薄型AVセンターの定番はマランツ。そんなイメージがすっかり定着しているところに、早くもニューモデルの登場だ。本機NR1710は、昨年発売のNR1609から全回路の基板パターンを見直し、細部に渡る音質関連部(部品)の全面ブラッシュアップを果たしているのが特徴。機能面では「ドルビーアトモス・ハイト・バーチャライザー」や、ブルートゥースヘッドホンへの直接接続機能が目新しい。ちなみにこの薄型AVセンターNRシリーズは、2015年以来毎年グレードアップ/マイナーチェンジが図られており、NR1609は昨年6月以降のAVセンター国内売上げでシェアトップを獲得しているという。

画像: AV CENTER MARANTZ NR1710

AV CENTER MARANTZ NR1710

ブラッシュアップの効果は顕著。ローエンドの厚みもしっかり描く

 NR1710のコンセプトは明確だ。「映画のためだけのアンプではない」というテーマのもと、かつてのリビングオーディオの役割がせいぜいテレビやDVDレコーダーのコントロールだったことに対し、今日ではテレビやBD/DVDに各種セットトップボックス、NASやゲーム、タブレットやスマートフォンなどが加わる。接続形式もHDMI、Wi-Fi、ブルートゥース、LANといった具合に多岐に渡る中で、AVセンターにはすべてを司るソリューションが求められており、それをスリムなデザインにまとめ、伝統のマランツ・サウンドで仕立て上げたというのが、このNR1710というわけである。

 先代からの音質改善部としては、まずDAC回路基板をその他のデジタルプロセッシング回路から独立配置して役割を特化させた(DACチップはAK4458VN)。そのデジタルプロセッシング回路は周辺部の電解コンデンサーを全面的に見直している。部品のレイアウトや信号経路も最適化するとともに、プリアンプ部は電子ボリュウムの出力抵抗を変更。パワーアンプ部はパワートランジスターや電解コンデンサーを新たに検討、新規採用している。それに伴なってプリ/パワーアンプ部、ネットワーク部の電源回路も見直された。

画像: ▲おおまかな構成は従来機から変わらないものの、DAC基板を専用にするなど細かな点をブラッシュアップ。中央右寄りのHEOS(ヒオス)モジュールでハイレゾ再生にも対応する

▲おおまかな構成は従来機から変わらないものの、DAC基板を専用にするなど細かな点をブラッシュアップ。中央右寄りのHEOS(ヒオス)モジュールでハイレゾ再生にも対応する

 注目の「ドルビーアトモス・ハイト・バーチャライザー」は、ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーが置かれていない設置環境でも、高さ方向から包み込まれるようなイマーシブ・サウンドを実現するもの。先行した「DTSバーチャルX」に対抗するドルビー版である。あいにくと試聴機は未対応であったが、製品発売の後日、ファームウェア・アップデートにて対応となる。

画像: ▲サラウンドバック用の端子は「スピーカー/スピーカー構成」設定でアサイン可能。オーバーヘッドスピーカー、あるいはバイアンプ用の端子としても設定できる

▲サラウンドバック用の端子は「スピーカー/スピーカー構成」設定でアサイン可能。オーバーヘッドスピーカー、あるいはバイアンプ用の端子としても設定できる

 UDP-LX800とのアナログ接続でのCDのステレオ再生では、S/Nが高く、ステレオイメージの再現が見通しよい。音場の立体感がしっかりと感じ取れ、声や楽器の質感がとてもナチュラルな印象であった。声には好ましい色艶や弾力感があり、アコースティック楽器にはそれぞれに適した瑞々しい響きと倍音も感じられた。また、先代モデルでオーケストラ曲を聴いた時に時折感じられたローエンドの厚み不足が本機にはないことも確認できた。グランカッサやティンパニを始め、低音部を受け持つ管や弦楽器が逞しく重厚に響いたことを付記したい。

 ドルビーアトモス再生ができる5.1.2のスピーカーセッティングで聴いたBD『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』のチャプター8では、演説前の室内の暗騒音に、万年筆のペン先の擦れる音やランプの音、秒針の音が混じり合い、閉塞感と緊張感がたまらないほど濃密。セリフの定位も克明で、ラジオから流れる演説の声の違い、効果音と音楽、空爆の音がくっきりとセパレーションしているのがわかる。地下壕から上がるエレベーターの音には、高さ方向の情報がしっかりと乗っており、ドルビーアトモス再生の醍醐味がはっきり感じ取れた。

画像: ▲内蔵アンプは7ch。5.1.2でのドルビーアトモス、DTS:X再生に対応する。サラウンドバック/オーバーヘッド用のスピーカー端子は共用となる

▲内蔵アンプは7ch。5.1.2でのドルビーアトモス、DTS:X再生に対応する。サラウンドバック/オーバーヘッド用のスピーカー端子は共用となる

 本機のもうひとつ注目すべきフィーチャーは、接続していないパワーアンプをフロントスピーカーのバイアンプ駆動用に振り分ける「バイアンプ」モードだ。メーカーがユーザーを調査したところ、昨年のNR1609では、「ステレオ」(2chシステム)または「ステレオ+センター」(3chシステム)という使い方が圧倒的に多く、2ch分以上のアンプが余っている状態だ。ならばその空いたパワーアンプをバイワイヤリング対応メインスピーカーのユーザーに有効活用してもらおうというもの。

 そのモードで駆動したB&W603のステレオ再生での印象は、駆動力が増したようになり、ローエンドのグリップが向上。キックドラムやベースのピッチ、存在感がいちだんと明瞭になった。こうした機能も、ぜひ積極的に使いたい。

AV CENTER MARANTZ NR1710
¥90,000+税

画像: 薄型AVセンターの定番はマランツ。2ch音楽再生用途にも推奨される MARANTZ NR1710

●定格出力:50W×7ch(8Ω、20Hz〜20kHz、THD0.08%)
●接続端子:HDMI入力8系統、HDMI出力1系統、アナログ音声入力3系統(RCA)、MMフォノ入力1系統、デジタル音声入力2系統(光、同軸)、USBタイプA 1系統、LAN 1系統 他
●寸法/質量:W440×H105×D378mm/8.4kg●カラリング:ブラック、シルバーゴールド(写真)
●問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオお客様相談センター 0570(666)112

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