どんな製品なのか?

超多機能で操作性にも優れ音質にもこだわったX45Pro

 オーディオ機器のレビューで日々多くの製品に触れる身となっても、ひとりのオーディオファイルとして自宅に新しいオーディオ機器を導入する時は、心が躍る。今回は、最近筆者が胸を熱くして自宅に導入したカクテルオーディオのミュージックサーバー/プレーヤー、X45Proを紹介したい。

 カクテルオーディオは、韓国のオーディオメーカー、NOVATRON(ノヴァトロン)社が手がけるブランド。元々同社は、映像出力機能を持つマルチメディアプレーヤーの開発からスタートしたが、現在は多くの音楽ソースに対応する先鋭的なミュージックサーバーが主力製品で、デジタルオーディオ界で急速に頭角を現した。

 ミュージックサーバーを定義する要素はいくつかある。まず、本体にHDD/SSDなどの記憶媒体を内蔵し、そこに音源を保存して再生できること。さらにCDドライブを内蔵もしくは外付けで接続して、CD再生やリッピングが行なえること。また、NASを用いたネットワーク再生やストリーミングにも対応し、デジタル楽曲ファイルのタグ修正も可能であることなどがあげられよう。つまり、パソコンを使わずスタンドアローン(単体)で音源の管理から再生までを可能とするのが特徴だ。

 同ブランドの製品は型番で機能を区別できる。50番台がデジタル出力専用のミュージックサーバー、45番台がD/Aコンバーターを内蔵、そして35番台がD/Aコンバーターに加えアンプまでを内蔵した一体型のミュージックサーバーという位置付け。さらに50番台と45番台の最上位モデルは末尾にProの表記が付く。つまり、筆者が導入したX45ProはDAC内蔵の最上位モデルというわけだ。

 カクテルオーディオの製品は、大型の液晶ディスプレイがトレードマーク。再生ソースが豊富で、しかもA/Dコンバーターを内蔵して、アナログ入力から録音にも対応するなど、とにかく機能が盛りだくさん。またiPadなどのデバイスだけでなく、付属のリモコンと本体だけでもすべての操作が可能で、従来のオーディオ機器と同様の感覚で使える。これは、iPadやスマートフォンでの操作に馴染めないオーディオファイルでもすぐにデジタルファイル再生にチャレンジできることを意味している。

 ただ、日本導入当時の同社製品は動作が若干不安定で、操作メニューなどユーザーインターフェイスの洗練度にも改善の余地があった。しかし、ノヴァトロン社はファームウェアアップデートを繰り返してそれらの問題に取り組み、完成度を上げてきた。その進化を目の当たりにし、筆者の中でカクテルオーディオ製品への注目がどんどん増していたのである。

 そんな中で満を持して日本上陸したのがX45Proだった。音の要となるDACチップにESSテクノロジーのES9038Proを搭載したフラッグシップモデルだ。従来製品から継承した多機能性に加え、さらに魅力を増したのは、昨年から今年にかけてのオーディオの3大トピック、つまり「Roon(ルーン)」「MQA」「ストリーミング」のすべてに対応していたこと。ミュージックリスニングの長い歴史の中で、史上初めて「音楽を再生する手法」と「音楽を知る、探す手法」を融合したRoonは大注目のソリューションで、少なくとも筆者の自宅に設置するオーディオ機器としてマストの存在だ。MQAへの対応力も優れており、MQAファイルやMQA-CDをフルデコードで再生可能なうえ、MQA-CDをリッピングし、ハイレゾファイルとしてデータ再生できる。そして先進的なオーディオファイルに定番ともいえる音楽ストリーミングサービスの「TIDAL(タイダル)」「Qobuz(クーバズ)」(編註:いずれも日本では未サービスイン)に加え、昨年日本で正式にサービスインした「Deezer Hi Fi(ディーザーハイファイ)」などの主要な定額制音楽ストリーミングサービスにも対応する。しかも本機は前述の通りMQAに対応するので、TIDALとDeezer Hi FiでのMQAによるハイレゾ配信もサポートするのだ。

画像: SpotifyやDeezer Hi-Fiなどの定額制音楽ストリーミングサービスに対応している部分も魅力だ。日本では未サービスインながら、欧米で人気のTIDALやQobuzにも対応する。このうちQobuzはFLAC形式で、DeezerHi-FiやTIDALはMQA形式でのハイレゾ配信を実施している

SpotifyやDeezer Hi-Fiなどの定額制音楽ストリーミングサービスに対応している部分も魅力だ。日本では未サービスインながら、欧米で人気のTIDALやQobuzにも対応する。このうちQobuzはFLAC形式で、DeezerHi-FiやTIDALはMQA形式でのハイレゾ配信を実施している

画像: 内蔵CDドライブを使って、CDをそのまま再生できるほか、CDをデータとして取り込むこと(リッピング)も簡単。本機はMQAデコード機能も備わっているので、ユニバーサルなどから発売されているMQA-CDをフルデコードして再生できるのは便利だ

内蔵CDドライブを使って、CDをそのまま再生できるほか、CDをデータとして取り込むこと(リッピング)も簡単。本機はMQAデコード機能も備わっているので、ユニバーサルなどから発売されているMQA-CDをフルデコードして再生できるのは便利だ

 進化の速いデジタル再生の世界で、X45Proの対応力はパーフェクトに近い。さらにアルミ削り出しによる質感のよいシャーシが、リンの製品群を中心にセッティングしている筆者宅のオーディオラックに設置して、外観上まったく見劣りしないことも購入の決め手となった。

 筆者はX45Proを自宅一階のメインオーディオルームに設置し、リンのクライマックス・イグザクトDSMのアナログ入力にXLRバランスケーブルで接続するほか、同軸ケーブルでのデジタル接続も行ない、アナログ出力とデジタル出力を切り替えて使っている。ここはベストの接続を得るための試行錯誤中だ。今後は、本機の高性能A/Dコンバーターを利用し、リンのレコードプレーヤー、LP12を経由でのアナログレコードのデジタルアーカイブ化にもチャレンジしてみたい。

画像: 本機の接続は、LAN端子のほか、アナログバランス音声出力、同軸デジタル出力のみとシンプルな状態で使用している。LANケーブルは、ワイヤーワールドのスターライト7。アナログバランス音声と同軸デジタルは、リンのKLIMAX EXAKT DSM(※現在はKLIMAX SYSTEM HUBに名称変更)につないでいる

本機の接続は、LAN端子のほか、アナログバランス音声出力、同軸デジタル出力のみとシンプルな状態で使用している。LANケーブルは、ワイヤーワールドのスターライト7。アナログバランス音声と同軸デジタルは、リンのKLIMAX EXAKT DSM(※現在はKLIMAX SYSTEM HUBに名称変更)につないでいる

画像: ↑リンの大型5ウェイスピーカー、Komri(コムリ)を中心にしたオーディオシステムを組む土方さん。そこにカクテルオーディオの多機能サーバー兼プレーヤーであるX45Proを導入した

↑リンの大型5ウェイスピーカー、Komri(コムリ)を中心にしたオーディオシステムを組む土方さん。そこにカクテルオーディオの多機能サーバー兼プレーヤーであるX45Proを導入した

操作性はどうか?

ダイレクトで直感的な操作感。音楽の確かな存在を実感できる

 ところで、X45Proを導入してからは、いままで以上に音楽再生が楽しくなった点も強調したい。その原動力は、フロントの大型ディスプレイに再生中の楽曲情報やメニューが大きく表示されること。次々に表示されるアルバムアートから楽曲をダイレクトに選択できる。もちろん通常のネットワークプレーヤーでも、たとえばiPadなどのタブレット端末に同じような画面は表示できるし、楽曲の再生はできる。だが、無形の存在であるデジタル楽曲の存在をオーディオ機器本体で感じさせ、再生する喜びを得られるのはX45Pro。オーディオ機器自身で表示したものを選択することにダイレクトさが感じられるためだろうか。

画像: ジャズCDをリッピングしたHDDは、タグ情報のジャンルを「レーベル」にしてそのアイコンをレーベルロゴにして保存。世界の名ジャズレーベルのロゴが画面全体に描かれる

ジャズCDをリッピングしたHDDは、タグ情報のジャンルを「レーベル」にしてそのアイコンをレーベルロゴにして保存。世界の名ジャズレーベルのロゴが画面全体に描かれる

 ちなみに操作性に関しては、本機は画面を見ながらの付属リモコンでの操作のほかに、本体に備わるボタンでの操作、あるいはスマホやタブレット端末の3種類の方法で操作が可能。おすすめしたいのは、本体画面を見ながらの付属リモコンでの操作で、特に使いやすい。この付属リモコンでの操作がスムーズでわかりやすいのは、カクテルオーディオのすべての製品に共通する大きなアドバンテージだと思う。iOS/アンドロイド用の操作では、純正の無料アプリ「MusicX」が用意され、通常のネットワークプレーヤー同様の操作は可能。だが正直にいえば、本アプリは画面デザインやレスポンスともに発展途上の段階であり、付属リモコンでの優れた操作性には達していない。アプリのアップデートに強く期待したいところだ。

画像: 操作性に優れているのもお気に入りの部分。特にリモコンでの操作がわかりやすいのだそう。内蔵ストレージの音声ファイル再生から定額音声ストリーミングサービスまで多彩なコンテンツを自由自在に操る

操作性に優れているのもお気に入りの部分。特にリモコンでの操作がわかりやすいのだそう。内蔵ストレージの音声ファイル再生から定額音声ストリーミングサービスまで多彩なコンテンツを自由自在に操る

音質はどうか?

ハイレゾからストリーミングまで豊富な情報量で音楽を奏でる

 さて、肝心の音質はどうかというと、高性能DACチップに支えられ、どんなソースを再生しても情報量と空間再現性に長けた音で楽しめる。当然、DSD11.2MHzファイルに対応しており、筆者お気に入りの1枚『バッハ:無伴奏チェロ組曲/シュタルケル』を聴いて、マスターテープに記録された驚異的な空間表現と、実体感のあるチェロの音に改めて感心する。

 ストリーミングサービスでの音質も見事だ。TIDALで配信されているMQAによるマスター音源で聴く、人気ロックバンド、イマジン・ドラゴンズの『Origins』(88.2kHz/24ビット)では、MQAらしい生々しい質感を持つギターと立ち上がり感に優れたドラム表現に裏打ちされ、エネルギッシュな演奏を堪能した。

 筆者はCDをリッピングしたうえでファイルの状態で楽しむので、直接ディスク再生することはほぼないが、話題のMQA-CDを再生したり、遊びに来た友人のCDをそのまま再生できるのが便利だ。余談だが、筆者がCD再生できるオーディオ機器を導入するのは10年以上ぶりである。

画像: ストレージの交換がひじょうに簡単な点も土方さんが便利に感じる部分だという。ジャズ系CDのリッピングファイルを収納したHDD、DSDのダウンロード音源を収めたHDDなど、ジャンルや入手方法の違いなどによるHDD自体を使い分け、本機に差し替えて使っている

ストレージの交換がひじょうに簡単な点も土方さんが便利に感じる部分だという。ジャズ系CDのリッピングファイルを収納したHDD、DSDのダウンロード音源を収めたHDDなど、ジャンルや入手方法の違いなどによるHDD自体を使い分け、本機に差し替えて使っている

結論

高い技術力と優れたセンス、そして高音質を兼ね備えた逸品

 CDなどのディスク再生からデジタルファイル再生やストリーミングに移行した現在のオーディオシーンでは、製品開発にITやネットワークの技術が要求される。また多機能なミュージックサーバー/プレーヤーで〝使いやすい〟製品を作るためには、高い技術力と搭載機能の取捨選択のセンスも要求される。本機はそのふたつを持っている。

 急速に進化を続けるデジタルオーディオの世界に登場した、多機能かつ高性能、そして高音質を兼ね備えた「おもちゃ箱」のような存在がX45Proだと思う。まるで少年時代に戻ったかのようなワクワクした気持ちでさまざまな音楽を聴けることが、何よりも魅力である。

 

画像: 【カクテルオーディオX45Pro導入記】「超多機能」と「高音質」を両立した音の快楽マシーン

マルチメディアプレーヤー 
COCKTAIL AUDIO
X45Pro
¥800,000+税

● 再生可能ディスク:CD、CD-DA、CD-R、CD-RW、DVD-R/RW
● 接続端子:アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、デジタル音声出力4系統(同軸、光、AES/EBU、USBタイプA)、HDMI出力1系統、アナログ音声入力2系統(RCA、3.5mmステレオミニ)、MM対応フォノ入力1系統(RCA)、デジタル音声入力4系統(同軸、光、AES/EBU、USBタイプB)、ヘッドホン出力1系統(6.3mm標準)、USBタイプA 3系統LAN1系統、FMチューナー
● ストレージ対応スロット:1系統(2.5インチSATA[最大2Tバイト]、3.5インチSATA[最大8Tバイト])
● 対応ストリーミングサービス:TIDAL、Deezer、Qobuz、Spotify、ほか(日本未サービス含む)
● 対応サンプリング周波数/量子化ビット数:PCM・768kHz/32ビット、DSD・22.5MHz/1ビット
● 対応ファイル形式:WAV、FLAC、AIFF、ALAC、AAC、M4A、MP3、MQAほか
● 専用操作アプリ:MusicXあり
● 寸法/質量:W440×H130×D329mm/13.2kg
● 問合せ先:㈱トライオード ☎ 048(940)3852
 

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