音場がきわめて広く、低音の塊感が充分に感じられる

 昨年のIFAではテクニクスブランドのCDドライブ一体型スピーカー内蔵/一体型ステレオシステムの「SC-C70」が話題だったが、今年は、その弟分の「SC-C50」が登場。ペットネームは“OTTAVA S”だ。CDドライブは省かれたが、技術的には音場再生、低音再生に特にこだわった構造設計、ユニット設計、音づくりがなされている。

 特に注目は「ベルリン・フィルモデル」。パナソニック(テクニクス)が、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と協業を開始し2年になる。ベルリン・フィルのコンサートライブ・ストリーミングサービス「デジタルコンサートホール」収録、編集用に映像機材をパナソニックが納入し、一方、ベルリン・フィル側は音に関する知見をテクニクスの技術者に与えるというウイン・ウインの関係でスタートした。

画像: テクニクスブースでの「SC-C50」

テクニクスブースでの「SC-C50」

 その第1弾が昨年の一体型システムSC-C70、そして液晶テレビの「EX850」の音響部。第2弾がSC-C50だ。3.1ch構成。センターに12cmのサブウーファーと、左右に6.5cmウーファー+1.6cm
トゥイーターの同軸ユニットを搭載した。

 音づくりに関して、パナソニックアプライアンス社の音響エンジニア、池田純一氏は、「コンパクトボディながら、豊かなステレオ音場が部屋中に拡がることを目標に音づくりをしました」と語る。これこそ、ベルリン・フィルのトーンマイスターのクリストフ・フランケ氏によるアドバイスであった。

 フランケ氏に直接、訊いた。「まず音が部屋中に拡がることが大事だと言いました。次にダイナミズム。弱い音でも、強い音でも周波数特性がバランスしていることです。小さな機器で、これらの条件を満足させることは実際には難しいですが、ベストな形で作り込んで欲しいと言いました」

 ベルリン・フィル仕込みの音とはどんなものなのか。二つの音源で聴いた。

 『ショスタコヴィチ:交響曲第5番第2楽章』。アンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮ベルリン・フィルの演奏だ。ベルリン・フィルはチェロ、コントラストの強靭さが、オーケストラとしての特徴とされるが、確かにこんなに小さな一体型スピーカーなのに、低音の塊感が充分に感じられるではないか。

 ピラミッド的な周波数特性にて、低域が実に雄大だ。ショスタコヴィチらしいチェロの蠢きも明確に聴ける。音の色づけがなく素直な音色感も好ましい。

 特筆すべきは、音場がきわめて広いことだ。システムはステレオで再生しているといっても、これほど小さいのだから、そのサイズ内のステレオ音場になるかと思いきや、意外に広い音場なのにも驚く。これが、フランケ氏の薫陶の成果かと納得した。

画像: 8月29日のプレス・カンファレンスで紹介された「SC-C50」

8月29日のプレス・カンファレンスで紹介された「SC-C50」

 もう一曲はジャズピアノ。私のレコード会社、ウルトラアートレコードの10月新譜、『小川理子/Balluchon(バルーション、フランス語で旅立ちの意味)』だ。小川理子は、テクニクスの総帥。つまりテクニクスのスピーカーがテクニクスのリーダーの演奏を再生するという図だ。

 曲は一曲目の「ジョージ・ガーシュウィン:Oh lady be good」。ジョージ・ガーシュウィンが作曲を手がけた、1924年末のミュージカル「lady be good」のテーマである。作詞は兄のアイラ・ガーシュウィンだ。ミュージカル名は「レディー・ビー・グッド」だが、曲名にはOhが付いた。1947年に録音されたエラ・フィッツジェラルドのバージョンが有名だ。

 音源的には、小川理子は抒情的なタッチの前奏から一転してアップテンポになり、コキゲンなスウィングが展開。ピアノもギターも、ベース、ドラムスも快活なリズムを聴かせる。小川理子のピアノのエッジがしっかりと立ったスウィンギーさ、ギターのセクシーさに注目すべき演奏であり、音だ。

 ではSC-C50は、「Oh lady be good」を、どう再生したか。それはプロデューサーの私が聴いても、納得する音だった。ベースの音程感が正確で、スケールが実に大きい。ドラムスのリズムプレイもよく、ピアノの表情も細やかだ。田辺充邦のギターのセクシーさも耳が喜ぶ。

 ベルリン・フィルのフランケさんも「私はクラシックで音づくりを指導しましたが、ジャズがこれほど楽しめるとは驚きです」とコメントした。

 テクニクスはまた傑作をものしたと思った。

画像: ウルトラアートレコードの10月新譜、『Balluchon』を再生するSC-C50

ウルトラアートレコードの10月新譜、『Balluchon』を再生するSC-C50

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