デジタルシネマや劇場音響設備のインスタレーションを手がけるジーベックスが、最新機器の展示会、並びにテクニカルセミナーを開催した。会場には、シネマプロジェクターや音響プロセッサーなどの最新劇場機器がセットされ、そのパフォーマンスを体験できるスペースも準備されていた。

 会場となった秋葉原UDXギャラリーNEXTのエントランスには、天井まで届くサイズのLEDディスプレイが設置されている。これは室内サイネージ等を想定した機器のようで、50×50cmのモジュール構造を採用したシステムとなる。

 当日は滝の風景などが再現されていたが、通常の照明環境下でも充分な明るさを持っていた。このディスプレイは既に「イオンモール新小松」に設置されているという(横幅16mの巨大システムとのこと)。

画像: ピクセルピッチ2.6mmのLEDディスプレイ。明るさは1000nitsで、コントラスト比は3000:1とのこと

ピクセルピッチ2.6mmのLEDディスプレイ。明るさは1000nitsで、コントラスト比は3000:1とのこと

 その横にある視聴室では、トリノフの劇場用シネマプロセッサー「OVATION」のデモが行なわれていた。トリノフというと、StereoSound ONLINE読者諸氏には超高級AVプリアンプの「ALTITUDE32」や「ALTITUDE16」がよく知られているだろう。

 同社は2003年にフランスで創業されたが、ブランド名の由来は「tri=3つ=3D音響」と「innovation」をくっつけた「3D音響の技術革新」にあるそうだ。さらに手がける事業内容としては、「ハイエンド」「プロオーディオ」「シネマ」の3つの部門があり、今回のシステムはシネマ部門の製品に該当する。

 同社のシネマ部門については、2010年に発売したシネマプロセッサーの「ORION」が欧州の560スクリーンに採用され、さらに2015年の「OVATION」は世界中の700のスクリーンに導入されるなど、実績を重ねてきている。

 これらのモデルはトリノフ独自のオプティマイザー機能を備えており、映画館の音響特性を高度に補正することで、音質を向上することができる。オプティマイザーの操作方法は「ALTITUDE32」等と同様で、専用マイクで現場の音を測定し、スピーカーの位相、時間軸、周波数特性、さらに部屋の反射、残響特性まで含めて最適化してくれる。

画像: トリノフのシネマプロセッサー「OVATION」。実際に音を再生したのは、日本国内では今回が初めてとか

トリノフのシネマプロセッサー「OVATION」。実際に音を再生したのは、日本国内では今回が初めてとか

 当日のデモでは、映像はエプソンの業務用4K対応プロジェクターとキクチ科学の8K用サウンドスクリーンを、スピーカーにはタンノイの業務用同軸システムを使ったサラウンド環境を設置していた。パワーアンプはラブ・グルッペンのEシリーズとFP+シリーズとなる。

 なお「OVATION」では、基準マイク1本をスイートスポットに置き、その周りにオプションマイク7本を、劇場内のおおよその決まった位置に配置して測定を行なう。基準マイクでスピーカーの距離や角度を測定し、オプションマイクではボリュウムレベル等を測っているそうだ。

 このようにオプションマイクを置くことで、劇場のような広い空間でも片寄りのない補正ができるそうだ。ただし壁の近くにマイクを置くと補正結果が歪んでしまうので、設置場所は劇場ごとに最適箇所を選ぶという。

画像: キクチの8K用サウンドスクリーンを使った7.1chシステムでデモを実施。画面両サイドのスピーカーはナレーション再生用のHEDD Type07で、映画再生用のフロントL/C/Rスクリーンはスクリーン裏に設置されている

キクチの8K用サウンドスクリーンを使った7.1chシステムでデモを実施。画面両サイドのスピーカーはナレーション再生用のHEDD Type07で、映画再生用のフロントL/C/Rスクリーンはスクリーン裏に設置されている

 ちなみに、オプティマイザーの補正アルゴリズムはハイエンド用の「ALTITUDE32」等で使われているものと同じだという。ただし劇場用の「OVATION」の場合、ターゲットとしている結果(カーブ)が家庭用とは異なるので、補正結果は異なってくる。

 最後にレースシーンの映像を使い、「OVATION」の補正あり/なしを聴き比べさせてもらったが、その違いは顕著だった。オフではエンジン音などの低域がわずかに膨らみ気味だったが、オンにするとキレのいい低音になり、音の厚みも増してきた。

 金属などの効果音も、オフではちゃんと聴こえていますよ、という印象だったものが、オンにするとひとつひとつの響きが細かくなり、音数が増える。イベントホールのシステムとしてはオフでも充分高音質だが、「OVATION」の補正を入れることで作品が本来持っている情報をすべて再現できるようになることが分かった。

 トリノフのシネマ用システムの音をユーザーが聴けたのは今回が日本初とのことだが、「OVATION」を導入することで、劇場の音がグレードアップすることは間違いないだろう。トリノフによる日本の劇場のクォリティアップに期待したい。

画像: 映像はエプソンの業務用4Kプロジェクターで投写している。その下段に見えるのがタンノイの同軸型プロ用スピーカー

映像はエプソンの業務用4Kプロジェクターで投写している。その下段に見えるのがタンノイの同軸型プロ用スピーカー

画像: トリノフオーディオのグローバル・セールス・マネージャー、アーノルド・デスティニー氏(右)と、通訳を担当してくれたBCB営業部長、ジェフリー・ジョーサン氏(左)

トリノフオーディオのグローバル・セールス・マネージャー、アーノルド・デスティニー氏(右)と、通訳を担当してくれたBCB営業部長、ジェフリー・ジョーサン氏(左)

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