前世代機から音質・機能面で大幅向上した最新プリメイン
1994年のCL310JETのデビュー以来数々の秀作を発表し、スピーカーメーカーとしてわが国で確固たる地位を築いてきたエラック(独)。オーナーだという本誌読者もきっと多いに違いない(かくいうワタクシも300ラインのオーナーです)。しかし、ここでご紹介するのはプリメインアンプ。2017年発売のEA101EQ-Gの後継機となるが、音質・機能両面で大幅なブラッシュアップが図られており、実際にテストしてその音のよさ、面白さに興奮した。では本機の概要を述べたのち、リスニング・インプレッションをお届けする。
横幅214㎜のルックスは前作EA101EQ-Gと変りはない。アンプの心臓部となる「BASHトラッキングアンプ」は最新タイプで、スイッチング電源(スイッチング周波数は400kHz)を搭載したAB級増幅回路で構成されており、80W+80W(8Ω)出力をギャランティしている。2系統のアナログ(RCA)入力と同軸/光のデジタル入力(192kHz/24ビット対応)を装備するほか、イーサネット(RJ45)端子が用意され、新たにネットワークオーディオ再生機能が設けられた。注目の音楽再生・管理ソフト「Roon(ルーン)レディ」仕様で、そのほかスポティファイやTIDAL(タイダル)などのストリーミングサービス、DLNA、AirPlayに対応している。
本機にはスピーカー出力のほかアクティブサブウーファー用出力端子が用意されており、ステレオスピーカー+サブウーファーの2.1ch再生が可能となるが、その使用法を想定した機能として興味深いのが、EA101EQ-Gから継続して採用された「ABCテクノロジー」の〈オートブレンド〉機能。ブルートゥースアプリをインストールした携帯端末のマイクを用いて室内音響特性を計測、スピーカーとサブウーファーのレベルと位相を最適化するとともに、部屋固有の定在波の影響によって生じる200Hz以下のピーク成分を効果的に除去するというものだ。
ネットワークオーディオ再生機能とともに、前モデルにはなかった新機能として興味深いのが、ドルビーデジタル・デコーダーの搭載。BDプレーヤー/レコーダーやテレビのデジタル(同軸・光)音声出力を本機につなげば、サラウンド音声収録作品を2.1ch再生で楽しむことができるわけだ。サラウンドスピーカーの取り付けは難しいけれど、サウンドバーはイヤ。ステレオフォニックな広がりが得られるいい音で映画を観たいという向きにぴったりの機能と言えるだろう。
力感溢れるハイレゾサウンドストリーミング再生も快適
ここではスピーカーにエラックVELA BS403、サブウーファーに同SUB2070を用いて音質をチェックした。まず愛聴ハイレゾファイルを収めたUSBメモリーを挿したパイオニアUDP-LX800と本機をアナログ接続、BS403を鳴らしてみたが、中低域から中域にかけて厚みのある力感溢れるサウンドが聴けた。本機は先述したように多彩な機能満載のアンプだが、音質だけを評価してもこの価格帯の中で1、2を争う実力を有しているのではないかと思う。とくにチェロや男声ヴォーカルの艶やかな音色は本機ならではの魅力。LX800と本機を同軸デジタル接続した音も聴いてみたが、アナログ接続に比べるとやや腰高な帯域バランス。しかしアナログ接続以上に音離れがよく、ステレオイメージが向上する印象だ。
「Roon」アプリをインストールした携帯端末を用いて(RoonサーバーはMacBookAir)、ストリーミングサービスのTIDALにアクセスしてみたが、聴きたい音楽ファイルを何の問題もなくスムーズに聴くことができた。本機で聴くCDクォリティのTIDALのサウンドはとてもすばらしく、4000万曲をはるかに超える圧倒的なアーカイヴをこの音で楽しめるのは音楽ファンにとって最高の愉悦だが、いつまで経ってもわが国での正式サービスが始まらないのが残念でならない(日本のSMEが発表したハイレゾ・ストリーミングサービス〈mora qualitas〉も遅れていて今秋スタートとのことだが、はて?)。また、オーディオ専用NASのフィダータHFAS1-S10に収めた音楽ファイルは、DLNA対応の「fidata Music App」を用いて操作したが、これまたスムーズに再生音が楽しめたことを付記しておく。
絶妙な2.1ch再生。SW追加が全帯域に効く
次にサブウーファーのSUB2070を接続し(Rchスピーカーの内側に設置)、本機「ABCテクノロジー」の〈オートブレンド〉機能を活かした2.1ch再生を試してみよう。「DS-A101-G」アプリをインストールした携帯端末で、まず使用スピーカーのタイプを「ラージ/ミディアム/スモール」から選ぶ。BS403を用いたここでは「ミディアム」を選んだが、この場合はサブウーファーとのクロスオーバー周波数は90Hzとなる(ラージ/スモールはそれぞれ40Hz/140Hz)。次に携帯端末をBS403とSUB2070に順に近づけ、テストトーンを発生させて、ルームアコースティック込みのそれぞれの低域の伝送特性を計測した。この作業を経てBS403とSUB2070がもっとも自然につながるポイント(レベルと位相)を探し出してくれるわけだ。
強烈な大太鼓の響きが収録されたリズ・ライトの「バーレイ」(96kHz/24ビット/FLAC)やダブルベースを弾きながら歌うノルウェーのスタイナー・ラクネスの「ソング・フォー・ユー」(44.1kHz/16ビット/FLAC、TIDAL音源)で試してみたが、その効果は絶品だった。2ch再生に比べて低域端が伸びることで音楽のスケール感が大きくなり、聴き応えが増すのである。しかもそのレベル設定が絶妙で、いかにもサブウーファーが鳴ってますという印象にならないのだ。またサブウーファーが加わることで、中域から高域にかけて音がいっそうなめらかに感じられるのも興味深い。
専用アプリ「DS-A101-G」に注目
サラウンドスピーカーはなくとも感動のAV体験が充分に得られる
この勢いのままドルビーデジタル・デコーダーを用いた2.1ch映画再生を試す。パイオニアのUDP-LX800の同軸デジタル出力を本機につなぎ、UHDブルーレイ『アリー/スター誕生』『グリーンブック』(米国盤)を再生する(両ソフトともにドルビーアトモス音声を選ぶと、同軸デジタル端子からはロッシーの5.1chドルビーデジタル信号が出力される)。
『アリー〜』のステージ・シーンなどサブウーファーが加わることでスケール感が増し、組み合せた55型有機ELテレビが小さく感じられるほど。サラウンドスピーカーを設置しなくとも聴衆の歓声や拍手は両耳の延長線上まで広がり、その迫力は相当なものだ。スピーカーが優秀だからこそではあるが、生気みなぎる声の張り出しも好ましいし、画面に映し出されたガガちゃんの口から声が発せられる強固なイメージが得られるのもうれしい。
「AVでもっとも重要なのは、画面上の人物がほんとうにしゃべっている、歌っているイメージが得られるかどうかである」とぼくは本誌上で何度も書いているが、改めてそんなことを確信させられたテストだった。
● 4K有機ELテレビ:LG OLED55C9PJA
● UHDブルーレイプレーヤー:パイオニアUDP-LX800
● プリメインアンプ:エラックDS-A101-G
● スピーカーシステム:エラックVELA BS403
● サブウーファー:エラックSUB2070
ELAC DS-A101-G
¥138,000+税
●出力:80W×2(8Ω)
●接続端子:アナログ音声入力2系統(RCA)、デジタル音声入力2系統(光、同軸)、プリアウト1系統(RCA)、サブウーファー出力1系統、LAN1系統 他
●寸法/質量:W214×H60×D313mm/2.8kg
●問合せ先:㈱ユキム ☎03(5743)6202