ソニーがイマーシブ(3D)サラウンドに独自規格で名乗りを上げた。「360 Reality Audio」だ。

 ソニーは2010年以降の、オーディオシーンをリードしてきたという自負がある。2013年にハイレゾ宣言をして、2チャンネルでの高音質化を推進してきたソニーが、ハイレゾの次に訴えるのが、イマーシブサラウンドだ。

画像: 【麻倉怜士のCES2019レポート4】ソニー、3Dオーディオフォーマット「360 Reality Audio」を提案。全天球でのイマーシブサラウンド音響が魅力的
画像: ソニーブースの360 Reality Audio特設試聴室

ソニーブースの360 Reality Audio特設試聴室

 ソニー専務・ソニービデオ&サウンドプロダクツ社長の高木一郎氏はこう語る。

 「ソニーのオーディオは360 Reality Audioに注力したい。2013年以降、プレミアムオーディオの領域を広げるために、ハイレゾをプロモートしてきましたが、今後は同時に並行して、“音場”という新しい体験を提示します。技術で新しい価値を提供し、普及させたいというのが私の思いです」

 2018年の今日、すでにドルビーのDolby Atmos、DTSのDTS:X、ベルギーはギャラクシー・スタジオのAuro-3Dが展開されている。360 Reality Audioは、それらと何が違うか。要件を列挙してみよう。

 まずコンテンツターゲットだ。Dolby Atmos、DTS:Xは映画音響のイマーシブサラウンドだ。Auro-3Dは音楽だ。360 Reality Audioは音楽だ。音像描画方式はどうか。Dolby Atmos、DTS:Xはオブジェクトベースだ。Auro-3Dはチャンネルベース。360 Reality Audioはオブジェクトだ。

 展開する環境はどうか。Dolby Atmos、DTS:X、Auro-3Dともにプロフェッショナル用途では劇場、ユーザー的には家庭の部屋だ。一方、360 Reality Audioは劇場や広い場所でなく、当面は個人のヘッドホン使いだ。

画像: 単体のイマーシブサラウンドスピーカー。このような製品も普及には必要だ

単体のイマーシブサラウンドスピーカー。このような製品も普及には必要だ

 360 Reality Audioをまとめてみると、「音楽専用」「オブジェクトベース」「ヘッドホンリスニング」−−だ。この3つが揃うのは、世界初だ(任意の2つでも世界初)。

 技術的なポイントは3つ。

①音場はNHKの22.2チャンネル(これはチャンネルベース)と同様に全球、つまり360度。リスナーの聴取位置よりも下方を含む全方位に音像を配置。オブジェクトベースにより、移動可能。

②制作、配信、再生の一貫したエコシステム構築。

③ストリーミングサービスで配信。パイプラインナを考慮し、帯域幅はCDと同じ1.5Mbps。オブジェクトの数によるモードが複数あり、Level 1は10オブジェクト、640kbps帯域。Level 2は16オブジェクト、1024kbps。Level 3は24オブジェクトで1536kbpsだ。

 制作では、128オブジェクトまで持てる。実際には13個のリファレンス・スピーカー配置が基本形で、オブジェクト数は15に抑えている。リスニング形態はオンエアのスピーカーとヘッドホンだが、当初はヘッドホンでのイマーシブサラウンドからスタートする。

画像: 制作者向けのオーサリングツールも開発

制作者向けのオーサリングツールも開発

 CESのソニーブースには、3つの特設試聴室を設置。2つの部屋で、下部3、中央5、上部5の13個のスピーカーでのイマーシブリスニングと、個人の頭部伝達関数(HRTF)測定を行ない、ヘッドホンでリスニングする。もうひとつの会場では、1ボックスのイマーシブスピーカーのデモンストレーション。

 簡単にインプレッションを記すと、オープンエアの13スピーカーデモでは、オブジェクトベースらしい確かな定位感、移動感、方向感が感じられた。ヘッドホンリスニングでは、頭部伝達関数をいかに正確に測定するかが課題だ。スマホで耳と横顔の写真を撮り、それをアプリやクラウドで分析して個人の頭部伝達関数を測るというが、正確性がどれほど得られるかがポイントだ。単体スピーカーでのイマーシブサラウンド再生は、課題が多いと感じた。

画像: これを耳の中に入れ、個別の頭部伝達関数(HRTF)を測定する

これを耳の中に入れ、個別の頭部伝達関数(HRTF)を測定する

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