新4K8K衛星放送がスタートして早や4ヵ月。ここのところ毎月毎週の番組表をチェックするのが楽しみになっている映画ファンも少なくないだろう。なかでもクォリティ、作品のラインナップともに満足度が高いのはやはりNHK BS4Kだ。ウチでも映画を中心にせっせとチェックしている。

 NHK BS4Kで映画が放送されるのは毎週土曜日の「4Kシアター」。4月のラインナップをチェックして思わず目を疑った。なんと開局から半年を待たずして『ジョーズ』のオンエアが予定されているではないか。いきなりの真打登場である。見れば『スティング』に始まりゴールデンウィークの『ジュラシック・パーク』まで、この機会を逃すわけにはいかない作品が目白押しになっている(詳細はコラムを参照)。

 これはぜひとも突っ込んで話を訊いてみたい。というわけで3月某日、NHKに足を運んでインタビューを行なった。

画像: インタビューに対応いただいた、NHK 編成局 展開戦略推進部 チーフプロデューサーの坂本朋彦さん(右)。インタビューの合間にも、酒井さんと映画談義でかなり盛り上がっていた

インタビューに対応いただいた、NHK 編成局 展開戦略推進部 チーフプロデューサーの坂本朋彦さん(右)。インタビューの合間にも、酒井さんと映画談義でかなり盛り上がっていた

 インタビューに応じて下さったのは編成局チーフ・プロデューサーの坂本朋彦さん。写真を見ておっ! と思われる方も多いはずだ。坂本さんはもともとはアナウンサーとして、そして現在はBSプレミアムの映画PR番組「プレミアムシネマへようこそ」にも出演されている。のだが、“本業”はNHKで放送される映画を采配する編成局に籍を置かれている。どういう役割を担われているのだろう?

坂本 NHKで放送する映画全般に関わっていることになります。どんな作品を放送するのかは編成で協議をしながら決めていきますので、BSプレミアムやBS4K、BS8Kなどそれぞれの編成に対して私の方から「こんな作品はどうですか?」という提案をします(※最終的に作品を決定するのはそれぞれのチャンネルの編集長と編成職員)。

 また、作品の放送権を買うために映画会社さんと交渉をしたり、オンエアする作品が決まればホームページにコラムを書いたり、番組に出演をして解説を収録したり。NHKの映画の窓口、とイメージしていただければいいかと思います(笑)。

 開局時には黒澤明・溝口健二・小津安二郎監督作品をラインナップ。作品のチョイスやクォリティの高い4Kマスターが映画ファンの耳目を集めたのは記憶に新しい。

坂本 12月のBS4K8K開局の時にBS8Kでは『2001年宇宙の旅』を放送することが決まっていましたので、BS4Kでは誰もが認める傑作で知名度のある邦画、日本の巨匠、黒澤・溝口・小津監督作品を提案しました。モノクロ作品から始まり、その後にはデビッド・リーン監督のカラー作品『戦場にかける橋』『アラビアのロレンス 完全版』の2作を、という具合にバラエティに富んだラインナップを3月までは組みました。

 それらの作品について、坂本さんご自身もそのクォリティに驚かされたという。

坂本 『羅生門』『山椒大夫』『近松物語』などはモノクロ作品ですが、グレーの発色がこんなに豊かなのかと、4Kの凄さを感じました。実は『近松物語』は今まで観た映画のなかでもっとも好きな作品の一本でもあるんです。

 また4Kの場合、モノクロ作品のほうがカラー作品よりもグレーディングのよさなどがはっきりとわかったことにも驚きました。特に『波止場』などはノワールに近いライティングなのでそれが4Kだとよりくっきりと見えるんですね。

 これまで「4Kシアター」で放送されてきた作品のなかには圧倒的な高画質が印象的だった『アラビアのロレンス 完全版』をはじめ、まだ4K UHDブルーレイがリリースされていないタイトルも少なくない。どういう作品を放送するのか?NHKではどんなプロセスで決めているのだろうか。

坂本 BS4Kでオンエアする作品の場合、NHKで4Kマスターを制作することはありませんので、映画会社さんが4Kマスターをお持ちかどうか、というところが重要になります。

 こちらからどんな作品の4Kマスターがあるのかをお訊ねする場合もありますし、映画会社さんからご提案を頂く場合もあります。双方の条件が折り合うところで作品が決まっていきます。

 映画会社さんから提供された4KマスターをもとにNHKでは24pマスターを60pに変換する、日本語字幕を入れるなどの作業を行ないオンエアマスターを作成します。

 オンエアされる作品のラインナップの大枠は年度区切りで決められるという。そのなかで番組編成上の強弱をつけたり、特色を出すにはどうすればいいか? そういったことを考慮しながらオンエアの順番が決まるというイメージだ。

 ちなみにこれまで映画番組は1作品につき2回の放送、というサイクルになっているが、これは2回だけ、ではないとのこと。つまり既に放送済みの作品もまだこれからリピート放送で観る、録るチャンスがあるわけだ。

 洋画の場合、現状では日本語字幕の大きさは従来のハイビジョン放送に準拠したサイズになっている。個人的には4Kではもう少々小さくなってもいいのではないか? と感じている。なんとかならないものなのだろうか?

坂本 BS4Kはまだ創成期でもありますのでひとまずBSプレミアムに準じて大きさを決めています。これは視聴者の方々からの反響などもうかがいながら、と考えていますので貴重なご意見として承りました(笑)。

 BS8Kの場合は、発売されているテレビの画面そのものが大きいサイズになりますので『2001年宇宙の旅』や『マイ・フェア・レディ』はやや小さめのサイズになっています。

 さて4月から怒涛の如く押し寄せる話題作・注目作のラインナップ。『スティング』を皮切りに、『ディア・ハンター』『アポロ13』、そして 『ジョーズ』だ。これで心躍らない映画ファンなどいないだろう。

坂本 私自身の思いとしては、いわゆる映画マニアだけではなく、できるだけ多くの方に4K作品を観ていただきたいと思っていましたので、どこかのタイミングで知名度のある人気作を、と編成で協議していました。

 4月からは新年度が始まりますし、名作であると同時に、誰が見ても楽しめる作品を、と考えてこのラインナップになりました。

 坂本さんは無類の映画好き。言葉の端々から一本でも多く良質の作品をお茶の間に届けたいという想いが伝わってくる。というか……映画の話を始めると止まらないのだ。

坂本 『ジョーズ』は記憶のなかにある、劇場で最初に観た映画なんです。思い出も深いし何度観ても面白い。演出の深みやディテイルが唸るほどよく出来ている。私にとっては幸福な映画で、30回は観ているのですが30回目がいちばん面白いんです。皆さんにも繰り返して観ていただきたい作品ですね。

 より映画館での体験に近い、映画の世界にもっと近づけるのが4Kや8Kです。これまでとは違う楽しみ方で、もっと映画を好きになってもらえたらなぁと思っています。

 映画ファンとしてはダグラス・サーク監督の作品やテレンス・マリック監督の『天国の日々』、フランソワ・トリュフォー監督の『恋のエチュード』『野性の少年』をBS4Kで観てみたいという坂本さん。

 インタビューの最後に「4Kシアター」の5月のラインナップを教えていただいた。『ジュラシック・パーク』に続いて、なんと『レオン 完全版』『ニュー・シネマ・パラダイス』『フェリーニのアマルコルド』が控えているという。よくもまぁ次から次へと映画ファン垂涎の作品が飛び出してくるもんである。

 4月〜5月のNHK BS4K「4Kシアター」。さぁこれを観ずして何を観る!

NHK BS4K「4Kシアター」のオンエアリスト

●4月の放送予定
『スティング』6日(土)21:00〜、13日(土)11:30〜
『ディア・ハンター』13日(土)21:00〜、20日(土)11:30〜
『アポロ13』 20日(土)21:00〜、27日(土)11:30〜
『ジョーズ』 27日(土)21:00〜、5月4日(土)11:30〜

●5月の放送予定
『ジュラシック・パーク』4日(土)21:00〜、11日(土)11:30〜
『レオン 完全版』11日(土)21:00〜、18日(土)11:30〜
『ニュー・シネマ・パラダイス【インターナショナル版】』
 18日(土)21:00〜、25日(土)11:30〜
『フェリーニのアマルコルド』25日(土)21:00〜

●放送済みの作品
『羅生門 4Kデジタル修復版』『乱 4Kデジタル修復版』
『雨月物語 4Kデジタル修復版』『山椒大夫 4Kデジタル修復版』
『近松物語 4Kデジタル修復版』『浮草 4Kデジタル修復版』
『戦場にかける橋』『アラビアのロレンス 完全版』『或る夜の出来事』
『波止場』『わが命つきるとも』『スパルタカス』
『ナバロンの要塞』『太陽がいっぱい』『追憶』
『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』

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