低域の躍動的厚みが魅力的で音楽をよりいっそう豊かにする

 人気を博してきた400LINEのモデルチェンジは新たなシリーズ愛称“Vela(ヴェラ)”を得て、一新した造形・コスメティックが目に鮮やかである。機種としてはブックシェルフ型とフロア型のふたつ。両機ともウーファーとトゥイーターの発音タイミングを考察した後傾バッフルや制振を意図したアルミ製トップ(ここも傾斜)など大胆な構造を持つ。

画像: ▲SPEAKER SYSTEM ELAC Vela BS403(左)、Vela FS407(右)

▲SPEAKER SYSTEM ELAC Vela BS403(左)、Vela FS407(右)

 そのいっぽう、お家芸の15cm径AS-XRウーファーとプリーツ状ダイヤフラムのJETトゥイーターは細部に使いこなしをきわめながらの継続搭載。このあたりにスピーカーシステムの要はユニットの高い完成度が、老舗の風格とともに、うかがい知れる。

 仕上げは美しいハイグロスで、少し高価なウォルナット、ほかに黒と白の計3タイプを用意。まずはシンプルな小型バスレフ機のVela BS403を聴いてみた。

細身にならない音の立ち上がり さすがはJETの底力

 印象を要約すると、楽器も声も濃厚で濃密。とりわけ低域の躍動的厚みが魅力的だ。加えて、スムースなレスポンス感と小型ゆえの広い音場描写も特徴的に、サイズを忘れさせる、優れたイメージング力を美点にする。

 試聴CDは御年80のサックス奏者チャールス・ロイドの最新作『Vanished Gardens』からゲストシンガーのルシンダ・ウィリアムズ「Unsuffer Me」を聴けば、軽くドスをきかせたような厚手の歌唱にベテランの凄みを想わせ、魅せられてしまう。

 歌唱の後はジャズの器楽即興へと展開するが、このCD、録音も素晴らしく、テナーサックスの太さはもちろん、クリーントーン系で奏するギターのビル・フリーゼルのエモーショナル世界がヌケよくゴキゲンである。特に5弦6弦の分厚さは、数Hzのトレモロの深みも印象的に、生々しい。

 徐々にヒートアップするこのジャズ即興パートでは、ドラムフィルの強烈なアクセントが重要となるが、その音も細身にならず立ち上がり、音楽のドラマ性を高める。こういう音を聴くと、「JETトゥイーターの振動板は25mm径ドームトゥイーターの10倍の面積」とか「本シリーズで開発されたウェーブ・ガイド(曲面に処理されたフランジ)によってクロスオーバー周波数を下げた(つまり低域方向にワイドレンジ化した)」という説明資料は俄然、説得力を増し“さすがはJETの底力”と思ってしまう。

画像: 両モデルに搭載されるネオジウム磁気回路、カプトン製振動板を使った第5世代(V)JETトゥイーターは、前400シリーズと同一のもの。今回すり鉢のような新デザインウェーブガイドが組み合わされたことで、より理想的な放射特性が得られているという。クロスオーバー周波数は前400シリーズの2.5kHzから2.4kHzと下げられている

両モデルに搭載されるネオジウム磁気回路、カプトン製振動板を使った第5世代(V)JETトゥイーターは、前400シリーズと同一のもの。今回すり鉢のような新デザインウェーブガイドが組み合わされたことで、より理想的な放射特性が得られているという。クロスオーバー周波数は前400シリーズの2.5kHzから2.4kHzと下げられている

画像: ペーパーコーン紙の上にアルミニウムコーン紙(共にクルトミュラー製)を重ねて成形された振動板は内部損失に優れており、表面のクリスタル・ラインと呼ばれる幾何学模様のパターンは振動板強度を10倍高めているという。Vela FS407にはこのユニットが2基搭載され、上段は2.4kHz以下をフルレンジで下段は450Hz以下を再生。一部で同じ再生帯域を持たせるいわゆるスタガー駆動を採っている

ペーパーコーン紙の上にアルミニウムコーン紙(共にクルトミュラー製)を重ねて成形された振動板は内部損失に優れており、表面のクリスタル・ラインと呼ばれる幾何学模様のパターンは振動板強度を10倍高めているという。Vela FS407にはこのユニットが2基搭載され、上段は2.4kHz以下をフルレンジで下段は450Hz以下を再生。一部で同じ再生帯域を持たせるいわゆるスタガー駆動を採っている

 本取材のリファレンス機器はSACD/CDプレーヤーにデノンのDCD-SX1、プリメインアンプには同じくデノンのPMA-SXを用意。信頼の名品ばかりだが、中でもアコースティック・リヴァイブのスピーカースタンドは鳴きを抑えた金属製の超重量級。その効果もあっての今回の音だと思う。スタンドはブックシェルフ型の使いこなしの要に違いない。

その点、フロア型のVela FS407はスタンドの心配はない。もちろん本機にはガタツキなどを吸収可能な高さ可変型スパイクとメタル製スパイク受けが標準装備である。

 さて音だが、まずは見た目通り、ダブルウーファーならではのスケール感に感心する。ボトム量感が増し、何ともリッチだ。450Hz以下をダブル駆動とする2.5ウェイの、それも5チャンバー構成の内に2種のチャンバーとポートを用いた独特にして複雑な音響設計の成果に違いない。

 ロイドのCDでは、その悠々堂々の低音域が音楽をいっそう豊かにする。そんな基調のなか、音像にやや甘さも感じる場合もあるが、しかし音量を上げると俄然、原寸感覚のリアリティが味わえる。オーディオの醍醐味だ

 ダブルウーファーはシングルに対して半分の振動板振幅で同音量が得られる、と技術書にある。つまりパワーリニアリティ(=歪)に有利ということ。そこで、映画はBD『永遠のジャンゴ』を、BS403をサラウンド側にした4.0ch構成で味わった。再生機はオッポデジタルUDP205、AVセンターはデノンAVC-X8500Hに交換。

 いわずもがな聴感印象はフロントのFS407が支配的で、小声のセリフからダイナミックなジプシースイングまでがリニアな反応感で楽しめる。しかしこの映画、カメラのパンやズームと同期して、サウンドのパンもフェーダー操作も激しい。試聴したシーンはセンターchをL/R chへと振り分けてはいるが、克明な再生であった。

画像: スピーカー端子は両機ともにバイワイヤリング接続対応。底面に見える「くの字」型の部分は下向き(ダウンファイアー方式)に設置されたバスレフポートの空気流動口になっている

スピーカー端子は両機ともにバイワイヤリング接続対応。底面に見える「くの字」型の部分は下向き(ダウンファイアー方式)に設置されたバスレフポートの空気流動口になっている

SPEAKER SYSTEM
ELAC Vela FS407 ¥660,000(ペア)+税
●型式:3ウェイ3スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:JET型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー×2
●クロスオーバー周波数:450Hz、2.4kHz
●出力音圧レベル:88dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●再生周波数帯域:30Hz〜50kHz
●寸法/質量:W229×H1000×D266mm/19.1kg
●カラリング:ブラック・ハイグロス(写真)、ホワイト・ハイグロス(同価格)、ウォルナット・ハイグロス(別価格、¥700,000・ペア+税)

ELAC Vela BS403 ¥330,000(ペア)+税
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:JET型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:2.4kHz
●出力音圧レベル:86dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●再生周波数帯域:41Hz〜50kHz
●寸法/質量:W191×H362×D240mm/7.1kg
●カラリング:ホワイト・ハイグロス(写真)、ブラック・ハイグロス(同価格)、ウォルナット・ハイグロス(別価格、¥350,000・ペア+税)
●備考:専用スタンドLS80(別価格、¥70,000・ペア+税)
●問合せ先:(株)ユキム☎03(5743)6202

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