「HiVi」10月号で速報をお伝えした、イスラエルのスピーカーブランド モレルの2製品が発売となった。スピーカーユニットを内製できる世界でも有数のブランドで、今回デビューしたのは、フロアスタンディング型のSOPRAN(ソプラン)、ブックシェルフ型のOCTAVE 6 Limited Editionの2機種。早速、そのサウンドを検証していこう。

 モレルはイスラエルに拠点を置くスピーカー専業メーカー。創業は古く、1975年にメイヤ・モルデハイ氏が会社を興した。東京の老舗オーディオショップが同社のブックシェルフ型2ウェイモデルを一時期輸入していたことがあるが、公式な日本デビューは今回が初めて。既にカーオーディオ市場では定評を得ており、満を持してのホームオーディオ進出となる。

画像: morel OCTAVE 6 Limited Editio

morel OCTAVE 6 Limited Editio

SPEAKER SYSTEM morel SOPRAN  ¥2,300,000(ペア)+税
●型式:3ウェイ5スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、160mmコーン型ミッドレンジ、160mmコーン型ウーファー×3
●クロスオーバー周波数:250Hz、2.2kHz
●出力音圧レベル:91.5dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W255×H1,135×D430mm/31.5kg
●カラリング:ピアノグロスホワイト、ピアノグロスブラック(ブラックは受注生産)

 現在のモレルは、ほぼ100%イスラエル国内で生産されており(設立当初は英国に工場を置いていた)、世界60ヵ国あまりに輸出している。ドライバー生産量の90%が自社ブランド・ユース、残りの10%が他社への供給である(かつてはエグルストン・ワークス等のハイエンドスピーカー・ブランドにドライバーを供給していた)。

 06年、私は仕事で初めてモレルのカーオーディオ用スピーカーの音を聴いた。実に艶っぽく、2ウェイのつながりのよい瑞々しいサウンドは、どちらかというとメリハリ志向が強かった当時のカーオーディオ界に一石を投じるものとして強く印象に残ったことを思い出す。それはまさに「彗星のごとく」のデビューであった。あの音がホームでも聴けるのかと思うと、興奮を禁じ得ない。

 モレルが自社ブランドでホーム用スピーカーを発表したのは02年で、OctaveおよびOctwinという2機種の2ウェイブックシェルフ型が好評を博した。今回発表のOctave 6 Limited Edition(LE)の前身に当たるモデルである。

 では、輸入された2機種の特色を見てみよう。ウーファーはポリマーコーンに大口径ヴォイスコイルの組合せ、トゥイーターは特殊コーティングのソフトドーム「Acuflex」ということで一貫している。異なる振動板素材を用いたペアリングながら、トーンマッチングが見事に揃っているところは、長年の実績とノウハウに基づくところだろう。

 ユニットの保護についてはサランネットを用いず、微妙に穴径が異なる花柄のようなメタル製パンチングネットを直接勘合させる構造だ。

 2ウェイブックシェルフ型のOctave 6 LEは、MDF製エンクロージャーにポリマーコーティングが施されており、前面バッフルを上下にラウンドさせたフォルム。横幅をドライバーユニットぎりぎりまで絞り込み、奥行きを長くして容積を確保したデザインだ。

画像: 「バック・スパイン(脊椎)・アピアランス」と名付けられたSOPRANの背面。ミッドレンジ・ウーファーごとにバスレフポートが設けられる。それぞれに最適化された、異なるポートチューニングが施されているとのこと

「バック・スパイン(脊椎)・アピアランス」と名付けられたSOPRANの背面。ミッドレンジ・ウーファーごとにバスレフポートが設けられる。それぞれに最適化された、異なるポートチューニングが施されているとのこと

画像: キャビネットにはカーボンファイバー製を使い、高剛性と軽量の両立を図る。そのいっぽうで脚部にはしっかりとした重量があり、バランスをとっているようだ。端子はシングルワイヤリング仕様

キャビネットにはカーボンファイバー製を使い、高剛性と軽量の両立を図る。そのいっぽうで脚部にはしっかりとした重量があり、バランスをとっているようだ。端子はシングルワイヤリング仕様

 フロアー型のSOPRAN(ソプラン)は、Octave 6 LEと同一ドライバーを搭載した3ウェイ・5ドライバー機。3つのウーファーはパラレル駆動になっているようだが、最上部の同一口径ミッドドライバーは、トゥイーターと同じリニア銅スリーブ技術が導入されている点が異なる。エンクロージャーはカーボンファイバー製でさほど重たくないと思われるが、総質量は30㎏を超える。この重量の大部分は、最下部のベースキャビネットが占めているのだろう。側面から見ると実に複雑な曲面構造をしたエンクロージャーであることがわかる。仕上げはピアノグロス。

 なお、来春には球型エンクロージャーに納まった2ウェイ同軸構造のサテライトスピーカーが上陸予定とのこと。また、FATLADYというユニークな名称のフラッグシップ機も控えている。

ワイドレンジかつ高いリニアリティ。それでいて冷たい音がしない

 Octave 6 LEは、専用の金属製スタンドに載せて試聴。まるでシングル・フルレンジドライバーのような振る舞いで、2ウェイのつながりが抜群だ。しかもローエンドのかなり低いところまできっちりリニアにレスポンスをしている印象で、並みのトールボーイ型がたじろぐくらいの低域のエネルギーを繰り出してくる。フルオーケストラの打楽器群の力強い咆哮でも怯まない。いっぽうのヴォーカルは適度なフォルムを保ってしっかりと結像し、生々しさも鮮明だ。

画像: OCTAVE 6 Limited Editionは、“鳴らしやすさ”も訴求する2ウェイモデル。写真のスタンドは海外仕様で、実際は黒いスタンドが別売になるとのこと

OCTAVE 6 Limited Editionは、“鳴らしやすさ”も訴求する2ウェイモデル。写真のスタンドは海外仕様で、実際は黒いスタンドが別売になるとのこと

SPEAKER SYSTEM morel OCTAVE 6 Limited Edition ¥460,000(ペア)+税
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター、160mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:2.2kHz
●出力音圧レベル:89dB/2.83V/m
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W187×H297×D367mm/7.3kg
●カラリング:ピアノグロスホワイト、ピアノグロスブラック
●問合せ先:ジャンライン&パートナーズ☎03(3223)4300

 そうした印象をよりワイドレンジにし、さらに研ぎ澄ましたようなパフォーマンスがSOPRANの魅力だ。ディテイル描写は恐ろしいほど緻密で繊細。それでいてまったく冷たい音がしない。ホットな高分解能サウンドが、立体的な広いキャンバスに張り巡らさせるという触感だ。音像フォルムは手を伸ばせば触れられそうな感覚で、ステレオイメージの奥に定位する楽器の存在感も明白。最適なポジションに座って聴いていると、これだけのサイズのスピーカーでありながら、その存在が消えてしまうようなイリュージョンが味わえるのだ。

 久しぶりに期待大のスピーカーに出会えた気がする。

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