CST同軸ドライバー搭載のフロアースタンディング型スピーカーTAD-E1TX、クラスD増幅回路搭載のステレオパワーアンプTAD-M1000

 TAD(テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ)は同社Evolutionシリーズの新製品2機種、TAD-E1TXスピーカーシステムとTAD-M1000パワーアンプを発表した。TAD-E1TXは¥2,200,000(ペア・税別)、仕上げはピアノブラック(TAD-E1TX-K)のみで、発売開始は11月下旬。TAD-M1000はシルバー仕上げ(TAD-M1000-S)とブラック仕上げ(TAD-M1000-K)がラインナップされ、価格はいずれも¥1,350,000(税別)、発売開始は9月下旬となっている。

画像: フロアー型スピーカーTAD-E1TX(写真中央)とステレオパワーアンプTAD-M1000-S(写真右)

フロアー型スピーカーTAD-E1TX(写真中央)とステレオパワーアンプTAD-M1000-S(写真右)

コンパクトスピーカーTAD-ME1の主要技術を踏襲しダブル・ウーファー構成としたスリムなフロアー型

 ではまず、スピーカーシステムTAD-E1TXの設計内容を詳しく見てゆこう。TAD-E1TXは型名からも分かるようにEvolutionシリーズの初代スピーカーTAD-E1(2011年発売)の後継機だが、その設計内容はTAD-E1から大きく変更されており、実質的にはコンパクトスピーカーTAD-ME1(2016年発売)の主要な設計技術を踏襲・発展させたモデルと見るのが妥当だろう。本機の登場によって、Evolutionシリーズの現行スピーカーはTAD-CE1(2014年発売)を含め計3機種となる。

画像: ピアノブラック仕上げのTAD-E1TX-K

ピアノブラック仕上げのTAD-E1TX-K

TAD-E1TX-Kの主なスペック
型式:3ウェイ3スピーカー・バスレフ型
使用ユニット:2.5cmドーム型トゥイーター/9cmコーン型ミッドレンジ同軸、16cmコーン型ウーファー×2
出力音圧レベル:88dB/2.83V/m
クロスオーバー周波数:420Hz、2.5kHz
インピーダンス:4Ω
再生周波数帯域:29Hz~60kHz
寸法/質量:W350×H1,215×D512mm/46kg

 ドライバーはTAD-ME1と同じで、ベリリウム振動板採用2.5cmドームトゥイーターとマグネシウム振動板採用9cmコーン型ミッドレンジによるCST同軸ドライバー、MACC(マルチレイヤード・アラミド・コンポジット・コーン)振動板採用16cmウーファー2基を搭載する。バーチ材の合板フレームとMDF製パネルを組み合せたフロアースタンディング型のエンクロージュアは、TAD-ME1よりも横幅が狭く奥行が長いスリムな形状で、フロントバッフルを後方に3度傾斜させていることと、天板を前方に傾斜させていることが大きな特徴だ。設計を担当したスピーカー技術部・部長の長谷 徹氏によると、フロントバッフルを垂直にした場合と、後方に傾斜させた場合の音を比較試聴したうえで、音場の拡がり感がより優れている後方3度の傾斜角を採用したという。ただし、3基の搭載ドライバーのうち、CST同軸ドライバーだけは向きを垂直にしてリスナーに正対させ、同軸構造の利点が損なわれないよう配慮している。

 TAD-CE1、TAD-ME1に搭載されている「Bi-Directional ADSポート」は、もちろんこのTAD-E1TXにも踏襲されている。エンクロージュア側面下部の、一見ウーファーのような円形の鋼板パネルで覆われた側板部分に丸い穴があり、その穴から流れる空気が、エンクロージュア側板と円形パネルの隙間から前後方向に放射される仕組みになっている。エンクロージュア両側面に設けられたこの隙間がスリット状のポートとして機能し、ポートノイズの少ない、クリアーで力強い低音再生を実現しているという。パネルを円形にしたのは、ポートから放射される空気の経路長がどの方向でも同じとなり、タイミングが一致するからだそう。また、スリット状ポートの取付け位置については、外観デザイン、音響デザインの双方から検討した結果、比較的低いこの位置が最適と判断したとのこと。また、スリットの開口部についても、360度開口した場合と前後方向だけを開口した場合を比較試聴した結果、前後方向のみ開口したほうが、とりわけ「ポップス系の低音楽器の音圧が前方に迫ってきて心地よかった」(長谷氏)とのことだ。

画像: 円形の鋼板パネルが取り付けられたBi-Directional ADSポート部。両側面に搭載されているこの円形鋼板パネルとエンクロージュアの隙間から、前後方向に低音が放射される。

円形の鋼板パネルが取り付けられたBi-Directional ADSポート部。両側面に搭載されているこの円形鋼板パネルとエンクロージュアの隙間から、前後方向に低音が放射される。

 最後に、TAD-E1TXのもうひとつの大きな特徴であるクロスオーバーネットワーク回路の設置方法についても触れておこう。本機のネットワーク回路の素子はエンクロージュアの内部ではなく、音圧の影響を直接受けないキャビネットの底にマウントされている。さらにユニークなのは、ネットワーク回路が収納されている部分の底面(一般的な箱型エンクロージュアの底板に相当する部分)がフェルトによって覆われている「半開放構造」となっていることだ。つまり、TAD-E1TXの底面は木材や金属の板ではなく、四角いフェルトなのである。ネットワーク回路をエンクロージュアの外に分離設置するスピーカーは珍しくないが、そのほとんどが木板や金属板で密閉(ボックス化)されているのが普通で、本機のように、ネットワーク回路の収納部分のひとつの面が繊維系素材で覆われているという例は、きわめて珍しいといえる。ネットワーク回路を密閉化せず、床と平行になる底面にフェルトを使ったことで、長谷氏は「開放感のある音になった」と語る。

 以上のとおり、TAD-E1TXはTAD-ME1の主要技術を受け継ぎつつ、各所に新機軸を取り入れたこの秋注目のスピーカーシステム。これから年末にかけて全国各地で開催されるオーディオショウやイベントで試聴できる機会があるはずなので、ぜひその音をご自身の耳で確かめていただきたい。

 

「対称性」を追求したステレオパワーアンプ。Bi-Ampモードを搭載し、バイワイアリング対応端子搭載のスピーカーをバイアンプ駆動することが可能

 つぎに、TAD-E1TXと同時発表されたパワーアンプTAD-M1000の概要をご紹介しよう。TAD-M1000は既発売のTAD-D1000MK2(SACD/CDプレーヤー)とTAD-DA1000(D/Aコンバーター)の外観デザインを踏襲したステレオパワーアンプ。Evolutionシリーズのエレクトロニクス機器には1000番シリーズと上級の2000番シリーズがラインナップされているが、本機は1000番シリーズでは初めてのパワーアンプである。

画像: シルバー仕上げのTAD-M1000-S

シルバー仕上げのTAD-M1000-S

画像: ブラック仕上げのTAD-M1000-K

ブラック仕上げのTAD-M1000-K

TAD-M1000-S/Kの主なスペック
型式:ステレオパワーアンプ
出力:500W+500W(4Ω)
入力感度/インピーダンス:1.5V/220kΩ(バランス)、0.75V/47kΩ(アンバランス)
寸法/質量:W440×H148×D479mm/29kg

 TAD-M1000はフラグシップパワーアンプTAD-M600やEvolutionシリーズの上級パワーアンプTAD-M2500MK2と同様に、回路方式、構造など、あらゆる面で「対称性」を追求した設計となっていることが大きな特徴だ。

 増幅回路は入力端子から出力端子まで完全に独立した2台のアンプをバランス接続したBTL方式を採用。電源回路は正負(プラスマイナス)の対称性だけでなく、整流回路、安定化電源、トランスなどすべての回路部分を左右チャンネル独立設計としている。残念ながら、発表会ではアンプの内部を見ることはできなかったが、構造面についても、基板のパターンやトランスの配置から配線の長さに至るまで同一性を考慮したデュアルモノ構成を採用しているという。

 出力段はTAD-M2500MK2と同様、低損失性と高速性を兼ね備えたパワーMOS-FETを採用したクラスD増幅方式で、チャンネルあたり500Wという大出力を得ている。脚部はスパイク内蔵型インシュレーターによる3点支持構造を採用している。

 機能点での特徴として挙げられるのが、Bi-Ampモードの搭載。リアパネルに設けられたスイッチでステレオ・モードとBi-Ampモードが簡単に切り替えられる。発表会では2台のTAD-M1000をBi-Ampモードにして、TAD-E1TXをパッシブ・バイアンプ駆動していた。なお、左右チャンネルのアンプをBTL接続するモノーラル・モードは搭載されていない。

画像: TAD-M1000のリアパネルにはバランス/アンバランスの各入力端子とその切替えスイッチ、ステレオ・モードとBi-Ampモードの切替えスイッチ、左右チャンネル各1系統のスピーカー出力端子が装備されている。

TAD-M1000のリアパネルにはバランス/アンバランスの各入力端子とその切替えスイッチ、ステレオ・モードとBi-Ampモードの切替えスイッチ、左右チャンネル各1系統のスピーカー出力端子が装備されている。

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