そりゃケイト・ブランシェットも惚れますって

ベテラン映画ライターの金子裕子さんが、長い取材人生で出会ったスターの素顔についてお届けしている人気連載「Behind the CAMERA」。今回よりタイトルを「映画スターに恋して」に改め、装いも新たに生まれ変わりました。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

 やっぱりサンドラ・ブロックは“イイ女”だ。主演作『オーシャンズ8』を見て再確認した。

 この作品は、ジョージ・クルーニーやブラッド・ピットが出演したオールスター・ムービー『オーシャンズ』シリーズの女性版。サンドラが演じるのは、ジョージが演じたダニー・オーシャンの妹デビー。

 カリスマ詐欺師だった兄同様に、彼女もまた天才的な騙しのプロフェッショナル。ダメ男に惚れるのがちょっと玉に瑕だが。本作では、そんな“瑕”が原因で入った刑務所から出所した彼女が、5年の刑期中に練った“計画”を実行すべく、相棒のルーにコンタクト。そのルーを演じるのがケイト・ブランシェットというのも、絶妙のキャスティング。サンドラ=司令塔&ケイト=右腕のコンビネーションは抜群だ。

画像: 今年6月、NYワールドプレミアに登場した『オーシャンズ8』の面々。左より、ケイト・ブランシェット、アウクワフィナ、サラ・ポールソン、アン・ハサウェイ、サンドラ・ブロック、ミンディ・カリング、ヘレナ・ボナム=カーター、リアーナ

今年6月、NYワールドプレミアに登場した『オーシャンズ8』の面々。左より、ケイト・ブランシェット、アウクワフィナ、サラ・ポールソン、アン・ハサウェイ、サンドラ・ブロック、ミンディ・カリング、ヘレナ・ボナム=カーター、リアーナ

画像: サンドラ・ブロックはレバノン発のブランド“エリーサーブ”のドレスを着こなす

サンドラ・ブロックはレバノン発のブランド“エリーサーブ”のドレスを着こなす

 まずはこのオスカー女優コンビが、メトロポリタン美術館で開催される世界最大のファッションの祭典<メットガラ>を舞台に1億5000万ドルの宝石を盗み出すスリリングな手口を、映画館で堪能していただきたい。そして、こんなに愉快でスカッとするのは、“イイ女”サンドラ・ブロックだからこそ! を認識して欲しい。

 だって、あのアクの強いケイトがユニセックスな雰囲気を出しまくって演じるルーは、デビーに惚れている。そんな設定が、納得できるほどイイ女なのだから。

 ゴージャス・ビューティなのはもちろん、抜群の頭脳を持ち、気さくで、義理も人情も大切にするデビー。これって、サンドラの素顔とリンクしている。

 そう、“ハリウッドの兄貴”として同業者から慕われるジョージ・クルーニーが、ブラピやマット・デイモンなどのスターに声をかけて『オーシャンズ11』(01年)を実現できたのはひとえに兄貴のお人柄ゆえ。

 そして、そのジョージが製作にまわり、親友サンドラを主演に決めた本作。そこにケイト、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム=カーター、さらには人気ミュージシャンのリアーナという女性スター陣が集まったのは、やっぱり“姉御”として慕われるサンドラ主演だからこそだ。

画像: 映画ファンも音楽ファンも喜ぶ豪華メンバーが集結。鮮やかな頭脳戦を仕掛ける!

映画ファンも音楽ファンも喜ぶ豪華メンバーが集結。鮮やかな頭脳戦を仕掛ける!

画像: サンドラ(左手前)とケイト・ブランシェット(右から2番目)のコンビネーションも見どころ

サンドラ(左手前)とケイト・ブランシェット(右から2番目)のコンビネーションも見どころ

『スピード2』のインタビューは難関だった!

 サンドラと初めて会ったのは、出世作『スピード』(94年)が世界的なヒットをした頃。共演のキアヌ・リーヴスとツーショットだったのだが、当時のキアヌは、いや今でもその傾向ありだが、本当にシャイで口数も少ない。それを軽いジョークとツッコミで補い、場を和ませてくれたのがサンドラ。頼りになるお姉ちゃん! って感じだった。

 そして、次に会った時には、そのステキな人柄に、さらに頭が下がる思いだった。そう、『スピード2』(97年)でキアヌに代わってSWAT隊員を演じたジェイソン・パトリックを同伴してきたんだけど……。それが、私の長いインタビュアー経験の中でもBEST5に入るほどの難関だったのだ。

 ジェイソンは無口というより、ほとんど無言。たま~に「イエス」とか「ノー」しか言わない。まぁ、3ワードぐらいは続くフレーズを言ったかもしれないけれど、それも意味不明。おまけに、カウチの隅っこに座ってこちらを上目づかいでチラリ(爆笑)。

 その数年前、キーファー・サザーランドとの結婚式をドタキャンした直後のジュリア・ロバーツと、恋の逃避行をしてメディアに大騒ぎされたトラウマがあるのはわかる。だけど、イエスとノーだけじゃ原稿にもならない。

 ところが、そこにサンドラが救いの手を差し伸べた。「えーと、彼はこんなことを言いたいんだと思う」という前置きで、ちゃんと実のあるコメント。その終わりに「そうよね? ジェイソン」と続き、ジェイソンが「イエス」……。

 通訳をしてくださった戸田奈津子さんも「こんな人、初めてだわ」と苦笑いしておりました。

アカデミー賞&ラジー賞をW受賞したのは史上初

 気配りもユーモアのセンスも抜群のサンドラは、一時は“ラブコメの女王”と称された。しかし、40代に入ってからは演技派としての真価を発揮する。

 09年はある意味エポックな年に。ラブコメ『あなたは私の婿になる』で女王の魅力を炸裂させ、ノンフィクション『しあわせの隠れ場所』でアカデミー賞主演女優賞を受賞した。

 さらに同じ年の『ウルトラ I LOVE YOU!』ではゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)最低主演女優賞も受賞。ほとんどの受賞者がスルーするこの受賞式に出席したサンドラは、「あなたがたのほとんどが、この映画を見てないでしょう?」とユーモアたっぷりにスピーチをして会場を沸かせた。まさに、肝っ玉の据わった姉御ならではだ。

 「作品との出会いは、運だから。良い時も悪い時もあるわ。それでも、演じた役はみんな私の分身だから。愛おしい」

 彼女のそんなコメントを思い出す。

 そして、その運の良さは、再びオスカー候補となった『ゼロ・グラビティ』(13年)でも発揮された。惜しくも受賞は逃したが、ほとんど独り芝居を続けて世界中を感動させる演技力は並みじゃない。まさに“幸せな出会い”の結実だ。

 ちなみに、私生活ではカスタムバイクメーカーの経営者ジェシー・ジェイムズ(全身タトゥーありで、日本のファンはびっくり!)と2005年に結婚したが、夫の浮気が原因で5年後に離婚。

 そのほかマシュー・マコノヒーや、プレイボーイとして名を馳せたテイト・ドノバンとも交際したが長続きはしていない。う~ん、『オーシャンズ8』のデビーのようにサンドラも少々男運が悪いかも?

 その代わりといってはなんだが、ルイスとライラという養子に恵まれ、現在はシングルマザーとして穏やかな毎日を過ごしているとか。いつまでも“イイ女、健在!” でいて欲しいなぁ。

オーシャンズ8』作品情報
監督:ゲイリー・ロス
脚本:ゲイリー・ロス/オリヴィア・ミルチ
出演:サンドラ・ブロック/ケイト・ブランシェット/アン・ハサウェイ/ミンディ・カリング/サラ・ポールソン/アウクワフィナ/リアーナ/ヘレナ・ボナム=カーター
原題:OCEAN'S 8
2018年/アメリカ/1時間50分
配給:ワーナー・ブラザース映画
8月10日(金)全国ロードショー
(c) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

金子裕子が見た、聞いた ハリウッドのBehind the CAMERA
http://www.stereosound.co.jp/column/behind_the_camera/

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