音質、設置性、拡張性。すべてに妥協しない

5.1ch再生の実現にあたって、問題になりがちなのがスペースの確保。スピーカーの置き場所という意味でも、アンプの置き場所という意味でも、日本の住環境で難儀であるのは間違いない。しかし、そうした環境だからこそ、スペースファクターにも、音質にも妥協のない製品が生まれるのかもしれない。マランツNR1710はまさにそうした志向のAVセンターだ。

 

ソフト面でもハード面でも最新鋭の装備を取り揃える

 AVセンター(アンプ)というと、多くの人は背が高く奥行が長い大型サイズを連想するだろう。しかし、今、それとは真逆の薄型でコンパクトなモデルが人気を集めている。その代表格がマランツのNR1710だ。高さは105mmとコンパクトで、ローボードタイプの薄型テレビ用AVラックにも収まるサイズとなっている。それでいて、機能的にはWi-Fi内蔵で各種の音楽配信サービスなどにも幅広く対応、スマホの音楽を手軽に楽しめるBluetoothにも対応し、さまざまなメディアをまとめてコントロールできる。もちろん7chパワーアンプ内蔵でドルビーアトモスやDTS:Xなどの最新音響規格にも対応するなど、サラウンド再生の機能も最新鋭だ。

 これに加えて、初心者は混乱しがちなスピーカー配線や初期設定が実にわかりやすくなっているのも特徴だ。バナナプラグ対応のスピーカー端子は音質的な意味でも信頼性が高いし、太めのケーブルでもしっかりと接続でき、使い勝手がいい。しかも、スピーカー出力ごとに色分けで表示され、ケーブルに付けられる色分け表示のラベルも付属しており、配線間違いを減らす工夫がいっぱいだ。そして、初期設定のためのガイド画面も、イラストを多用してわかりやすくなっており、手順に従って進めるだけで基本的なセットアップが簡単に行なえるようにできている。

 また、手軽に使える薄型モデルは音の実力や装備面で物足りないのではないか、と不安に感じる人も少なくないだろう。しかし、NR1710でそうした心配はいらない。先述の通り、7chのスピーカー出力はすべてバナナプラグ対応の本格的な端子。見るからにしっかりとした作りとなっていることがすぐにわかる。持ち上げてみると、シャーシの作りもしっかりとしており、充分な剛性を持っている。コンパクトなシャーシは、音質を大きく左右する剛性という観点でも実は有利な面もあるのだ。

 いっぽう、大きさの面で制限されがちな回路設計についてはどうか。こちらも妥協することなく、常に更新を図っている。従来モデルと比較すると、まずは音質を大きく左右するDAC回路をデジタル信号基板から独立させ、相互干渉を低減。パワーアンプでは、回路設計を見直し、パワーアンプ帰還回路の電解コンデンサーをグレードアップ。プリアンプでは電子ボリュウムの出力抵抗を改善するなど、さらに音質を磨き上げている。このほかも、電源部の改善や強化を施し、より豊かな音楽の表現力を獲得しているという。

 

機能を満載した濃密な筐体

画像: 豊富なHDMI入力や7ch分のスピーカーターミナルなど、充実した端子類。フロントL/Rch用のプリアウトがあることも拡張性を担保する注目すべき特徴だ。ここにフロントL/R用のアンプを接続して、音質の強化を図れる

豊富なHDMI入力や7ch分のスピーカーターミナルなど、充実した端子類。フロントL/Rch用のプリアウトがあることも拡張性を担保する注目すべき特徴だ。ここにフロントL/R用のアンプを接続して、音質の強化を図れる

画像: 昨今のAVセンターのトレンドのひとつ、ハイレゾ再生にももれなく対応。写真の基板は、独自ソリューション「HEOS」(ヒオス)のモジュール。これによって、ハイレゾ対応のネットワークオーディオプレーヤーとしても使用できる

昨今のAVセンターのトレンドのひとつ、ハイレゾ再生にももれなく対応。写真の基板は、独自ソリューション「HEOS」(ヒオス)のモジュール。これによって、ハイレゾ対応のネットワークオーディオプレーヤーとしても使用できる

 

反応のよさが活きた見事な砲撃音の応酬!

 さて、本格的なサラウンド再生に挑戦しようという人は、低音のパワフルな再生を期待していると思う。その場合、たとえば10万円以上の高級AVセンターの方がスピーカーの駆動力、つまり音質的には有利だろう。しかし、どうしてもサイズは大きくなりがちで、使いにくいところはある。では、コンパクトなサイズながらもアンプとしての性能にもこだわったNR1710はどうか?ここでは劇場版最新作が絶賛公開中、『ガールズ&パンツァー』の既発ブルーレイを使ってその実力を確かめていこう。

 スピーカーにはダリのOBERON1をフロントL/RとサラウンドL/Rに、OBERON/VOKALをセンタースピーカーに、そしてサブウーファーのSUB E9Fを使う。2ウェイのコンパクトなスピーカーを中心とした、5.1chスピーカー構成で、一般的なサイズのリビング空間にマッチすると見込んでの起用だ。スピーカーが小さいため、設置がしやすいことも魅力。壁掛け用の取り付け穴を備えており、比較的手軽な工事で壁掛け設置も可能だ。

画像: リファレンススピーカー DALI(左から) OBERON1(¥57,000 ペア/+税) OBERON/VOKAL(¥54,000+税) SUB E9F(¥67,000+税)

リファレンススピーカー DALI(左から)
OBERON1(¥57,000 ペア/+税) OBERON/VOKAL(¥54,000+税) SUB E9F(¥67,000+税)

 さっそく、『最終章』第1話の戦車戦のシーンを見た。木製の橋の上で包囲された大洗女子学園チームが、飛び交う砲撃の中で奮闘する場面だ。このシステムで聴く低音はなかなかのもの。戦車戦の砲撃音は身体に響くような重量感たっぷりの低音が重要と思いがちだが、『ガルパン』では、低音を含むあらゆる帯域での出音の勢いのよさが肝心だ。たくさんの砲撃音が重なってもキャラクターの声が埋もれずきちんと聴こえるように、大音量が連続して耳がマヒしないように、音を出すタイミングを緻密にコントロールしてミキシングされている。それだけに反応の鈍いスピーカーでは音量は出ても音が重なって聴きづらくなりがちだ。

 NR1710とOBERON1の組合せは、そんな緻密な音のタイミングをしっかりと正しく再生してくれる。そのため、キャラクターの声はもちろん、橋が破壊されるときの些細な音まで埋もれず、じつにクリアー。低音自体もかなりがんばっていて、量感こそややタイトだが、それなりに低い帯域までしっかりと出ていると感じる。コンパクトなシステムながらも音がよく弾み、小気味よいリズムを楽しむかのように砲撃音の応酬が楽しめた。

 それ以上に感心したのが、音場感のスケールの広さ。中高域の再現性が素直なため、遠くの砲声の響きが余韻を持って描写される。さらに、フロントとサラウンドスピーカーを同一製品で揃えたため、チャンネル間のつながりが良好で空間が自然に広がるのだ。また、緻密な空間再現やキャラクターの声の描き分けの的確さなど、比較的音量を抑えて再生した場合でも、『ガルパン』のよさがしっかりと味わえた。これは、NR1710の基本的な実力の高さがよく表れた部分と言えるだろう。

 

まずは2.1chでもOK 本格的な再生も楽しめる

 ここで、センタースピーカーを外し、OBERON1を4本の4.1ch再生も試してみよう。センタースピーカーを使わない、いわゆる“ファントムセンター”の再生となり、この場合、センターchの音はフロントL/Rスピーカーに振り分けられ、場合によってはセリフの実体感がやや不足する。しかし、一人で視聴する場合、かつスピーカーと視聴位置の距離が2m以下となるようなスペースならばほとんど差はないだろう。5.1ch配置でスピーカーからの距離が近いと、画面の“下に置いた”センタースピーカーからセリフが聴こえる不自然さがあるので、それを解消できるメリットもある。10畳以下の一般的なリビングならば、4.1ch構成はおすすめだ。

 今度はさらにスピーカーを減らして、フロントスピーカーとサブウーファーだけの2.1ch再生も試してみた。いきなりたくさんのスピーカーを揃えるのはコスト的に難しい場合もあるだろう。そうした場合にはここから始めることも検討してほしい。後方の音がなくなってしまう寂しさはあるが、中高域の情報量が豊かなので、意外としっかりと楽しめる。たくさんのキャラクターの声が鮮明かつきちんと描き分けができているのが大きなポイントだろう。

 この2.1ch再生では、バーチャルサラウンドの「DTS Virtual:X」モード再生も試してみる。サラウンドスピーカーを擬似的に再現しようとするこの効果はかなりのもので、視聴位置の真横からやや後ろくらいまでは音が回り込むようだ。5.1ch再生に比べると、人工的なサラウンド感に思えるところはあるが、後方の音がそれらしく感じられるので、サラウンド再生の雰囲気を試してみるにはちょうどいいと思う。

 

画像: 内部を開けて見ると、ヒートシンクに7ch分のディスクリートアンプ(ICのような集積回路ではなく、単体素子の組合せでつくられた回路)が取り付けられている。こうしたアンプとしてのこだわりから、マランツのNRシリーズは2chシステムのアンプとして使われる例も多いのだという

内部を開けて見ると、ヒートシンクに7ch分のディスクリートアンプ(ICのような集積回路ではなく、単体素子の組合せでつくられた回路)が取り付けられている。こうしたアンプとしてのこだわりから、マランツのNRシリーズは2chシステムのアンプとして使われる例も多いのだという

 NR1710にはこうした2ch構成でもサラウンドを楽しめる機能のほかに、「Dolby Atmos Height Virtualizer」にもアップデートで対応予定だ。こちらはさらに、天井などに取り付けるオーバーヘッドスピーカーを擬似的に再現するもの。これらを使って、まずは2.1chシステムからスタートするのもいいだろう。

 実際にオーバーヘッドスピーカーを1組追加した2.1.2構成に挑戦するのもおすすめだ。この場合、フロントスピーカーの上方にスピーカーをもう1組設置するもので、ドルビーアトモスやDTS:Xの再生にも対応でき、後方のスピーカーなしでもかなり良好なサラウンド再生が実現する。

 NR1710は、コンパクトなサイズで使いやすく、2.1chの最小単位の構成からでもサラウンド再生を楽しめる。それは、ステレオ再生でもしっかりとした音を出せる実力の高さがあるからだ。リビングなどでも使いやすい省スペース性と肝心な音のよさがしっかりと両立できていることがよくわかった。こんなAVセンターはマランツならでは。ぜひともこの1台で、カジュアルでも本格的なサラウンドを楽しんでほしい。

 

「5.1」にこだわらず、「2.1」や「4.1」chでも楽しめる!

 5.1chシステムとは、L/C/R/RS/LSの各chに、LFE(0.1ch)用のサブウーファーを加えたもの。しかし、この6本のスピーカーすべてを揃えなくとも、サラウンドは成立する。ここで提案したいのは、センタースピーカーのない4.1chやサラウンドスピーカーのない2.1chシステム。低コストであったとしても、『ガルパン』をより楽しむためのサラウンドは始められるのだ。

5.1ch設定

画像: 「スピーカー/スピーカー構成」の設定から、サラウンドシステムを選択する。こちらがスタンダードな5.1ch構成

「スピーカー/スピーカー構成」の設定から、サラウンドシステムを選択する。こちらがスタンダードな5.1ch構成

4.1ch設定

画像: センタースピーカーのない4.1ch構成。この場合、センターchの成分はフロントL/Rスピーカーに割り振られる

センタースピーカーのない4.1ch構成。この場合、センターchの成分はフロントL/Rスピーカーに割り振られる

2.1ch設定

画像: 『ガルパン』を本気で楽しむならば、サブウーファーの存在は無視できない。最小ユニットとしては2.1chが現実的

『ガルパン』を本気で楽しむならば、サブウーファーの存在は無視できない。最小ユニットとしては2.1chが現実的

2.1.2ch設定

画像: どうしても部屋の後ろにスピーカーを置けない、という方はフロントハイトスピーカーを設置する「2.1.2」構成を試すのもいいだろう。フロントスピーカー後方に高めの棚を置き、そこにスピーカーを置くなど、賃貸物件住まいでも方法はある

どうしても部屋の後ろにスピーカーを置けない、という方はフロントハイトスピーカーを設置する「2.1.2」構成を試すのもいいだろう。フロントスピーカー後方に高めの棚を置き、そこにスピーカーを置くなど、賃貸物件住まいでも方法はある

3.1ch設定

画像: センターchには主に人の声という重要成分が割り当てられるため、3.1chという構成もありうる。ただし、イラストのようにセンタースピーカーは画面の下に置かれがち。メリットもデメリットもあるので、すでにセンタースピーカーを使っている方も有り/無しを切り替えてみていただきたい

センターchには主に人の声という重要成分が割り当てられるため、3.1chという構成もありうる。ただし、イラストのようにセンタースピーカーは画面の下に置かれがち。メリットもデメリットもあるので、すでにセンタースピーカーを使っている方も有り/無しを切り替えてみていただきたい

AVセンター マランツ NR1710

画像: 「スリムデザイン」を志向しながら、スペックで妥協を感じさせる部分はない。ドルビーアトモスなど、最新音声フォーマットにも対応している

「スリムデザイン」を志向しながら、スペックで妥協を感じさせる部分はない。ドルビーアトモスなど、最新音声フォーマットにも対応している

価格¥90,000+税
Dolby Atmos/DTS:X
内蔵パワーアンプ数7
定格出力50W
HDMI入力8
HDMI出力1
寸法W440×H105×D378mm
質量8.4kg
caption

●問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオ
お客様相談センター TEL 0570(666)112

>> AVセンター マランツ NR1710 ホームページ

 

This article is a sponsored article by
''.