ポータブルオーディオ界に登場した新ブランドActivo(アクティボ)から、手のひらサイズのDAP(デジタル・オーディオプレーヤー)「CT10」が登場した。価格も実勢4万円前後。高性能DAPとしてはかなり安い部類だ。なのに、筆者が考えているほど評価されていないように感じている。

画像: ActivoのDAP「CT10」を入門機と侮るな。上位機並の原音再生を楽しめる高コスパプレーヤーだ

 初めて本機を見た方の多くは、横幅65.2×高さ93.2mmの小型ボディと、ホワイトの丸みをおびたデザインに「なんだ、ただの入門機か」と思われるかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。まず、Activoはハイレゾ音楽配信サイト「groovers Japan」が新たに立ち上げたブランドであり、CT10はAstell&Kernで有名なアイリバー社と技術的に協業している。つまり、出自からして本格志向のプレーヤーなのだ。

 本体には、3.4型タッチ操作対応ディスプレイが搭載される。このディスプレイは小型のわりに480×854ピクセルと解像度が高く画質も良好で、アルバムアートが美しく表示される。

 また大きな魅力として挙げられるのが、通常このクラスの製品には使用されないQuad-Core CPU(4コアCPU)が搭載されていることだ。いままでエントリーモデルのDAPというと、モッサリとした動きをする製品も多く、スマートフォンを使いなれたユーザーがわざわざDAPを買っても、その点が不満となるケースが多々あった。

 しかし高性能なCPUを搭載したことで、CT10はエントリーモデルの固定概念を崩す、高速な操作レスポンスを達成し、さらにAstell&Kernの新型DAPと同様のユーザーインターフェイス「プレイ画面をディスプレイセンターに表示、そこを上下左右にスワイプすることで設定画面を表示させる」を持つ快適な操作感を実現している。これは画期的なことだ。

画像: 右側面と上面。唯一本機が上位機と異なるのは、バランス駆動に対応していないこと

右側面と上面。唯一本機が上位機と異なるのは、バランス駆動に対応していないこと

 本体には3.5mmアンバランスのヘッドホン出力と、micro SDカードスロットが備わる。内蔵メモリーは16GB(システム領域を含む)で、容量の大きいハイレゾファイルを沢山聴きたいときはメモリーの追加は必須となりそうだが、最大400GBのSDHC/XCカードに対応するので安心だ。

画像: 左側面に物理キーとmicroSDカードスロットがある。底面の接続端子は、充電/伝送用のUSB microB

左側面に物理キーとmicroSDカードスロットがある。底面の接続端子は、充電/伝送用のUSB microB

 DACチップにはシーラスロジック「CS4398」を搭載し、最大192kHz/24bit PCM、および11.2MHz DSD(PCM変換再生)に対応する。話題のMQAファイルの再生やロスレスストリーミングサービス「TIDAL」の再生も可能で、エントリーモデルながら全方位的な対応力を備えている。

 また、Bluetoothは高音質接続コーデックのaptX HD/aptXに対応し、USB DAC機能、USBオーディオ出力を備えるなどインターフェイスも充実している。

 機能的には今までの同価格帯のDAPを凌駕しているCT10だが、肝心の音質はどうだろうか?使用感とあわせて確認したい。

「CT10」は価格以上の立体的サウンド! Astell&Kernの技術が効いてる!? 

 イヤホンに私がリファレンスにしているヤマハ「EPH-200」を使い、今年のグラミー賞で主要部門を独占したポップスアルバム、ブルーノ・マーズ『24K Magic』を聴いた。第一印象は、価格帯を感じさせない情報量の多さがあること。そして1つ1つの音の粒立ちがよく、ボーカルの距離感が適切なことだ。エレクトリックバスドラムにはスピードがあり、バックミュージックとボーカルの描き分けも明瞭である。

 次にステレオサウンド社から発売されている『Hi-Res Reference Check Disc』から、「Greensleeves」(グリーンスリーブス)のDSD 11.2MHzを聴いた。本タイトルは、同じ演奏をPCMやDSDなど、全5種類のフォーマットで同時収録した音源。PCMやDSDの表現の違いなどを把握しやすく、筆者がオーディオ機材のチェックによく利用している。詳細はこちらのページからチェックしていただきたい。

 冒頭の暗騒音で小レベルの解像度を、続いて始まるパーカッションで音のトランジェントをそれぞれ確認するのだが、PCM変換されているとはいえ、暗騒音の明瞭さ、生々しくも立ち上げりの良いパーカッションの表現はなかなかのものだ。サックスの音色も美しく立体的な表現で聴かせてくれる。

 実はCT10は、前述のとおりAstell&Kernと協業している。その一つが、Astell&Kernが開発したクロックジェネレーター、ヘッドホンアンプ、DAC部などを一体型の小型モジュールにした「TERATON」(テラトン)が採用されている点にある。この効果が大きいのだろうと推測できる。

 良いな! と思ったのは、ソース音源に対してアキュレイト(精細、正確の意)な音色/音調を持つことだ。通常このクラスのエントリーDAPは、エネルギッシュな表現のサウンドキャラクターが先行し過ぎて、少々ガッカリすることもあるのだが、CT10は原音に忠実なキャラクターを持っていてとても印象が良い。

 実際に使用していて、動作レスポンスや操作性に優れていることにも感心した。タッチパネルのレスポンスは価格を考えると驚異的だ。本体横にはボリュームノブや再生・一時停止・曲送り/戻り等の物理ボタンが備わるので、カバンやポケットの中に入れたままでも使いやすい。

画像: 手のひらにすっぽり収まり、普段持ち歩くのみピッタリなサイズだ

手のひらにすっぽり収まり、普段持ち歩くのみピッタリなサイズだ

 CT10は機能と音質を高度に両立した上、価格面でも手に届きやすい優れたエントリーモデルと言えるだろう。事実上、この金額帯のDAPはハイレゾ対応のスマートフォンが競合となる。しかし、CT10はそれらの汎用スマホとは一線を画す優れた音質を持ち、さらにシンプルでコンパクトな本体により使い勝手も優れている。

 これらの長所により、今までスマホで音楽を聴いていた方がハイレゾ再生にチャレンジしようと思いたった時、本機は真っ先に推薦できるモデルとなる。また、ハイエンドモデルを所有する方がサブ機として利用できる"原音に忠実なサウンドキャラクター"も大きな魅力だ。CT10を一言で例えるなら、キュートで小さな優等生と言ったところだ。

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