8K機器や放送関連製品を数多く手がけているアストロデザインでは、同社の最新技術を揃えた「アストロデザインプライベートショー2019」を、13日(木)〜14日(金)の2日間、本社ビルで開催している。

 同社の展示会では毎年、“他社が手がけていない新しい提案”がされているのが特長だ。今回は8Kの新展開として、放送以外での使い方や8K作品を作ろうというクリエイターに向けてのアプローチが目立っていた。

 ここではその展示の中から編集部が注目したものをピックアップして紹介しよう。なお、StereoSound ONLINE恒例の麻倉怜士さんによる、アストロデザイン鈴木茂昭社長の独占インタビューは今年も実施している。そちらは後日連載「いいもの研究所」でお届けしますので、どうぞお楽しみに。

8K 3Dシアター

画像: 「INSIGHT Laser 8K」はNHKなどでも採用されているそうだ

「INSIGHT Laser 8K」はNHKなどでも採用されているそうだ

画像: スクリーン&22.2chスピーカーで8K/3D映像を再現していた。女の子たちのきらびやかな衣装のディテイルもきちんと再現できている

スクリーン&22.2chスピーカーで8K/3D映像を再現していた。女の子たちのきらびやかな衣装のディテイルもきちんと再現できている

 2Fの特設会場には、同社が発売している8K DLPプロジェクター「INSIGHT Laser 8K」を使った8K 3Dシアターが設置されている。INSIGHT Laser 8Kは水平8192×垂直4320画素のDMD(デジタル・マイクロミラーデバイス)を3枚搭載した製品で、25000ルーメンの明るさを備えているのも特長だ。

 今回は同社の8K/120pカメラ「AB-4815」で撮影した3D映像をスクリーンで再生していた。プロジェクターは一台のみだったので、右目用・左目用の映像を交互に毎秒60枚ずつ投写していたと思われる。それもあってか、動きの激しいアイドルのステージ(しかも照明は薄暗い)も、かなり自然な立体感を伴って再現されていた。

ディープラーニングによる超解像

画像: 現行の主要な超解像方式(左、中央)と、ニューラルネットワークを使った超解像(右)の比較

現行の主要な超解像方式(左、中央)と、ニューラルネットワークを使った超解像(右)の比較

画像: ニューラルネットワークを使った8K変換機能を加えたDaVinciのデモ

ニューラルネットワークを使った8K変換機能を加えたDaVinciのデモ

 2Kや4Kの映像を、高品質な8K映像に変換するツールとして、ディープラーニングを使った超解像技術も展示されている。これはアストロデザインが独自で開発したニューラルネットワークを使ったもので、静止画ベースの処理となっている(解像度変換はできるが、フレームレートの補間は行なわない)。

 ニューラルネットワークとしては、どんな種類の映像(テストチャートや自然画像、映画のワンカットなど)が入力されても違和感のない8K変換ができることを目的に構築されているという。会場では現行の主要技術を使って8K化した映像との比較も行なわれていたが、解像感、色味ともとても自然な印象で再現できていた。

 またこのニューラルネットワークを実際の製品に展開した提案も行なわれている。この機能を編集ソフトで人気の高いDaVinciのプラグインとして販売しようというもので、既に動作デモもされていた。SDR/HDRに関係なく8K超解像ができるとのことで、興味を持つクリエイターも多いのではないだろうか。

HDMIコンバーターボックス

画像: HDMI2.0からHDMI2.1への変換ができる、コンバーターボックス「SD-7075」

HDMI2.0からHDMI2.1への変換ができる、コンバーターボックス「SD-7075」

 HDMIケーブルで8Kを伝送しようと思ったら、現時点ではHDMI2.0のケーブルを4本使って、4K×4本の状態で送るのが一般的だ。実際にシャープの単体8Kチューナーと8K対応テレビの接続にはこの方式が使われている。

 しかしこれはで不便なので、8K信号を1本で伝送できるHDMI2.1規格も提案されている。今回のプライベートショーでは、HDMI2.0×4本の信号をHDMI2.1に変換するコンバーターボックスも展示されていた。

 もちろんこれはあくまで業務用、分析や検査用製品といった位置づけだが、こいった製品が発売されるということは、メーカー各社がそれだけHDMI2.1の開発を進めているという証拠でもある。一日も早く、HDMI2.1対応機が発売されることを期待しよう。

8K機材レンタル

画像: 8Kカメラを収納できる水中ブリンプも展示されていた。これはアストロデザインが特注した物で、100mの水圧に耐えられるそうだ

8Kカメラを収納できる水中ブリンプも展示されていた。これはアストロデザインが特注した物で、100mの水圧に耐えられるそうだ

 8K映像を作ってみたいけれど、カメラや編集機器が高額なので簡単にトライできない……といった悩みを持っているクリエイターも多いはず。

 アストロデザインでは、以前から大阪芸術大学や愛媛の坊ちゃん劇場と提携して、クリエイターと一緒になったコンテンツ制作を進めていた。今回も慶応大学SFC研究所などと一緒に進めているMADD(Movie for Art, Design and Data)による作品が上映されている。

 そういった動きのひとつとして、同社ではクリエイターに8K機材をレンタルするという仕組も準備しているそうだ。8Kカメラやプロジェクター、編集システムなどの制作に必要なすべてが揃っているというから、興味のある方は一度相談してみてはいかがだろう。

8Kカメラ活用

画像: 「8C-B60A」には現場のカメラマンからの要望に応えて、側面の操作スイッチをカスタマイズした仕様も準備される。こちらはもっぱらNHKに納品しているとか

「8C-B60A」には現場のカメラマンからの要望に応えて、側面の操作スイッチをカスタマイズした仕様も準備される。こちらはもっぱらNHKに納品しているとか

画像: 8K/120p撮影もできる「AB-4815」

8K/120p撮影もできる「AB-4815」

 アストロデザインは、シャープの8Kカメラ「8C-B60A」を共同開発した実績も持っている。その8C-B60Aは8K/60pの撮影、収録(本体内のSSDメモリーに)、再生などが可能な一体型カムコーダーで、既にめ〜てれなどの地方テレビ局でも採用されている。

 こうひとつの小型モデル「AB-4815」は、8K/120pの撮影に対応したハイスペックモデルだ。こちらは撮影機能のみなので、外部に8Kレコーダーが必要だが、それでもこれほどのコンパクトサイズで8K/120pが記録できることに驚くだろう。

8K→4K/2K切り出しシステム

画像: 左のモニターが8Kのプレビュー画面で、右側にはそこから切り出した2K映像が表示されている。その処理は右下のワークステーションで行なっている

左のモニターが8Kのプレビュー画面で、右側にはそこから切り出した2K映像が表示されている。その処理は右下のワークステーションで行なっている

 同社の鈴木社長は以前から麻倉さんのインタビューに対し、8Kなどの超高精細映像で記録しておけば、そこから2Kや4Kなどの必要な情報を切り出して楽しむこともできる、と話していた。

 それを具体化したのが今回の「8K→4K/2K切り出しシステム」だろう。これは8Kプレビュー画面で気になる部分を選ぶと、そこだけを切り出して、別のモニターに表示してくれるシステムだ。切り出しは2Kでも4Kでも可能で、範囲の選択はゲームコントローラーを流用したリモコンで操作できていた。

 これを使えば、視聴者が8K放送の画面からお気に入りアーティストが写っている部分だけを切り出してアップにすることもできるし、セキュリティ用として8K映像を記録しておけば、後から事件が起きたときに今以上に細かい情報を取り出すことも可能となる。

 会場では本社ビルの屋上にセットした「AB-4815」で撮影した8K映像から、駐車場の車や踏切などを2Kで切り出すというデモも行なっていたが、細部までしっかりと判別でき、防犯面でもかなりの効果が期待できると思った次第だ。

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