているそうだ。

画像: 赤い箱がコンテンツサーバー。これ一つで100TB分のコンテンツが収納可能という。HDDタイプとフラッシュメモリータイプ(SSDか)があり、人気作(よく見られる)はフラッシュに記録しているそう

赤い箱がコンテンツサーバー。これ一つで100TB分のコンテンツが収納可能という。HDDタイプとフラッシュメモリータイプ(SSDか)があり、人気作(よく見られる)はフラッシュに記録しているそう

セッション3 NETFLIX対応機器の拡大状況について

 NETFLIXのユーザーは冒頭のグレッグ氏のコメントによれば約300万ということで、これを今後も増強していくためには、サービスとの出会いの場、あるいは対応機器を増やしていかないといけない。説明してくれたのはビジネス・デベロップメント部門の山本リチャードディレクターだ。

 先月発表された資料(統計)によれば、有料動画配信サービスの利用率が、ようやく、DVDやBDパッケージの購入率と並んだそうで、これを受けてNETFLIXでは、より一層のユーザー獲得を狙いたいそう。

 NETFLIXユーザーの動向を調べてみると、加入時はスマホやパソコンなどでコンテンツ視聴を行なっている層(時間)が多いものの、ある程度時間が経つとそれがテレビに移行してくるのだという。これは、グローバル、日本、どちらも似た傾向を示すそうで、それを受け、始めからテレビでの加入、視聴を促すような施策を強化していきたい、ということだ。

画像: 加入後、半年ほど経つと、テレビでの視聴「時間」が増える、という調査結果

加入後、半年ほど経つと、テレビでの視聴「時間」が増える、という調査結果

 その一つの方策が、先日のJ:COMとの提携発表になる。これには先例があるそうで、アメリカのCATV事業社と提携した際、当初はうまくいかないという反応も多かったそうだが、蓋を開けてみたら、見事CATVコンテンツとNETFLIX(OTT)コンテンツは共存できたそうで、それが先述の提携にもつながったそう。

画像: J:COMの新しいSTB「J:COM LINK」のメニュー画面。上部のタブに「NETFLIX」の項目が追加されている

J:COMの新しいSTB「J:COM LINK」のメニュー画面。上部のタブに「NETFLIX」の項目が追加されている

 TVでも、リモコンへの「NETFLIX」ボタンの搭載など、対応機器は順調に増えているが、一方で、ユーザーの間には、このボタンを押すと課金されるのではないかという不安が未だあるそうで、まずはそれを払拭していきたい、と語っていた。J:COM以外にも提携先を増やしていきたい、という。

セッション4 高画質・高音質でコンテンツをリビングへ届ける取り組みについて

 コンテンツを広く届けるためには、デバイスの拡大も必要だが、そのクォリティを担保することも必要になる。セッション3で紹介したように、(NETFLIXコンテンツの)TVでの視聴は増えてきており、同社ではNRDPというキットで機器の対応を確保する仕組みを取っているが、それを一歩進めて品質(画質)を保証するものとして「NETFLIX RECOMMENDED TV」を制定、日本ではソニーとパナソニックの製品が認証を受けている。さらに、クリエイターが意図する画質を再現する「NETFLIX画質モード」も創造している。

画像1: セッション4 高画質・高音質でコンテンツをリビングへ届ける取り組みについて

 ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツからは、小倉敏之 主幹技師が登壇。「テレビはコンテンツに先駆けて技術革新を進めていかないといけないと思っています。テレビが進化し、コンテンツが進化し、その相乗効果で、映像体験、感動をより引き上げることが重要と考えています」とコメント。マスターモニターを持つソニーらしく、「製作者が意図した映像・画質をそのまま届けられるよう、デバイス、駆動、プロセッサーといった各種要素技術をさらに進化させていきたい」と意欲を見せた。

画像2: セッション4 高画質・高音質でコンテンツをリビングへ届ける取り組みについて

 パナソニックからは次世代AVアライアンス担当部長の柏木吉一郎氏が登壇。PHLの活動・研究を通じて、あるいはハリウッドのクリエイターとの協業を通じて得た知古から、クリエイターは何を重要視しているのか、それを家庭にきちんと届けることを理念として、今後も開発を続けて行きたい」と語った。

セッション5 手描きアニメの4K&HDR化プロジェクト

 最後はアニメだ。アニメは日本発の重要なコンテンツであり、NETFLIXでは、プロダクションI.G.と提携して、世界初となる4K&HDRアニメの製作を進めている。監督・演出を担当する齋藤瑛(さいとう あきら)氏は、ハード・運用面での問題はほぼクリアできたとし、これまでの製作を通じて、「階調再現にしても、色数にしても、SDRだと諦めないといけないことが、HDRだと制限なく満足に使うことができて満足しています。表現の幅を大きく広げることができると実感しました」と喜びのコメント。「エンジンと翼を同時に手に入れることができたようで、新たな地平を目指して、飛び立っていきたい」と喜びのコメントをしていた。

画像: セッション5 手描きアニメの4K&HDR化プロジェクト

 最後に、Q&Aコーナーに登壇したピーターズ氏に8Kへの取り組みについて聞いてみたところ、「8Kを展開する予定はありません。現状は4Kの価値を高めるために、4K、HDR、ドルビーアトモス対応コンテンツの拡充を優先したい」とのことだった。

画像: 会場には東芝映像ソリューションの有機ELレグザも展示されていた

会場には東芝映像ソリューションの有機ELレグザも展示されていた

画像: こちらは壁掛けにて

こちらは壁掛けにて

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