「N-03T」は機能が最先端。PCM384kHz/32bit、DSD11.2MHzをサポート

 エソテリックのネットワーク機能を重視したモデルというと「N-01」というネットワークオーディオプレーヤーが最高級機として君臨している。35ビットD/Aプロセッシングという高品位志向だ。今回の「N-03T」はそうしたD/A変換機能を省略したネットワークトランスポーターだ。D/Aコンバーターを自由に組み合わせることができるわけで、エソテリックでは同社の「D-02X」や「D-05X」との組合せを推奨している。

画像: 「N-03T」は機能が最先端。PCM384kHz/32bit、DSD11.2MHzをサポート

 ネットワーク部の対応フォーマットはPCM、及びDSDのロスレス、またMP3やAACなどの圧縮オーディオ。ETHERNET端子(1000BASE-T)のほか、大容量のUSBメモリーや外付HDDをストレージ/サーバーとして接続できるUSBドライブ端子(A)を前面と後面に装備。

 デジタル出力端子としてはUSB(A)、AES/EBU端子、同軸端子を装備。USBは最大でDSD11.2MHz 、PCM・384kHz/32bitを出力可能だ。AES/EBUと同軸端子は192kHz/24bit、DSD・2.8MHz 出力まで対応している。ネットワークトランスポート機能として申し分ない性能だ。

デジタル音声出力はUSBタイプAの他、同軸とAES/EBUを各1系統を装備。同軸とAES/EBUはPCM192kHz/24ビットまでとDSD2.8MHz/1ビットのDoP出力に対応する。クロック入力用BNC端子も備えている

 高音質部品についても01シリーズなど頂点モデルと同等かそれ以上のものを採用。たとえばスイッチング電源を使わず大容量で低ノイズ、高安定のリニア電源を採用。整流ダイオードは高音質なショットキー型だ。トロイダル電源トランスは2個搭載。ネットワークモジュールには1F、つまり100万 μFの超大容量コンデンサー(EDLC:電気二重層コンデンサー)を用いる。さらに2枚(5mmと2mm)の鋼板を底板に用いる高剛性シャーシ、肉厚アルミパネル、独自のピンポイント脚などこのシリーズおなじみのもの。

画像: 電源はネットワークモジュール用とその他のデジタル回路用に振り分けられ、それぞれに独立した大容量トロイダルトランスを備える。またネットワークモジュール専用電源には1F(1,000,000μF)の大容量スーパーキャパシター「EDLC(Electric Double-layer Capacitor)」を装備するほか、大容量フィルターコンデンサー、ショットキーバリアダイオードを用いることが特徴だ

電源はネットワークモジュール用とその他のデジタル回路用に振り分けられ、それぞれに独立した大容量トロイダルトランスを備える。またネットワークモジュール専用電源には1F(1,000,000μF)の大容量スーパーキャパシター「EDLC(Electric Double-layer Capacitor)」を装備するほか、大容量フィルターコンデンサー、ショットキーバリアダイオードを用いることが特徴だ

低価格機とは別次元の三次元的音場構築力

 試聴はまず、フィダータのHFAS1-S10(SSD仕様)をサーバーとし、D/Aコンバーターの「D-05X」とUSB接続した。D-05Xは34ビットのデュアルモノ構成D/Aコンバーターであり、CDフォーマットの鮮鋭感、96k㎐/24ビットの実質感のある描写力と迫力、そして192k㎐/24ビットはさらりと細部が解きほぐされて音場空間の見通しが向上するなど期待通りの描き分けをなんなくこなす。この組合せは、ひと桁低価格のネットワークオーディオプレーヤーとは別次元の三次元的な音場の構築力に優れている。

USB入力端子はフロントとリアの2端子を装備する。USBストレージ内の音楽データを再生することもできる。再生対応フォーマットはDSF、DSDIFF、FLAC、Apple Lossless、WAV、AIFF、MP3、AAC。またすべてのロスレスフォーマットでギャップレス再生が可能

 次に36ビット仕様のD02Xと組み合わせるとまた別次元の景色が開けてきた。S/Nがまったく異なるのであり、録音現場に漂う微細な環境ノイズがしっかりトレースされ、それが実体的な音像を引き立て、さらに立体映像のように音場を見せるのだ。

 ダウンロードしたゲッツ=ジルベルト「イパネマの娘」は192kHz/24bitだが、従来アナログディスクで聴けるような豊満でなめらかな声音がなかなか得られずにいた。それがここでは実にさらりとした粒子感と粘性のある語尾の振る舞い、おおらかにして緊張感を含んだスローサンバ風のフレーズが蘇ってきたのだ。

 そして角田健一ビッグバンドの「マンテカ」が強烈だ。元は384kHz/32bitで録音された音源のアナログレコードから192Hz/24bitのデジタル化したファイルを聴いたのだが、エネルギッシュにして音像がきりりと引き締まり、実体験に近い大音圧にしても空気を過熱しつつ実に伸びやかに演奏される。

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 ファイルのマスターであるアナログディスクに近い純度感とそれを越えそうな低音の質量感に、生々しい音を浴びる爽快感に浸れた次第。ステレオサウンドの『Hi-Res Reference Check Disc』から384kHz/32bitの音源を聴くと、独得のなだらかな示性曲線に変換しつつ、細部の緻密さが際立ち、余韻の彼方へ消えゆく一部始終が実に明瞭となる。「ダウン・バイ・ザ・サリー・ガーデンズ」など鳴りもののひんやりした響きの成り立ちが実像として出現するようで、これは感動的な体験だった。

 また、DSD出力もすこぶる高品位だ。しかもDSD11.2M㎐音源や192k㎐、CDフォーマットからD- 02XでDSD変換した場合でもその際立った高品位の印象をよく保っているのだ。つまり、録音のデータ量の違いは分かるのだがむやみに印象が変わることはなく、しかし聴覚の深奥を挑発するような緻密な描写力の違いは歴然としているということだ。これはハイエンドオーディオならではの達成というしかない。

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NETWORK TRANSPORT
ESOTERIC
N-03T
¥780,000+税
●接続端子:デジタル音声出力3系統(同軸、AES/EBU、USBタイプA)、LAN1系統●10MHz専用ワードクロック入力1系統(BNC)●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜384kHz/32ビット(PCM)、〜11.2MHz/1ビット(DSD)●寸法/質量:W445×H131×D360mm/17kg

エソテリック「N-03T」紹介ページ
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/n03t/

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