『ジュラシック・パーク』直撃世代が監督&脚本に

 2015年に公開され、歴代世界興収第5位を記録する特大ヒットを飛ばした『ジュラシック・ワールド』。トリロジー(3部作)となることが決定している新シリーズの続篇『ジュラシック・ワールド/炎の王国』がいよいよ日本上陸する!

 前作のコリン・トレボロウ監督はデレク・コノリー(『ジュラシック・ワールド』『キングコング:髑髏島の巨神』)と組んで脚本に回り、演出に抜擢されたのはスマトラ沖大地震に遭遇した一家の運命を描くパニック・ドラマ『インポッシブル』(2012年)や、ダーク・ファンタジー『怪物はささやく』(2016年)で知られるスペイン出身のJ・A・バヨナだ。

 トレボロウ、コノリー、バヨナの3人は1975、1976年の生まれで、つまり1993年の第1作公開時にミドルティーンだった『ジュラシック・パーク』直撃世代。それぞれにスクリーンに現われた恐竜たちとの出会いに驚き魅了された思い出を語っている。

 新トリロジーの予想を上回る成功は、作り手と親の世代になった観客双方の直撃世代に支えられたと考えていいだろう。

画像: 現地時間6/12に行なわれたLAワールドプレミアにて。中央手前の青いスーツ姿がJ・A・バヨナ。右から3番目には製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグも

現地時間6/12に行なわれたLAワールドプレミアにて。中央手前の青いスーツ姿がJ・A・バヨナ。右から3番目には製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグも

重要な役どころでマルコム博士が登場!

 出番は多くないけれど重要な役どころで、皮肉屋の数学学者イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)が戻ってくる。第1作で「予想される安定は必ず崩れる。生物は危険を冒してでも自由な成長を始めるんだ」と、専門のカオス理論を引用しパークの崩壊を予言していた人気キャラ。

 今回の『炎の王国』はこのマルコムの言葉の終着篇であり、第1作でいうと、終盤でヴェロキラプトルに追われてビジターセンターの調理室に逃げ込んだ姉弟の悲鳴(あの爪トントンの名場面!)が増幅されたサスペンス・アクション描写に比重が置かれている。

 雷光に照らされて、遺伝子操作で生み出された新殺戮恐竜インドラプトルがベッドで震える少女メイジーに近づくショットは、『ポルターガイスト』(1982年)の子ども部屋での恐怖再来のよう。ほかにも鏡やガラスを利用したスピルバーグ・タッチの演出がたくさんあり、バヨナ監督ら作り手の敬愛が垣間見えて微笑ましい。そこに、また出た! 飼育係オーウェン(クリス・プラット)の待てのポーズ! などの新味が添えられているわけだ。

画像: 遺伝子操作で生み出された恐竜、インドラプトルがベッドの少女に近づくシーンは、影の演出も相俟って恐怖が募る。鋭い爪が恐ろしい

遺伝子操作で生み出された恐竜、インドラプトルがベッドの少女に近づくシーンは、影の演出も相俟って恐怖が募る。鋭い爪が恐ろしい

画像: 前作に続き、ヴェロキラプトルのブルーも登場。オーウェンのポーズが、前作公開のあと世界中の動物園で飼育員が真似したという“待て”

前作に続き、ヴェロキラプトルのブルーも登場。オーウェンのポーズが、前作公開のあと世界中の動物園で飼育員が真似したという“待て”

 ぼくは前作『ジュラシック・ワールド』の海生大恐竜モササウルスのパックンチョ! のような明るい残酷が好きなので、今回のなにかこれ、ゲーム「バイオハザード」の洋館探索みたいだなと思える密室系ショッカーには食い足りないところもある。これはまあ好みだろうけど。今回は、かつてグラント博士(サム・ニール)が草を食(は)むブラキオサウルスを見上げて驚き、うっとりとした開けた場所での開放感はないのだ。

恐ろしいものから思わず笑ってしまうものまで、新恐竜も続々

 新恐竜は、中国山東省で発掘された大型の角竜シノケラトプス、肉食恐竜カルノタウルスなどが登場。『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)や『ジュラシック・ワールド』に顔を出していた人気者の頭突き恐竜パキケファロサウルスの亜種といわれるスティギモロクも大活躍する。スティギーというニックネームが付いているこいつは、2021年公開予定の『ジュラシック・ワールド3』にも出てくるかもなあ。

画像: ジャイロスフィア(ジュラシック・ワールド内を移動する乗り物)に迫るカルノタウルス

ジャイロスフィア(ジュラシック・ワールド内を移動する乗り物)に迫るカルノタウルス

 ファンはびっくりするだろうけど、今後の展開が本当に読めない新トリロジー第2作。トレヴォロウが監督復帰する次に繋がる布石もいくつか打たれている。これを収束させるのは大変だろうが、いずれにせよ『スター・ウォーズ/エピソード9』を降板したトレヴォロウは、フォースの探求ではなく、T-レックスの咆哮を選んだわけだ。

実寸大のロボットを使った特撮も見どころ

 特撮ファン的には、今回恐竜が檻に囚われていたり傷つき倒れている場面が多いため、実寸大のアニマトロニクス(操演ロボット)が多く使われているのが楽しい。

 担当したのは、『ラビリンス/魔王の迷宮』(1986年)などで故ジム・ヘンソンの下で学び、子豚を主人公にした動物コメディ『ベイブ』(1995年)でアカデミー視覚効果賞を受けたニール・スカンラン。クリーチャー・イフェクツ・スーパーヴァイザーとして『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)のドロイド、K2SOや、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)の海鳥ボーグなどを手がけている。

 加えてこちらも2008年に急逝したスタン・ウィンストンの下でモンスター・スーツの製作やアニマトロニクスを学んだアレック・ギリスとトム・ウッドラフJr.のコンビ(ふたりで『エイリアン2』や『トレマーズ』、『AV2 エイリアンズVS.プレデター』『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』などに参加した)が、師匠の道を受け継いで念願の恐竜メカニカルに挑戦しているのに感慨を覚える。

 麻酔から覚めるT-レックスの下で、10人ほどのパペッティア(人形使い)が機械仕掛けの恐竜を動かして命を吹き込んでいるのだろうなあ! 特撮映画はこうでなきゃ。職人の技術、作り物の興奮が次代に伝承されなければ。

 見終わってから気がついたけれど、3D映像も完成度が高い。ステレオD社による2D-3D変換の作品。インドラプトルの襲撃場面などそうとうにカットの短い場面でも、数年前のような不自然さはない。眼精疲労も覚えない。

 3Dコンヴァージョンの深度調整がさらに磨かれているのだろう。シリーズでいちばん多くの恐竜が登場する注目作。その威容と質感。熟練のIMAX 3D作品といえる。

ジュラシック・ワールド/炎の王国』作品情報
監督:J・A・バヨナ
脚本:デレク・コノリー/コリン・トレボロウ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ/コリン・トレボロウ
出演:クリス・プラット/ブライス・ダラス・ハワード/レイフ・スポール
原題:JURASSIC WORLD: FALLEN KINGDOM
配給:東宝東和
2018年/アメリカ=スペイン/2時間8分
7月13日(金)全国超拡大ロードショー

(c) Universal Pictures
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