オーディエンス(Audience)は米カリフォルニア州サンディエゴの在。スピーカーシステムをはじめ、電源コンディショナーや接続ケーブル類を手がけるオーディオ専門ブランドだ。Hand-Crafted High Performance Audio Componentsが基本の製品構成。本誌ではなじみが薄かったが、以前から輸入実績はあり、先般日本法人を設立して本格浸透をはかることになった。つまりは気合い充分な仕切り直し、といえばよいだろうか。今回紹介するClair Audient(透聴力)シリーズのスピーカー2機種は、まっさらなニューモデルとすこしばかり性格が異なる定番製品の最新バージョンだ。型番にV2+が付いて、縦書きにするとなんとなくややこしいのもそのため。

  The ONE V2+から見ていこう。クサビ形のスピーカーベースはオプション。本体は背丈が18cmたらずのミニシステムで、公称径3インチのフルレンジドライバーユニットを1本搭載している。

  A3S2-16と呼ばれる小さなこのユニットは、逆ドーム状のメタル振動板をもち、有名なオーラサウンドNSS-193ドライバーに似ているが、まったく別の新設計。チタン合金ダイアフラムに大口径25mmのボイスコイルとネオジム磁気回路を組み合わせ、バスケットフレームの構造にも意を尽くした豪華仕様の高リニアリティ・高品位ユニットだ。

  さらに、端子や内部配線材も吟味することでV2+システムに仕立て上げた。定格インピーダンスはめずらしく16Ω。キャビネットの背面には4インチ径のパッシブラジエーターがあって、バスレフ方式と同様な動作を行なう。

  ONE+ONE V2+は、The ONE V2+とおなじユニットを2本ずつ使用した拡張版の上位モデルである。AS3S2-16ドライバーはキャビネットの前後に各1本。両サイドにパッシブラジエーターが1本ずつ配置されている。定格インピーダンスが8Ωなので、前後のドライバーはパラレル接続のよう。お互い正位相のバイポール仕様だ(ついでに記しておくと、THXサラウンド用等で逆位相の場合はダイポールと呼ぶ)。

独自の狙いをもって
マルチウェイSPの盲点を突く

  小口径のフルレンジドライバー1本という身軽なスピーカーシステムは世の中にけっこう存在するし、近年はPCオーディオやハイレゾ音源等の要求からアンプも内蔵、周波数レスポンスを積極的に電気補正した製品もすくなくない。けれどオーディエンスのミニスピーカーは、お手頃とはいいかねる価格設定からも推察できるとおり、あきらかにそれらと異なる独自の狙いをもっている。いわゆる点音源思想を背景としながら、大掛かりなマルチウェイスピーカーの盲点を突く類のハイクォリティサウンドに挑戦した。そう考えてよいと思う。

 小さな振動板で大量の空気を駆動するには大振幅が必要なため、変換効率が低くなる。物理的にそれはやむを得ないことだ。実際、通常の大型スピーカーと同様なスタンドアローン設置では低音が寂しく、音量にも限界があるので、背後の壁に近づけてニアフィールドで聴く。すると、俄然ミニスピーカーならではの景色が見えてくる。おもしろくなってあれこれセッティングを微調整してみる。地道なそういう作業を愉しめないとすると、両機は宝の持ち腐れになってしまうだろう。ほとんど全帯域の音が背面からも放射されるONE+ONE V2+はなおさらだ。

 3インチ径フルレンジの特徴がひときわストレートに出てくるのは、The ONE V2+のほうである。キビキビと反応が速く克明で元気溌溂。ちょっとアイライン美人の気配もあるけれど、はち切れそうな若々しさと、かすかな響きも逃さない透明感が当機の独壇場と聞こえる。

 ONE+ONE V2+は、中~低域のエネルギーがずっと増えるぶんスケールが大きく、落ち着いたまとまり。ミニサイズを意識させない安定感に驚くが、その代りヴォーカルなどの音像が太めだ。これは主に背後壁面からの反射音の影響らしい。部屋の状況しだいでセッティングの工夫が必要なのは当然として、置台との間にスペーサーを挟んでもフォーカス感が変化するから、そう単純な話ではない。打てばただちに響く一人前のハイグレードコンポーネントであるということだ。

 両機とも、ピカピカのポリッシュ仕上げを含めて見事に立派な出来映えなのだが、もうすこし簡素な姉妹機があったらサブウーファー併用のマルチチャンネルにも絶好のターゲットになると思った。

画像: The ONE V2+ (左) と ONE+ONE V2+ (右)

The ONE V2+ (左) と ONE+ONE V2+ (右)

SPEAKER SYSTEM

Audience
The ONE V2+
¥175,000(ペア)+税

●型式:フルレンジ1スピーカー・パッシブラジエーター型 ●使用ユニット:76mm逆ドーム型ウーファー、100mmパッシブラジエーター ●インピーダンス:16Ω ●出力音圧レベル:84dB/W/m ●再生周波数帯域:50Hz〜21kHz ●寸法/質量:W140×H180×D180mm/1.8kg

ONE+ONE V2+
¥285,000(ペア)+税

●型式:フルレンジ2スピーカー・パッシブラジエーター型 ●使用ユニット:76mm逆ドーム型ウーファー×2、100mmパッシブラジエーター×2 ●インピーダンス:8Ω ●出力音圧レベル:87dB/W/m ●再生周波数帯域:50Hz〜21kHz ●寸法/質量:W150×H200×D250mm/4.1kg
●問合せ先:オーディエンスジャパン㈱ TEL. 046(788)3611

画像: The ONE V2+ (左) / ONE+ONE V2+ (右) 両機種ともに接続端子はシングルワイアリング仕様。ONE+ONE V2+の前面と背面には自社開発したフルレンジユニット「A3Sユニット」が備わる。このユニットは質量2.5gのチタニウム合金を用いた振動板を採用しており、従来モデルよりも強い磁気回路で駆動させるという

The ONE V2+ (左) / ONE+ONE V2+ (右)
両機種ともに接続端子はシングルワイアリング仕様。ONE+ONE V2+の前面と背面には自社開発したフルレンジユニット「A3Sユニット」が備わる。このユニットは質量2.5gのチタニウム合金を用いた振動板を採用しており、従来モデルよりも強い磁気回路で駆動させるという

画像: ピアノブラックと木目を組み合わせた仕上げのONE+ONE V2+。側面には低音再生力を高めるパッシブラジエーターが備わる

ピアノブラックと木目を組み合わせた仕上げのONE+ONE V2+。側面には低音再生力を高めるパッシブラジエーターが備わる

画像: The ONE V2+にはオプションとして専用ベース、Speaker Base for The ONE V2+(¥15,000+税、ペア)が用意されている


The ONE V2+にはオプションとして専用ベース、Speaker Base for The ONE V2+(¥15,000+税、ペア)が用意されている

関連リンク
http://www.audiencejapan.com/Audiencejapanloudspeakers.html

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