ドルビーアトモスなどに対応する7・2・4構成のスピーカーとサブウーファーを内蔵したパーソナル・チェア、それがオーディオハートのVRS1。迫力たっぷりの大音量ホームシアターを楽しむことが難しい環境にお住まいの方には待望の製品だ。レビュー編となる今回は、さらにセッティングを追い込んだ結果をリポートしよう。

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画像: 「Audio Heart VRS-1」【実践編】ただのパーソナルチェアではありません!7.2.4再生できる立派なAV機器なんです!!

シェル内はまるで異空間にいるような感覚だ

 まずは、音漏れをチェックするためドルビーアトモス収録のUHDブルーレイ『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の戦闘場面で、ふだんの視聴と同じくらいの(と感じられる)音量に上げて聴いてみると、空間表現が見事。レーザー兵器や爆撃の迫力も充分だ。VRS1には卵形の小空間に合計14個ものスピーカーが内蔵されているが、音が混濁することもなく、スムーズに立体的な空間が再現される。

 試しに、スマホの騒音計測アプリで騒音レベルを計測してみた。数値はおよそ85〜90 dB(騒々しい工場内程度)。かなりの音だ。しかし、シェルの外側に出ると、途端に音量が小さくなる。シェルの開口部がある前側は70 dB(電話の呼び鈴程度)で後ろへ回ると65 dB(普通の会話程度)を下回る。この計測はシェルの間近で行なっており、そこから少し離れるとさらに数値は低くなる。家族が同じ部屋にいても不満を感じないレベルだろう。これならば、マンションなどでも隣室への影響は少ないと思われる。

 その秘密は卵形の外装に充填されたウレタン樹脂系の吸音材が外に漏れる音を低減しているからだろう。またシェル内の残響もきちんと抑えているため、スピーカー同士の干渉や余分な響きで音が濁るようなこともなく、明瞭で粒立ちのよい音を楽しめる。

自動音場補正機能を用いてさらなる高みを目指す!
その結果は……

 さて、本機のスピーカーを駆動するにはAVセンターが必須。というわけで、自動音場補正機能も試してみた。

 測定はデノンのAVCX8500Hの自動音場補正「Audyssey MultEQ XT32」で行なった。VRS1の小さな空間では視聴者自身の音響への影響もあると考え、シェル内に座って測定用マイクを手持ちで測定している。その際、手持ちではマイクが不安定になるので小型の三脚を併用するといいだろう。

 結果は良好。補正後、シェル内のサラウンド空間が一回り大きく感じられた。シェル内だけでなく、外側にも空間が広がるような開放的なサラウンドとスケール感になり、聴き心地のよさも向上した。

 音質的な変化はほとんどなく、元々の音響設計の優秀さもよくわかるが、自動音場補正を併用してセッティングを追い込めば、さらに実力を発揮できると考えてよさそうだ。なお今回は、細かな音までくっきりと再現する情報量のよさを活かすため、EQ補正はオフとした。このあたりは、好みに応じて微調整するといいだろう。

画像: 遮音性の高い卵形の小空間には7.2.4構成のスピーカーが備わる。フロントL/Rとセンタースピーカーは2ウェイ方式の密閉型。サラウンドとハイト用のスピーカーは50mmのフルレンジタイプを合計8個を用いている。サブウーファーは160mm口径を座面側の背面に両サイドに配置している

遮音性の高い卵形の小空間には7.2.4構成のスピーカーが備わる。フロントL/Rとセンタースピーカーは2ウェイ方式の密閉型。サラウンドとハイト用のスピーカーは50mmのフルレンジタイプを合計8個を用いている。サブウーファーは160mm口径を座面側の背面に両サイドに配置している

スピーカーを接続するケーブルは7.2.4構成のすべてがバナナプラグという仕様(写真はセンタースピーカーとサブウーファー用のスピーカープラグ)。センタースピーカーは左右2本使いのため、AVセンターに接続する際は付属の分岐プラグを用いる。また、サブウーファーはパッシブ型のため外部のアンプが必要となる

 この状態で改めてPS4のゲーム『グランツーリスモ:スポーツ』をVRモードでプレイしたが、ゴーグル越しに見える映像と、包まれるような音響が一体感を増し、没入度がより高まった。細かな再現性のある情報量豊かな音に変化し、臨場感たっぷりだ。自在に変化する視界とライバル車との熱いデッドヒートも音の定位がピタリと一致し、リアリティが格段に増す。

 同じセッティングで『〜最後のジェダイ』も観てみた。冒頭の艦隊戦では、縦横無尽に飛び交う戦闘機の移動感が明瞭で、爆弾投下後の大爆発では充分な迫力が味わえた。空間が大きく広がり、スケール感の不足もほとんどない。

 フォースの修行中のレイが暗黒面に飲み込まれ、合わせ鏡の中のような場所に迷い込む場面の不思議な空間も生々しく再現する。「パチン!」と指を鳴らす音が後ろから前へと移動していくシーンのインパクトが素晴らしい。

 最後にアニメの『ガールズ&パンツァー最終章第1話』では、クライマックスの戦車戦でのIV号戦車の主観視点が迫力満点。飛び交う砲弾の移動感もリアルで、車体に砲弾が当たった時の衝撃までビシビシ伝わる。これはスピーカーの位置が近いVRS1ならではの利点で、よりダイレクトな音に感じる効果だろう。

 強いて不満を挙げるなら、センタースピーカーが左右2個のユニットを使ったデュアルセンター方式のため、前方に定位するダイヤローグの実体感がやや物足りなく感じる。こればかりは仕方のない部分だろう。小型ユニットによるサラウンドシステムにありがちな、こぢんまりとした音場感にならず、充分に雄大な迫力を得られた点は立派だ。

 値段は約百万円と高価だが、スピーカーの設置や音漏れ対策などの問題をほぼ解決したシステムとしての価値は、きわめて大きい。ホームシアターの新しいスタイルとなることは間違いないだろう。映画やゲームなどを存分に楽しむにもおおいに活躍するはずだ。

 このコンセプトを推し進めた、身近な価格の後継機の登場にも期待したい。

画像: 自動音場補正機能を用いてさらなる高みを目指す! その結果は……

独創的なデザインのVRS-1
純粋なパーソナルチェア使いは?

VRS-1の独創的な形は1966年代に登場したボールチェアをオマージュしたという。本機は周囲の音を完全に遮断しない、ほどよく区切られたスペースが、なんともリラックスできて居心地がいい。また座面が360度の回転機構を備えているが、この回転がすごくスムーズで感動! ちょっとした微調整もできてストレスを感じさせない。まさにボールチェアで言われる「部屋の中のもう1つの部屋」に対して、VRS-1は「部屋の中にもう1つ、遊び部屋が」といったところ(家に欲しい……。編集部:頓)

Multichannel Speaker System
Audio Heart
VRS-1
¥980,000+税(受注生産)
(※2018年10月から、受注生産ではなく在庫販売を予定しているとのこと。詳しくは下記問い合わせ先まで)
●寸法/質量:W995×H1340×D1080mm/93kg
●問合せ先:オーディオハート(株)
☎︎04(7193)2608

オーディオハートは、2018年9月22日(土)~23日(日)に幕張メッセで開催される「東京ゲームショウ2018」に出展する。卵型シェルのサウンドを実際に体験できるチャンス!

この記事が読める月刊HiVi 2018年7月号はこちら

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