北欧スウェーデンのプライマーから、CDプレーヤーのCD15 PRISMAとプリメインアンプI15 PRISMAが発売された。モデル名にある「PRISMA」は、同社が開発したネットワークプレーヤー機能を指し、専用アプリによるスムーズな操作性でハイレゾファイルやストリーミングなど、今日求められるデジタルファイル再生を幅広くフォローする。ここでは両モデルの概要を整理するとともに、両モデル組み合わせた試聴インプレッションをお届けしたい。

伊藤隆剛

画像1: 洗練されたデザインと機能性を併せ持つ小さな巨人。
プライマーより注目の「15シリーズ」が登場


INTEGRATED AMPLIFIER
PRIMARE
I15 PRISMA
¥250,000+税

●最大出力:100W×2(4Ω)、60W×2(8Ω)●接続端子:アナログ音声入力1系統(RCA)、デジタル音声入力6系統(光×3、同軸、3.5mmミニプラグ同軸、USBタイプB)、アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声出力1系統(同軸)、USBタイプA 1系統、LAN 1系統 他●カラリング:ブラック(写真)、チタン●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜768kHz/32ビット(PCM)、〜11.2MHz/1ビット(DSD)●寸法/質量:W350×H73×D329mm/6.4kg

画像2: 洗練されたデザインと機能性を併せ持つ小さな巨人。
プライマーより注目の「15シリーズ」が登場

CD PLAYER
PRIMARE
CD15 PRISMA
¥250,000+税

●再生可能ディスク:CD●接続端子:アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声出力2系統(光、同軸)、USBタイプA 1系統、LAN 1系統 他●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜192kHz/24ビット(PCM)、〜5.6MHz/1ビット(DSD)●カラリング:ブラック(写真)、チタン●寸法/質量:W350×H73×D329mm/6.6kg

 

洗練された機能とサウンド

 「洗練されたスカンジナビアン・デザインが……」みたいなことは軽々しく言いたくないけれど、一般的なフルサイズコンポのおよそ3分の2サイズにまとめられた外観の無駄のなさと質感の高さ、専用アプリ「Primare PRISMA」のストレスフリーな操作性は、まさに洗練の極み。プライマーの新ラインナップ「15シリーズ」として登場したCDプレーヤーのCD15PRISMAとプリメインアンプのI15PRISMA(アナログ入力専用モデルI15ANALOGもあり。別掲コラム参照)を実際に見て、触れてみると、やはりコミュニケーションツールとしてのデザインが進歩したスウェーデンの国柄を感じないではいられない。

 まずはCD15PRISMA/I15PRISMAのどちらにも搭載されている「PRISMA」(プリズマ)について触れておきたい。本シリーズを特徴づけるこのネットワークプレーヤー機能は、先述の専用アプリを使って、NASやUSBメモリーに格納された音源やストリーミング音源(PCMは192k㎐/24ビット、DSDは5.6M㎐まで)の再生のほか、対応機器のマルチルーム機能、検索機能、プレイリスト作成/キュー再生機能、入力切替えなどができるというもの。操作は、アプリをインストールしたiPadもしくは7インチ以上のAndroidタブレットで行なう。スマホでの操作には対応していないが、Chromecastビルトイン/Spotifyコネクト/AirPlayに対応しているので、各種スマホアプリを使ったストリーミング音源の再生は可能だ。また、DACチップも両モデル共通で、旭化成エレクトロニクス社のAK4490EQをステレオ配置している。

 次に各モデルの概要だが、CD15PRISMAはディスクドライブにフィリップス社のスロットイン・メカニズムを採用。タフな使用を想定した耐久性の高いプロ機器用ということで動作に安定感があり、レスポンスも素早い(SACDの再生は非対応)。固定可能なボリュウム調整機能の搭載も、コンポーネントとしての組合せの幅を広げる嬉しい計らいだ。

 I15PRISMAは、クラスDアンプのHypex UCD102モジュールを採用。こちらはUSB DAC機能も搭載し、768k㎐/32ビットまでのPCMと11.2M㎐までのDSDの再生に対応している。

画像: I15 PRISMA ↑アナログ/デジタルの音声入出力端子がズラリと並んだプリメインアンプI15 PRISMAの背面。LANやUSBタイプA端子を使ったネットワークプレーヤー機能(192kHz/24ビット/PCM、5.6MHz/DSDまで対応)のほか、USBタイプB端子を使ったUSB DAC機能(768kHz/32ビット/PCM、11.2MHz/DSDまで対応)を有する

I15 PRISMA
↑アナログ/デジタルの音声入出力端子がズラリと並んだプリメインアンプI15 PRISMAの背面。LANやUSBタイプA端子を使ったネットワークプレーヤー機能(192kHz/24ビット/PCM、5.6MHz/DSDまで対応)のほか、USBタイプB端子を使ったUSB DAC機能(768kHz/32ビット/PCM、11.2MHz/DSDまで対応)を有する

画像: CD15 PRISMA  ↑必要最小限の端子に絞ったCD15 PRISMAの背面。I15 PRISMAと同様に、ネットワークならびにUSBメモリー再生では、192kHz/24ビット/PCM、5.6MHz/DSDまでのハイレゾ音源をフォローする。また脚部がフロント側2点、リア側1点の3点支持となることもシリーズ共通の特徴で、素材はアルミにゴムを組み合わせたものとなる

CD15 PRISMA

↑必要最小限の端子に絞ったCD15 PRISMAの背面。I15 PRISMAと同様に、ネットワークならびにUSBメモリー再生では、192kHz/24ビット/PCM、5.6MHz/DSDまでのハイレゾ音源をフォローする。また脚部がフロント側2点、リア側1点の3点支持となることもシリーズ共通の特徴で、素材はアルミにゴムを組み合わせたものとなる

解像感に優れる濃密な音場。特に中低域の再現性が高い

 というわけで、試聴はHiVi視聴室のリファレンススピーカーであるモニターオーディオPL300Ⅱと両モデルを組み合わせて行なった。本来ならCD15PRISMAにはデジタル系の機能を省略したアナログ専用モデル、I15ANALOGをあてがうのが望ましいところだが、今回は試聴機のスケジュールの兼ね合いからI15PRISMAとのペアリングで聴いた。

 最初にCD15PRISMAとI15PRISMAのアナログ接続でステレオサウンド社リリースのSACDハイブリッド盤、ナット・キング・コール『恋こそはすべて』から「スターダスト(ステレオ)」を聴いた。ゴードン・ジェンキンスによるドリーミーなストリングスアレンジが、誇張のない実直な音像で浮かび上がる。ぱっと聴いた印象ではややドライに感じるが、聴き込むほどにヴォーカルは喉の湿り気やブレスのニュアンスまでていねいに描き出しているし、ストリングスの内声の再現も緻密であることがわかる。接続を同軸デジタルに替えて同じ曲を聴いてみると、ヴォーカルの温度感がややクールになるものの、音場の見通しがよくなり、歌い手の実在感がよりくっきりとした音像として現れる。間奏で駆け上がっていく高音弦の音色も耳あたりがいい。

 次にCD15PRISMAの「Primare PRISMA」アプリによるストリーミング再生と、Spotifyコネクトを使ったスマホアプリによるストリーミング再生で、同じコーネリアス「Audio Check Music」を聴き比べてみた。前者はDeezerHi Fiのロスレス再生、後者はSpotifyのロッシー再生ということになるが、キックドラムの解像感や音場の透明感にロスレスの優位性をはっきりと聴き取ることができる。とはいえSpotifyの再生も悪いわけではなく、BGM的に聴き流すようなシチュエーションではSpotifyコネクトの便利さも手伝って大いに使えると思う。

 ここでCD15PRISMAは取り外し、I15PRISMAと手持ちのMacBookAirを接続。I15PRISMAのUSB DACとしてのパフォーマンスを聴いた。オーディルヴァーナ・プラス3で再生したポール・サイモン「LOVE」(96k㎐/24ビット/FLAC)では、中低音弦の響きを活かしたビル・フリゼールらしいギターの音色が豊かな光沢感で再現される。ともすればリヴァーブ感の誇張された弛緩傾向の鳴り方になる曲だが、鮮度の高いヴォーカルが前面にピタッとフィックスすることでニュートラルなバランス感を保っている。ルーマー「Soulsville」(88.1k㎐/24ビット/FLAC)では、太いベースラインを高い解像感でニュアンスたっぷりに再現しながら、ヴォーカルもその低域にマスキングされることなく、前面で艶っぽく存在感を示している。キュッと引き締まった弾力性豊かな低域と、ヴォーカルを中心とした中域の確かな再現力がシリーズを通しての魅力と言えそうだ。

使い方はさまざま。頼りがいのある司令塔になる

 たとえばCD15PRISMAは、手頃なサイズのアクティブスピーカーを用意すれば、CDからハイレゾ、ストリーミングまでをまんべんなく楽しめるミニマム&コンパクトなシステムを組むことができる。すでにお気に入りのパワーアンプがあるなら、プリアンプ/CDプレーヤー/ネットワークプレーヤーとして利用することも可能だし、先にも触れたアナログ専用モデルのI15ANALOGならMMフォノ出力も装備するので、同ブランド&同シリーズならではの相性のよさ、使い勝手のよさを享受できるに違いない。

 CDはもう聴かないけどハイレゾは最新スペックまでがっつり聴きたいという人なら、I15PRISMAを導入してUSB DAC付きプリメインアンプとして使い、PCやネットワークトランスポートなどと組み合わせるのが一般的だろう。もちろんプリメインアンプとしても、今回のPL300Ⅱのような3ウェイスピーカーを難なく鳴らすだけのポテンシャルを持ち合わせている。

 また、今回は諸事情により試すことができなかったが、15シリーズはNAS接続時にこそ快適な操作性を最大限に発揮するという。ここまでのインプレッションだけでは、本シリーズの真の価値をまだまだ説明し尽くせていないようだ。見目麗しく頼りがいのある司令塔として、リプレイスやセカンドシステムとしてだけではなく、個人的にはポータブルオーディオからのステップアップを目論んでいる人にも注目してほしいシリーズだと感じた。

画像: ↑精巧に造り込まれたI15 PRISMAの内部の様子。Hypex社の特別仕様のアンプモジュールを採用。電源はディスクリート構成とし、急激な変化に対しても安定した電源を提供する。またDAC部には旭化成エレクトロニクス社の高性能32ビット2ch素子、AK4490EQを搭載する

↑精巧に造り込まれたI15 PRISMAの内部の様子。Hypex社の特別仕様のアンプモジュールを採用。電源はディスクリート構成とし、急激な変化に対しても安定した電源を提供する。またDAC部には旭化成エレクトロニクス社の高性能32ビット2ch素子、AK4490EQを搭載する

←リモコンはシリーズ共通設計。中央の十字キーの下に「AMP/AV」「CD/BD」「PRE/AUX」の切替えボタンを備え、これひとつでI15 PRISMA、CD15 PRISMA、I15 ANALOG(後述)の3台を操作することができる

←I15 PRISMAとCD15 PRISMAが対応するプライマー独自アプリ「Primare PRISMA」のメイン画面。各種入力切替えや本体のセッティング変更、音量調整などがレスポンスよく操作できる。取材時は英語表記だったが、近いうちに日本語対応が図られるそうだ


←USBメモリー内のハイレゾ音源を再生してみた。曲名やファイル形式が確認できる。また、NASを接続するとサンプリング周波数やビット数も表示される模様だ

←PRISMAシリーズはChromecast built-inを搭載しており、SpotiryやDeezer(写真)、TIDAL、Qobuz、Google Play Musicなど多彩な音楽ストリーミングサービスも楽しむことができる(再生するには別途契約が必要)

←写真のようにスマホからの連携も可能。I15 PRISMA、CD15 PRISMAともに問題なくSpotify Connectのコンテンツが再生できた

アナログ入力専用のプリメインアンプ 「I15ANALOG」

 15シリーズとしてラインナップされるもうひとつのモデル、I15 ANALOGは、I15 PRISMAからPRISMA機能とDAC機能を省略し、その代わりにフォノ入力(MM)を含む5系統のアナログ入力を装備する純プリメインアンプ(I15 PRISMAのアナログ入力は1系統)。CD15 PRISMAとI15 PRISMAを組み合わせた場合、両モデルが搭載するPRISMA機能がカブってしまうが、I15 ANALOGであれば機能をもてあますことなく、それぞれのパフォーマンスを十全に発揮させることができる。今回はこの組合せでの試聴は叶わなかったが、CD15 PRISMAが気になっている方は併せて注目いただきたいモデルだ。

画像: 使い方はさまざま。頼りがいのある司令塔になる

ANALOG INTEGRATED AMPLIFIER
PRIMARE
I15 ANALOG
¥200,000+税
●最大出力:100W×2(4Ω)、60W×2(8Ω)●接続端子:アナログ音声入力4系統(RCA)、MMフォノ1系統(RCA)、アナログ音声出力2系統(RCA) 他●カラリング:ブラック、チタン(写真)●寸法/質量:W350×H73×D329mm/6.5kg

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