画像: PIEGA Master Line Source 3

PIEGA Master Line Source 3

 スイス北部、チューリッヒ湖のほとりに拠点を構えるスピーカーメーカーの名門、PIEGA(ピエガ)。ここで取り上げるMLS(マスターラインソース)3は同ブランドのフラッグシップライン、マスターラインシリーズの末っ子として登場した注目作だ。
 兄貴分となるMLS(マスターラインソース)2同様、前方に加えて後からも音を放射するダイポール型のスピーカーシステムで、外観はもとより、基本的なユニット構成や、アルマイト加工を施したバッフル面など、技術内容も重なる部分が多い。
 ミッドレンジにリボントゥイーターを組み込んだラインソース・ドライバー4基と、ダブルウーファー、パッシブラジエーター(2基)からなる3ウェイのシステムも、MLS2譲り。ダイポール特性の優位性を引き出す音響レンズ(塗装したMDF)を本体背面に配置したデザインも踏襲している。
 ただ各ユニットは完全な新規開発で、そこには注目すべき技術革新が少なくない。そのひとつが、同社のお家芸とも言えるリボンドライバーの技術とノウハウを駆使して開発されたという小型のラインソース・ドライバーだ。MLS2の同ドライバーに比べると、横幅がギュッと凝縮され、縦長の形状に変わっているが、50kHzまでの帯域をカバーする高域特性は同等。能率も見劣りしない。
 18㎝径の低域ドライバーも、この新ラインソース・ドライバーにジャストフィットするように新調されたもの。開発テーマは、小ぶりなエンクロージャー容積で質、量ともに過不足のない低音再生を実現すること。振動板の素材選びに始まり、エッジ、ボイスコイル、ダンパーと、ユニットの構成素材を慎重に吟味して仕上げられた。結果として、新型ラインソース・ドライバーの優位性を積極的に生かせる低域レスポンスを獲得している。また背面の音響レンズの回折、および反射効果により、従来のダイポール特性のスピーカーでは難しかった後方壁への近接設置も可能だという。

画像: リボン型ユニットといえばピエガの代名詞でもあるが、Master Line Source 3では中央がトゥイーターでその左右がミッドレンジとなる、ラインソース・ドライバーを4基搭載。これはミッドレンジの上にトゥイーターが配される同軸リボンとは異なり、上級機Master Line Source 2で開発されたもの。3のラインソースドライバーは、2のドライバーに比べミッドレンジ部分が縮小している(左右4ラインが2ラインに減)


リボン型ユニットといえばピエガの代名詞でもあるが、Master Line Source 3では中央がトゥイーターでその左右がミッドレンジとなる、ラインソース・ドライバーを4基搭載。これはミッドレンジの上にトゥイーターが配される同軸リボンとは異なり、上級機Master Line Source 2で開発されたもの。3のラインソースドライバーは、2のドライバーに比べミッドレンジ部分が縮小している(左右4ラインが2ラインに減)

画像: 4基のリボン型ドライバーの背面に取り付けられた11段のMDF板(音響レンズ)により、音の拡散と後壁からの影響を少なくしている。チューニング用として、12個の専用スポンジも付属する。下部には、フロントの18cmウーファーと同口径のパッシブラジエーター2基を用意。スピーカー端子はバイワイヤリング対応で、Master Line Source 2にあった高域と中域の調整用トグルスイッチは廃された

4基のリボン型ドライバーの背面に取り付けられた11段のMDF板(音響レンズ)により、音の拡散と後壁からの影響を少なくしている。チューニング用として、12個の専用スポンジも付属する。下部には、フロントの18cmウーファーと同口径のパッシブラジエーター2基を用意。スピーカー端子はバイワイヤリング対応で、Master Line Source 2にあった高域と中域の調整用トグルスイッチは廃された

艶っぽい歌声をフワッと放つ。 きめ細かい余韻も聴き応えあり

 まずアキュフェーズのリファレンスセパレートシステムでヴォーカル、ピアノと聴き慣れた曲を、2、3曲再生してみた。「モナ・リサ/グレース・マーヤ」(CD)を再生。目の前の空間が隙間なく繊細な響きで埋めつくされ、艶っぽい歌声がフワッと放出される。それも単に響きが豊かということではなく、空間が複雑に伸縮し、スッと消える。あたかも生きものが呼吸しているかのような生々しさだ。深く、芳醇な響きが大きな面として描き出されるような様子は、新開発のラインソース・ドライバーの恩恵と見て、まず間違いない。
 また試聴位置が両スピーカーセンターから多少ずれたとしても、ほとんど違和感がなく、目の前に実在感に富んだ雄大な空間が拡がる。これはさまざまなシーンで使われる家庭用スピーカーとしては、大きなアドバンテージと言えるだろう。
 続いてハイレゾ音源として「ドント・ビー・ディナイド/ノラ・ジョーンズ」(96kHz/24ビット/FLAC)を再生。バスドラム、ベースが程よく伸びて、ピッチの変化をていねいに描き出していく。低音はボリューミーだが、分解能に不満はなく、帯域バランスも良好。響きが硬質にならず、しなやか。彼女の生なりの声が雄大な空間にストレスなく拡がり、漂うように消えていく、きめ細かな余韻も聴き応えがある。
 最後にUHDブルーレイ『グレイテスト・ショーマン』から、ジェニー・リンドが歌うチャプター10の再生。主役P・T・バーナムに扮するヒュー・ジャックマンの声は、低音がモゴモゴして、明瞭度が損なわれてしまうケースが少なくないが、本機では心配無用。太く、力強く、精気のある声が劇場内に拡がり、ジェニーの歌声への期待がグッと高まる。
 そしてジェニーの声は、精細にして、艶やか。特に中盤以降、その声の熱気、浸透力には目を見張るものがあり、開放感に富んだ自信に満ちあふれた歌声に釘付けになる。声、演奏、歓声と、120インチの映像全体から沸き上がるように拡がる様子は、自然で、違和感がない。シアターユースとの相性は間違いなく二重丸だ。力強さと肌合いのよさを併せ持った魅惑的なサウンドこそ、マスターラインソースの真骨頂と言っていいだろう。

PIEGA Master Line Source 3
¥5,000,000(ペア)+税
●型式:3ウェイ8スピーカー・パッシブラジエーター付き
●使用ユニット:リボン型トゥイーター/ミッドレンジ×4、180mmコーン型ウーファー×2、180mmパッシブラジエーター×2
●クロスオーバー周波数:550Hz、3.75kHz
●出力音圧レベル:92dB/W/m
●インピーダンス:4Ω
●再生周波数帯域:28Hz?50kHz
●寸法/質量:W343×H1650×D362mm/65kg
●カラリング:シルバー(写真)、ブラック、ホワイト、ゼブラウッド

問合せ先:フューレンコーディネート フリーダイヤル 0120-004884

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