映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を、毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第12回をお送りします。今回取り上げるのは『輝ける人生』。人生の機微を伝える小粒な名画に定評のあるイギリス映画ならではの1本とのこと。ご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『輝ける人生』
8月25日(土)より全国公開

画像: 【コレミヨ映画館vol.12】『輝ける人生』 イギリスの下町で暮らすおじさん、おばさんの明日への夢。音楽ファンも注目の人情ドラマ

 皮肉屋で、プライドが高い。そのくせ周囲に気を遣い、列があると、とりあえず紅茶片手に並んでしまう。遠回しの笑いが好き。

 なーんてイメージのあるイギリス人。ソコで生まれる映画や音楽にも楽しさと陰りが等分にあり、適度に屈折していて味わい深い。

 この『輝ける人生』もそのラインのイギリス映画だ。女も男も、登場人物全員が還暦過ぎてるんじゃないかなぁ、これ。だからこそ面白い。笑えるし感動もできる。『オペラ座の怪人』や『グレイテスト・ショーマン』のアシュレイ・ジョンソンが振り付けを担当した(ミュージカル・シーンもある)オススメ作だ。

 主人公の専業主婦サンドラ(イメルダ・スタウントン)は鼻高々。長年連れ添った夫がナイト爵を受けて警察署を定年退職。今日はその記念パーティなのだ。ところが……。下町で暮らす姉のもとに身を寄せるハメになったサンドラは八つ当たり。私はこんなワーキングクラスの住人たちとかかわる人間じゃないのに!

 こう書くと身も蓋もないけれど、人生はやり直しが効くし、幸せはどこにでも転がっている(かも)というお話。こういうありふれたことを巧みな語り口で伝えられるのは気持ちがいい。

 消沈したサンドラが若いころ好きだったダンスを再開するので、後半は音楽がスクリーンにあふれるようになる。シックの「おしゃれフリーク」や、ザ・ブラザース・ジョンソンの「ストンプ!」など、70~80年代のディスコ・ファンクで盛り上がるのは還暦ジェネレーションならでは。若い奴らじゃこうはいかないぜ!

 エンディングに「ランニング・トゥ・ザ・フューチャー」という曲名はベタだけどちょっといい曲が流れ、これがイギリスの女性歌手エルキー・ブルックスの新録音曲だった。エルキーって1970年代の頭に、ロバート・パーマーと一緒に趣味趣味スワンプ・ロック・バンドのヴィネガー・ジョーで歌ってたハスキー・ヴォイスのお姉ちゃん(今はおばさん)じゃないか。びっくり。

 一昨年に公開された音楽青春映画『シング・ストリート 未来へのうた』が好きだったひとはぜひこちらも。未来へジャ~ンプ! この『輝ける人生』はあの人気作の高齢者版だ。

『輝ける人生』

8月25日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほかにて全国公開
監督:リチャード・ロンクレイン
原題:FINDING YOUR FEET
配給:アルバトロス・フィルム
2017年/イギリス/1時間51分/シネマスコープ
(C)Finding Your Feet Limited 2017
公式サイト http://kagayakeru-jinsei.com/

画像1: 『輝ける人生』
画像2: 『輝ける人生』
画像3: 『輝ける人生』

【コレミヨ映画館】

【映画評論家 久保田明の連載】

This article is a sponsored article by
''.