アンフィオンは1998年創業の、フィンランドのスピーカー専業メーカーである。日本のAVファンには馴染みは薄いかもしれないが、しかし個性豊かなシリーズやモデル群を擁す。2013年にはいわゆるスタジオモニター、プロフェッショナル向け製品の展開も開始して新興の勢いを加速させた。まさに注目の北欧ブランドだ。その陣容から、中核のArgon(アルゴン)シリーズより、まさに中核と言うべき2モデルを紹介したい。

画像: 【左】Argon3S/¥314,000(ペア)+税 【右】Argon3LS/¥458,000(ペア)+税

【左】Argon3S/¥314,000(ペア)+税 【右】Argon3LS/¥458,000(ペア)+税


【左】Argon3S/¥314,000(ペア)+税
  ●型式:2ウェイ2スピーカー・パッシブラジエーター型
  ●使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、180mmコーン型ウーファー
  ●クロスオーバー周波数:1.6kHz
  ●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m
  ●寸法/質量:W191×H380×D305mm/12kg
  ●備考:ウォールナット色は¥342,000(ペア)+税

【右】Argon3LS/¥458,000(ペア)+税
  ●型式:2ウェイ2スピーカー・パッシブラジエーター型
  ●使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、180mmコーン型ウーファー
  ●クロスオーバー周波数:1.6kHz
  ●出力音圧レベル:85dB/2.83V/m
  ●寸法/質量:W191×H968×D305mm/22kg
  ●備考:ウォールナット色は¥502,000(ペア)+税

小型の3Sでも量感豊か、
3LSはさらなる余裕を見せる

 Argon3Sはブックシェルフ型、Argon3LSはトールボーイのフロア型で、ユニット構成は共に6.5インチ径アルミ振動板ウーファーと1インチ径チタンドームトゥイーターによる1.6kHzクロスの2ウェイを成す。そしてリアバッフルにはボトムエンドの性能向上を図るパッシブラジエーターを積む、3ユニット2ウェイの兄弟機である。

 搭載ドライバーは、世界有数のユニットメーカーであるノルウェーのSEAS社製を使いこなす。兄弟の容姿性格を決定するエンクロージャーは特段に凝ったところを見せない黒塗装の箱に見える。しかしウーファーとほぼ同径の人造大理石コーリアンによるトゥイーター周辺のウェーブガイドが視覚に鮮烈だ。この手の技法、世を見わたせば例がないわけではないが、円形ホーンのような滑らかな曲線の仕上げはやはり、独特の味わいだ。これを核にしたユニットの使いこなしは本兄弟のアイコンと言ってもいい技術であり意匠である。

 ウェーブガイドは、カタログには「再生音の効率と指向性をコントロール」とある。トゥイーターとしての低域限界も拡張できるようで、クロスオーバー周波数は前記のとおり、ダイヤフラム径1インチの小径ながら1・6kHzの低さを誇っている。

画像: ←トゥイーターの素材はチタンで、ウーファーの素材はアルミ。これらを1.6kHzという比較的低めのクロスオーバー周波数で接続する。これは、人が特に敏感である声の帯域に分割帯域を充てたくない、という趣旨からであるという

←トゥイーターの素材はチタンで、ウーファーの素材はアルミ。これらを1.6kHzという比較的低めのクロスオーバー周波数で接続する。これは、人が特に敏感である声の帯域に分割帯域を充てたくない、という趣旨からであるという

 ディスクプレーヤーにパイオニアUDP-LX800、プリメインアンプにデノンPMA-SXを配し、まずはピアノトリオをバックにトロンボーンが活躍する北欧ジャズ、ニルス・ラングレン『4 Wheel Drive』のCDを聴き始めると、小型のイメージを超えた量感豊かな低音が……。堂々の鳴りっぷりは大好きだが、少し頑張り気味のような気がする。

 そこで、量感を若干抑えるべく、20cmほど手前に移動(後壁から離す)。同時に100インチスクリーンに被らないギリギリまで左右スパンを縮め、かつ内振り角も強め、音像のいっそうのフォーカス感と密度感を求めた。そんな作業にヴィヴィッドに応え、小型ながらも勢いや躍動感を際立て、魅せるのである。

 『4 Wheel Drive』の1曲目はダブルベースのフリーソロで始まるが、何とこの録音、肉厚でしかも珍しい左右にしっかりと音が振られるステレオ収録という稀有な生々しさ。その厚手のボディ感を立体感豊かに表しつつ、音場と音像の両立的描写力をアピールする。即興パートではモノ収録のトロンボーンは柔らかくも鮮明な定位で、ピアノにおいては横広のステレオ収録音像をくっきりと描くなど、ベテラン勢の煌めくパッセージを解放する。

 2週仕立てのNHK『SONGS』の井上陽水はいつも通りにトークも絶好調。そのBD-Rの声や歌が生き生きとかつ親密感たっぷりに楽しめるから嬉しい。奇遇なことに、どこのスタジオかはわからないが、ミキシング席の陽水と共に映る小型モニターは本機にそっくり……アンフィオン製のようである。

↑ Argonシリーズは、Argon1(写真 ¥190,000、ペア/+税)やArgon0(¥132,000、ペア/+税)という、よ
り小型のバスレフ型モデルもラインナップする。Argon5C(¥160,000+税)というバスレフ型センタースピー
カーも用意される懐の深さも嬉しい

 さて、トールボーイのArgon3LSは如何にと同位置にて試聴。ユニットは同じというが、時間をおかずに比較すると、音はさすがの違いである。
 
 陽水の『SONGS』では声に楽器にいっそうのナチュラル感を漂わせつつ、スケール感が一段と高まる。エンクロージャー容積の増量だけとは思えぬゆとり感と質感が魅力的だ。優れた録音の北欧ジャズのCDは低域方向に一段の延びをみせつつダブルベースやキックの解像感も高める。
 最後に、アンプをデノンのAVセンターAVC-X8500Hに変更。イクリプスのサブウーファーTD520SWを追加して、3LSをフロントに、3Sをサラウンドに配した4.1 ch構成でUHDブルーレイ『アリー/スター誕生』のチャプター5から7を視聴すれば、日常の煩わしい近接的会話の小声から、華やかで大きなステージのエネルギー溢れる世界までを、サブウーファーの力も得て、広いレンジ感で描き切る。全体への支配力を発揮した3LSの賜物と思うが、変化も激しいサラウンドミックスにキレよく反応した3Sも立派。
 なお、仕上げ意匠は塗装の黒と白に加え、高価になるがウォールナット仕上げも用意するほか、カラフルなグリルも選択可能だ。

画像: ←Argon3S、Argon3LSともに本体裏側にパッシブラジエーターを搭載。Argonシリーズでは、3S以上のモデルにパッシブラジエーターが導入されている


←Argon3S、Argon3LSともに本体裏側にパッシブラジエーターを搭載。Argonシリーズでは、3S以上のモデルにパッシブラジエーターが導入されている

問合せ先:ウイフィールド ウインテスト(株)オーディオ事業部 045(324)1574

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